十六夜さんと【精霊召喚】
リビングで軽く休憩を取ってからログインし、プレイヤーが作ったご飯を食べてから第二の街に向かった。第二の街についたし、特にやる事もない為、メニューからレイナさんに連絡を取る事にした。
『もしもし』
「レンジですが、レイナさんであってますか?」
『あってますよ。どうでした?深淵の森は』
「一応勝ってきましたが、次のフィールドが無理ゲーですね」
『そうなんですか?因みに、今私達は第三の街?迷宮都市につきました。【瞬光】の方々は第二の街をメインにしてるので、此方には全然人がいませんね』
凄いな…。いくら敵が弱いとはいえ、間にフィールドは3個。しかも、第二の街から第三の街へ行くには洞窟を抜けなきゃいけないらしいんだが…。
「洞窟どうでした?」
『暗視をレベル3ぐらいまで上げれば問題なかったですね。万全を期すなら7ぐらいは欲しかったですが』
「…んじゃ、俺も第三の街に行きます。残っててもやること無いんで」
『ええ。ぜひ来て下さい。今は十六夜さんという方ともパーティーを組んでますので』
「へー。すぐ行きますね。出来れば今日中にも。では」
『ええ、さようなら』
よし。じゃあやっていこう。因みに、第三の街も西の方に有る為、始まりの街から第三の街まで、ほぼ一直線でつなぐことが出来るらしい。
正直、ツインヘッドベアと比べると、どうしても物足りなく思ってしまうので、全速力で第三の街まで進んだ。道中、ゴブリンは片っ端から倒して、速攻でホブゴブリンとゴブリン数体を召喚し、倒して、洞窟へと入った。洞窟内で出現する魔物はレイナさんに教えて貰っており、基本的に洞窟内の魔物はHPが少ない為、一発で倒すことが出来ていた。又、本来であれば多少は迷うはずの洞窟を先駆者の情報というセコ技を使い速攻で攻略した。ボスであるジャイアントスケルトンは、骨と骨の間を矢がすり抜けて多少は苦労したが、難なく突破した。
レイナさん曰く、洞窟の攻略推奨レベルは20らしいが、此方はジャイアントスケルトンを倒したタイミングで28まで上がっていたので一切問題ない。
その後、洞窟から出てしまえば此方のものだ。
街の周辺フィールドはボスを倒すこと無く街に入る事が出来る為、魔物は全部無視して街に入った。
かかった時間は大体30分程だろうか?大分良い気がする。1時間ぐらいは闘技場にいると言っていたので、闘技場を探そうと思ったのだが、探すまでも無かった。
とても大きいのだ。それこそ、分かりづらく言えば東京ドーム半個分ぐらい。街の南西部に建てられているそれは異様に大きかった。勿論、街の大きさもとても大きい。
闘技場は、中に自由に入ることが出来、そこでは女性とジャイアントスケルトンが戦っていた。
「あ、レンジさん。早かったですね」
「全力疾走できましたから」
「いや、それにしても早いですよ」
「ありがとうございます。てか、ツインヘッドベアが風の鎧纏ってたんですけど、そんなの聞いてませんよ」
「そうだったんですか?私は攻撃するまでもなく殺されてしまったので分かりませんでした」
…。そうなのか。接近して攻撃してきたり、風の刃を使ってくると言っていたからある程度善戦していたと思っていたのだが…。
「あ、あの…」
「ん?」
「この前はすみませんでした!」
「…?……あ、あれか。良いよ全然気にしてないし。てか今の今まで忘れてた」
実際、ツインヘッドベアと戦うのに夢中になりすぎて忘れていた。
「あ、そうだ。フレンド登録しておこう」
「あ、はい」
これでフレンド3人目だ。個人的にはルトさんともフレンド登録しとくべきだったと後悔してはいるが、ルトさんと話すきっかけにもなっているユウさんには恨む気持ちは一切無い。まあ、感謝はしないけど…。
