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母親

 それから、俺も攻撃を開始した。勿論、まずは連射の効果を発動するために、スキルも何も使わずに連射し続ける。ただ、一切攻撃は刺さらない。『魔鋼樹の弓』は使っているし、弱点でありそうな目なども狙っているが、目に行きそうな攻撃は防がれ、それ以外は放置された。勿論、その間に数度程ブレスが来たり、土竜が発動していたストーンエッジみたいな攻撃も来たが、全てを躱している。


 それは何度目かの、バジリスクが目をガードした直後だった。目が茶色く、それでいて紫色に光ったのだ。それと同時に、左手に持っていた弓と共に、左手が石化し、指先から崩れ落ち、溶け落ち始めた。


「はっ!?え、ちょ、これ!」


 石化するまでは分かるが、溶け落ちるのは意味が分からなかった。それは、まるでブレスが当たった後の地面のようで、割合でダメージをくらい始めた。だが、くらったダメージはそこまで大きくないので、石化だけではダメージをくらわないのだろう。くらう条件は溶け落ちること。又、石化が腕まで侵食してきたように、もう手首までは完璧に溶け落ちていた。


「…解呪方法は…」


 焦りはしたが、一切痛みというものがない上に、バジリスクが攻撃を続けてきたので冷静にならざるを得なかった。解呪方法として考えられるのは、回復術士に魔法をかけてもらうか、魔術師にディスペルを使ってもらうか、β時にあったと言っていた状態異常回復薬という物を見つけるか、腕を切り落とすか…そんぐらいだろうか?もしかしたらまだまだあるのかもしれないが、今の俺ではこのぐらいしか思いつけない。


「…切るか?」


 あまり痛いのは嫌だが、デフォルトで痛覚設定は1割まで減っているし…。

だが、俺には悩む時間があまり無かった。もう肩の付近まで侵食してきたのだ。よし。切るか。

 決断してからは早かった。ゴブリンナイトの剣を取り出し、上手く自分の左肩を切り落とした。痛みで大声をあげかけたが、すぐにHP回復薬を飲み込み、止血薬をふりかけた。止血薬は割と初期から買える薬だったが、その効力は絶大で、ポリゴンの発生はとまり、ステータス欄に表示された『状態異常:流血』も消えた。代わりに左腕損失というのが現れ、全ステータスが低下し、平衡感覚弱化とかいう意味の分からないバッドステータスも追加されたが仕方がない。


「ジャアアァァァァァアアア!!!!」


 俺が腕を切り落としたのを見て、バジリスクはもう一度目を光らせた。俺の記憶が正しければ、見られるのが駄目だったはずなので、目が光るか光らないかのタイミングで、ゴブリンの肉を大量に放出した。数にして99個。多すぎた気がしないでも無いが、俺に石化症状は出なかったので、それで正解なのだろう。役に立たないと思っていたゴブリンの肉の活用法が現れた瞬間な気がするが、それはいい。

 今ので分かったのは、視覚は光を頼りにしているのに対して、バジリスクの目線による石化攻撃は割と時間に余裕が有るということだ。要するに、目と目線攻撃は完全に別物。目が光ってから目線から外れても、最悪避けることは出来るだろう。次に試すのはそれだ。

 次に挑む時にゴブリンの肉を大量に持ってくるなど嫌なので、これは割と重要な実験だったりする。


 数度ほどのブレス攻撃を躱した後に、そのチャンスはやってきた。バジリスクが動きを止めて目を光らせたのだ。


 動きを止めたタイミングにはもう【風精霊の加護】を発動させ、全力で横っ飛びをした。今までの感じでは、ブレスを放つ時は若干首を後ろに下げるが、目線攻撃の時はそんな事をしない。

 案の定、バジリスクは目線攻撃をし、


俺は躱すことが出来た。


「よしっ!次!」


 俺が躱したのを見て、何を思ったかバジリスクは接近戦に切り替えてきた。その巨体で俺へと近づいてきたのだ。【剣術】欲しい…。まあ、無いものをねだっても仕方がない。仕方がないので、後ろへと逃げようとして、動こうとしたのだが、”それ”は唐突に来た。


 体がぐらつくと共に、視界がブレたのだ。


「は?」


 俺が最後に見たのは、剣が刺さること無く先端から潰していったバジリスクの腹だった。


====================

死亡しました。

デスペナルティは

所持金一割

装備をランダムに一つ

一定時間のステータス減少

です。

====================


 意味が分からない。最後に見た光景が正しいとすると、バジリスクの防御力はとてつもなく高いということになる。今の俺の攻撃では到底ダメージなど与えられないだろう。因みに、無くなった装備はズボンだった。気づいたら無くなったズボンの代わりに初期に履いていたズボンを履いていた。前回の失敗を活かして、出来る限りのお金は預けていたので、そこまでお金が消えることもなかったのも良かった。


 それからすぐにログアウトし、食卓へと向かうと、もうご飯は出来ていた。時間はまだ7時前だ。姉が約束通りご飯を作ってくれたのかと思ったが、それは違った。

 台所には母親がいたのだ。


「は?」

「あ、蓮司。ただいま」

「おかえり?姉ちゃんは?」

「まだ来てないけど?」

「…そう」


 母親は父親に比べて帰ってくる回数が倍程度には多いが、こんなピンポイントのタイミングで帰ってきているとは思わなかった。姉は何をしているのだろうか…?


「あ、瑠依」

「姉ちゃん交代制の約束は?」

「いや、メール送ったけど気づいてないの?今日はどっちなの?って。交代制が今日からなのはいいけど、どういう交代制にするのかとか全く決めてなかったから」

「あー、一日交代…じゃなくて一週間交代のほうがいっか。それだと今日は俺だね。明日から一週間が姉ちゃんだ」

「おっけー」


 確かに、言われてみれば食材の買い出しは一週間に一度、俺が全部を決めていた。だから、その買い出しの分が残っている以上、今日は俺がやるべきだったのだろう。まあ、買い物は毎週日曜に行っていたから、明日からは姉だ。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 痛覚一割って、プレイヤーはドMしか残らないと思う しょっちゅう攻撃受ける前衛とか論外かと
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