初討伐
因みに、ナオに指定された俺のステータスはこんな感じだ。
名前:レンジ
種族:エルフ
レベル:1
方向性:【遠距離物理】
職業:弓使いLv.1
HP:10/10
MP:20/20
STR:7
VIT:0
AGI:3
INT:2
DEX:4
【スキル】
【望遠Lv.1】【目測Lv.1】【弓術Lv.1】【弓技Lv.1】【射撃Lv.1】【回収Lv.1】【AGI上昇Lv.1】【DEX上昇Lv.1】【視力上昇Lv.1】
【称号】
STP:0
SKP:0
種族をエルフにしたおかげで、MP、INT、DEXに2ポイント、AGIに1ポイント補正が掛かっている。確か人間だったら全ての項目に1ポイントだったはずだ。STP、SKPはレベルアップ毎に10ポイント貰え、スキルレベルもそれ以外で上げることは出来ない。で、職業レベルが上がるごとに、STP、SKPが5ポイント貰えるらしい。
スキルレベルの限界は10で、派生又は進化するとナオが言っていた。
全てのスキルは習得するのにSKPが2ポイント必要で、自分の方向性だと半分、要するに1ポイントで習得でき、他の方向性のスキルは2倍、要するに4ポイント必要らしい。
それに、ナオの話によれば、基本的に遠距離は不遇らしい。何故なら、遠距離の一番の利点である魔法は、近距離の方向性の中にもあるのだ。まあ、限界射程範囲が8mらしいから遠くから攻撃することは出来ないが。
「じゃあ、そこらへんから見つけて撃ってみて」
「分かったけど、外しても文句は言うなよ?いつも使ってるのとは全然大きさが違うから」
「良いから撃ってみろって。別に外したぐらいじゃ怒らんし」
言われるがままに、【望遠】と【目測】、【視力上昇】によって強化された能力を行使し、グラスラビットを見つけた。距離的には60mちょいだろうか?感覚的には遠的より少し遠いぐらいの所で草を食べていた。いつもやっている通りに構え、撃とうとしたのだが、如何せん大きさが全然違う。想定していたのとは全く違った。まあ、それでも撃つ事は出来る。感覚を測るためにも軽く撃った。
「お?」
ナオの声も虚しく、グラスラビットからは5m程手前の場所で落下し、消失した。勿論、それに気づいたグラスラビットは脱兎のごとく逃げ出してしまった。
「すまん外した」
「何やってんだよ…まあ、レンジなら次は確実に当てられるよな?」
「あと4、5本は確実に外すと思う」
「おー頑張れ。当たるまでこっちはこっちでβの時の知り合いと連絡取っとく」
何となく腹はたつが、こちらとしても外してるのはあまり見られていたくない。空中とにらめっこをし始めたナオは放置し、試射を再開した。最初に配られる『初心者の矢』の数は100だ。【弓術Lv.1】で覚える、ストレージから矢を一つ取り出す技能を使い、何度か撃った。確実に的には近づいている。当たる時は近かった。
それは多分12本目だろうか?これなら行ける!という感覚とともに、グラスラビットの頭部に矢が直撃し、頭の中にファンファーレが鳴り響いた。
====================
グラスラビットを倒しました。
▼ドロップ▼
グラスラビットの肉×1
グラスラビットの毛皮×1
10G
レベルが上がりました。
職業レベルが上がりました。
====================
====================
始まりの街南部の初討伐者になりました。
▼報酬▼
称号【初討伐者(始まりの街南部)】
STP5
SKP5
スキルレベル限界上昇チケット×1
10000G
====================
「よおぉぉし?」
当たった事を喜ぼうとした筈だったのに、視界の中に現れたボードの所為で疑問系になってしまった。限界上昇チケット?ってなんだ?
「お、当たったぽいな。レベル上がっただろ?そのポイントは自由に使っていいと思うぞ。まあ、おすすめはDEXを上げるのと、【回収】を上げるのだ」
【回収】?元からシステム上は討伐後のドロップアイテムは回収できる筈なんだけど。
「なんで【回収】?あと、限界上昇チケットって何?」
「限界上昇チケット?が何かは知らないが、【回収】を上げる理由なら説明出来るけどいる?」
「いる」
「【回収】のスキル効果は、アイテムのドロップ率微上昇に、周囲の落ちてる所有者無しのアイテムを自動回収、投擲武器の自動回収だ。その際、耐久値が大幅に削れるが、レベルが最大になれば耐久値が減ることはなくなる。これは【近距離攻撃】の、一部投擲などを使う人が持ってたスキルなんだけれども、これで矢の消費は抑えられるはず」
「へー」
『はず』という事は確証は無いのだろう。まあ、今ストレージを確認したが確かに『壊れた矢』という表示でストレージに12本あるから、実際にあっている。正直、矢が当たるのならば最大の問題は矢の消費になるだろうから、とても役に立つだろう。
「確かに、壊れた矢っていうのが有るぞ。使用不可らしいけど」
「え、まじ?それ全部ちょうだい」
「ん、どうやって譲渡すんだっけ?」
「システム開いて、フレンドから俺を選択すれば選択肢の中に出てくるはず」
言われたとおりにすると、見つける事が出来た。
「はい」
「ありがとう。んじゃ、もう俺がやって欲しい事は基本的には全部終わったから、後はもう自由にゲームをやってくれて構わないよ」
「え?いや…え?」
なんかこう、一緒にやろーぜ!的なあれは無いのだろうか?VRMMO完全初心者である俺が一人でやるなんて無理ゲーにも程が有るのだが。
「ほんとすまん!一緒にやろーぜって言いながら職業指定したのに、一緒にやれないのは本当に申し訳なく思う。でも俺とお前はプレイスタイルが違いすぎて、正直同じパーティーを組むのは俺にとってもお前にとっても辛いと思う。それに、パーティーは6人でいっぱいでβの時から約束してた奴がいるんだ」
なんかこう、なんだろうな。まあ、リアルでナオと滅茶苦茶仲が良かったという訳でもないから良いんだけど、それだと、何故俺にソフトをくれたのかが気になる。
「んじゃあさ、なんで俺にソフトをくれたのか教えてくれない?」
「ああ。本当に申し訳ないんだけど、俺の知的好奇心?っていうか、知り合い達みんなの知的好奇心かな。【遠距離物理】がリアルスキルで何とかなるのかを知りたかった」
「んんん???そんだけ?」
「そんだけだけど?」
「まじすか」
思っていたよりも、どうでも良い理由で驚いてしまった。まあ、俺としては、ソフトを貰えただけでもとても有難かったりするので、感謝の気持ちしかない。
「えっと、まあ、ソフトくれてありがと」
「いや、その分のお礼はもうしてもらってるから気にしなくていいよ。あと、俺もう行っていいか?俺もスタートダッシュをしっかり決めなきゃまずい」
「え、あ、うん。ありがと?」
「んじゃ、またいつか!」
何か、何かが違う気がするが、まあ良いだろう。確かに、ナオが俺にソフトをくれた時も『最初に少し付き合ってくれれば後は自由にしていい』と言っていた。思ったよりも、最初の時間が短かったが、スタートダッシュを決める為にはそんなものなのだろう。