「んで、あの人が十六夜さん?」
「そうですね。【近距離攻撃】で、職業剣士。短剣2つが基本的なプレイスタイルだそうです」
「……」
ジャイアントスケルトンの動きが、俺の知っているのよりもよっぽど力強いのだが、何故だろうか。
「この闘技場、500G払えば今まで戦った事のある敵をレベル差上下10までで再現してくれるんですよ。経験値とかは貰えませんが死んでもデスペナルティーはありませんし、十六夜さん曰く、死んだ扱いにもなっていないそうです」
「へぇー」
レイナさんに闘技場について軽い説明を受けている間に、十六夜さんはジャイアントスケルトンを倒しきっていた。
十六夜さんがこちらへ歩いてきたタイミングで目があった。
「あ、どうも」
「…ん。…対戦、する?」
「…?じゃあ是非」
視界内にPVPの申込みが表示された。唐突だが、拒否する理由もないので承諾した。PVPのルールはデスマッチ。基本的に禁止事項は存在しないらしい。又、使用したアイテムなどは試合終了後に元通りらしい。便利すぎる。
基本的に俺のプレイスタイルは変わらない。とにかく逃げ、矢でちまちま削ってく。筈だったのだが…。
「先にどうぞ」
「?じゃあ、有り難く」
ツインヘッドベアとの対戦時、知った事として、弓技のスキルは重ねがけ出来るものが有る。という事だ。
「【クイック】【ダブルショット】【チェイサー】」
「…ん」
だが、俺の重ねがけも虚しく、両手の剣を使って簡単に弾かれてしまった。
「まじかおい」
「…こっち。【精霊召喚:風】『フウ』」
「…はい?」
精霊召喚がどんなスキルかは分からないが、やばいことだけは分かる。取り敢えず、受け身に回ってしまった以上、弓は邪魔になるだけだ。弓をしまいツインヘッドベアの双剣を取り出し、【気配感知】【隠密】を発動した。
「…消えた?【隠密】か」
「当たり。んで倒れろ」
隠密を発動してすぐに、全速力で十六夜さんの後ろに周り、剣を振った。
が、簡単に受け止められてしまった。
「…。ん」
「はい?いや、『ん』じゃないんだけど…」
突然だが、AGIという物は移動速度だけでなく、動体視力や、思考速度まで上げてくれている。ただ、元々の人間のスペックを超えてしまうと、認知が出来なくなる。だが、そこでINTを上げることで認知できるようにするのだが、それをも越えたらどうなるだろうか?
答えは、全くわからない。だ。
「何をした?」
確実に攻撃をされたのは分かる。そして偶々、そこに剣を持ってこれたお陰で防御できたのも分かる。だが、何をされたのかが分からなかった。
「防がれた…初めて」
「そりゃどーも!」
ちょっと勝ち目がないなこりゃ。相性の問題も有るが、確実に俺よりもAGIが高いだろう。
「もう少し本気出す…【精霊魔法:風】【風精霊の加護】」
「ちょ、死、死ぬ!」
「死んでない」
「い、いやまじで死ぬ!」
ジャイアントスケルトンを倒したときに上がったレベル分のポイントを全てAGIに振り、気配感知と体術のレベルを上げてもまだ追いつかない。少しぐらいは楽になったかもしれないがそれだけだ。まだ到底追いつけていない。何となく、何となくで防げているが、剣術の補正も無い俺が長時間耐えられるとは思わない。
実際徐々にだが、HPは削られていた。
……。
「負けた」
「…勝った」
いや、よく考えれば、近接相手によく善戦したのではないだろうか?しかし、精霊召喚というのの意味が分からない。俺は闇精霊と火精霊のクエストを発生させているが、2つ目のクエストをそんなに早くクリアできるとは思わない。風精霊と言っていたが、どういった方法で特殊クエストを発生させたのだろうか?
主人公は、弓に対して特別なこだわりは無いので、場合によっては剣も握ります。空振りますが…。




