不思議な解決
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「…めんど」
ゲームは楽しい。レベルが上がる爽快感や、敵を倒す爽快感は素晴らしい。ただ、正直言うと、俺はコミュ障である。何故こうなったかは知らないが、面倒くさい事この上ない。
「えっとね…。…」
最も簡単にこの状況を解決する方法はなんだろうか。取り敢えず、レイナさんの目標は今は気にしていられない。今は、先程まで冷やかしていた奴等が俺を変な奴を見る目で見てくるのを止める事が重要だ。
「…俺は称号を結構持ってるんで、金は要らないです。てか、この状況どうにかしてくれれば金と称号の情報あげます」
金、情報と言ったタイミングで、数人が此方を凝視してきたので、これは協力を得られるかもしれない。ただ、ここで助けてくれる事を期待する気は無い。こんなに、人が見ている状況だ。こんな状況で俺の前に出てこれたら勇者だろう。
「因みに、俺が持ってる称号数は5。レベルは9です。これでも、一応【遠距離物理】なので、【遠距離物理】が不遇って事はないと思います」
周囲は静まり返っていた。正直、視線を集めるのはあまり得意ではないのだが、ここでは畳みこんだ方が良いような気がする。
「この称号を見れば分かると思いますが、一応南の草原のボスは倒してます。と言ってもレイナさん…そこの女の人と一緒に…ですが」
誰も話し出す様子は無かった。それこそ、女の子やレイナさんでさえも。正直、居た堪れない。もう、全力疾走で逃げ出そうかと思ったタイミングで声を発した人がいた。
「はじめましてレンジ君。僕はルトというのだが、方向性で差別をしたりはしない。少しお話をしないか?」
「はぁ…?」
唐突に男が話しかけてきたぐらいではそこまでは驚きはしない。だが、ルトという人がそういった瞬間に、周囲の野次馬達の雰囲気が変わったのは意味がわからない。
「一応自己紹介をしておこう。僕の名前はルト。βテスト時に、クラン『瞬光』のクランマスターをしていたものだ。それで…唐突で悪いんだが僕のクランに入らないかい?」
「いえ、大丈夫です」
「即決かよ…。参考までに理由を聞いてもいいかな?」
「貴方のことを全く知らないので」
「…そうか」
そんな感じになられても、実際知らないのだから仕方がない。もう少し、ルトさん個人を詳しく知って、βテスト時のギルドの情報を知れれば考える余地はあったかもしれない。
「…まあ、情報をくれたり話を聞いてくれたお礼だ。この騒ぎはどうにかしてあげよう」
「?」
「今から!西の草原にて『瞬光』のクラン員を募集する!人数は1パーティー分、6名だ!方法は、その時伝える!ぜひ来てくれ!」
「……」
「まあ、そういう訳だ。君もぜひ来てくれると嬉しいが、来ないだろう?ナオ君も喜ぶと思うのだが」
正直、ギルドがまだ結成されていない状態なのに募集をしても、そこまで集まらないような気がしたが、前言を撤回する。ナオは確か、βテスト時、1位、5位、8位を除く全ての個人1桁ランカーがクランに入っていたと言っていた。
まあ、どちらにしろ、
「すみませんが行く気はありません」
俺は気楽にまったり楽しみたいのだ。ガチ勢クランには入る気はない。
「そうか、まあいい。では失礼する」
……。
嵐が過ぎていったような気分だ。ルトさんが出ていくと、他のプレイヤーもどんどん出ていった。
「…想定外の解決法でした」
「俺も想定外でしたよ。…色々と」
「当初の目的は果たせたようで良かったです。…取り敢えずフレンド登録をしませんかユウさん」
「は、はい。此方こそお願いします」
色々と疲れた。ゲーム内時間で2時間、リアルでは1時間程しかたっていない筈なのにここまで疲れるとは思わなかった。
「疲れたから今日は落ちていいですか?」
「え、もうですか?これからもう一度この子を連れて深淵の森に行こうと思ったのですが…」
真面目に言ってるのだろうか?どう考えても俺達の適正レベルではないあそこに、突破法もないのにもう一度行く気には俺はならないのだが。
「一応、夏休み目前とはいえ、明日も学校があるから…」
「そうですか…じゃあ仕方がないですね。お疲れ様です」
落ちる寸前まで、ユウさん、俺の事を何かと勘違いしていた女の子は俺と視線を合わせてくれなかったが、まあ良いだろう。
「…疲れた。なんかもう十分やった気がする」
このゲームがリリースされたのは午後4時だった。ゲーム内は現実の二倍の速度で進んでいる為、今の時刻は5時。夜ご飯まではまだ時間が有る。
俺の家はどこにでも有るような家庭だ。父親と母親、大学生の姉と高校生の俺。四人家族。ただ、少し変わっているのは、夫婦仲がよろしすぎる事と、父親が単身赴任中な事だろうか?母親は勿論父親についていってる。
正直言わせてもらうと、姉の頭はちょっと逝ってる。別に障害が有るとか言うわけではなく、熱狂的なVRゲームのプレイヤーなのだ。まあ、基本的にやってるのは個人向けの奴らしいが、それでもその熱意のせいで俺はVRゲームを遠ざけていた。まあ、友達に誘われれば始める様なレベルの遠ざけ方だが、姉にVRゲームを誘われても絶対にやらなかっただろう。
まあ、そんな姉がいる為、VRゲームをやる時間を減らさないためにも、夜ご飯の時間は7時と決められている。基本的には姉がご飯を作るわけがないので、俺が作って片付けは各自でやっているが、もし、俺がやってるゲーム【Trace World Online】をガチるようになったら交代制にしてもらおう。
ようやくゲームのタイトルとか色々なの出せた…。