暴発──
そういえば、二巻の予約がTOブックスオンラインストア様にて始まってました。
宣伝……。
番外編が2、3万字近くありweb版との内容の差が結構有るんで是非ともお手にとってくれると嬉しいです。
レンジ自身にうに発言をさせる事にも成功しました(ボソッ)
頭上から響いたその声に、反応が少しだけ遅れる。上を見渡してみれば複数人の人影が見えたので、恐らくその人達が声をかけてきたのだろう。本音を言えば……グドラの事もあり面倒臭い。が、MPが残っていない今、プレイヤーがいるに越した事は無い訳で──
「鷹をお願いします」
「わかりました!!ほら、行こっ!」
声をかけてきたプレイヤーが後ろの人影に声をかけ、少し離れた所へと劣化災獣に攻撃を加えながら移動を開始したのを横目に俺は俺で下位災獣へと視線を向けた。顔を見た限りでは完全に知らないプレイヤーだったのだが……、
「思ってたより怖くなかったね!」
「あの動画、出てくる魔物が怖すぎるのよ……いるし。私は近づきたくないわ」
「矢の雨見てみたい」
「あー……」
声を聞く限りでは俺の事を知っていたのだろう。ラドを呼び戻して下位災獣の上空を血の雨を降らせながら旋回させつつ、劣化災獣への意識を途絶えさせない様に気をつける。
「……来ないな」
下位災獣の雄叫びによって此処へと来たのだから、攻撃を加えれば劣化災獣が攻撃主の元へと向かってくる物だと思っていたのだが……翻弄されているプレイヤー達、此方へ来る余裕がある劣化災獣を見る限りだと違うのだろう。
「……クラ、ロスト。クロにダメージが入らない様に立ち回って」
下位災獣が氷の槍を周囲へと撒き散らし、クラやロストがそれ等を乱暴に薙ぎ払っていく為近くにいたクロへとダメージが入りかける。俺同様HPがほぼ無いに等しいクロはそれだけで死にかねないので細心の注意を払う必要があるのだ。
「うわっ、やばっ!!」
「えぇーい【ダブルキャスト】【エクスプロージョン】【ブリザード】……ぉおお!???」
「げっ、それ暴発してない??やばい光出してない!?」
「……火と氷は複合出来ないでしょ」
「……」
クールタイムが切れたMP回復薬を飲み、気になったのでやばそうな会話をしている方をチラッと見たのだが、見なかった事にした。2つの魔法陣が歪に絡み合って拙そうな光を発している光景など俺は──
「「「「あっ」」」」
『ドゴン』と言ったような聞いたことが無い様な爆発音をたてて魔法陣が暴発する。それを見ていた俺は勿論、正面切って戦っていたクラやロスト、下位災獣までもがそちらへと顔を向け、固まる。空を飛んでいた劣化災獣は爆風に煽られて制御を乱したりと……グドラの侵食領域を避けるように彼等が割と離れた場所で戦っていてくれた事で俺への被害は無かったが、大きなクレーターが出来、クレーターの表面を紅く染まった氷の様な物が覆っていた。
「……ん?あれ……」
「いやー、危なかった危なかった」
「……あんたのせいでしょうが……毎度の事だから怒る気も失せるわ」
「ぶいっ」
「あー、うん。いつもありがと……」
「次はトルネードとアースクエイク辺りにするよ!」
「だからなんであんたは……」
何故か中央で無傷のまま楽しそうに談笑している彼等が、紅く染まった大地によって押し上げられていく。相当離れた所の木に止まっていた劣化災獣は……ん?
「震えてる?」
一瞬震えているように見えた後すぐに和気藹々としている彼等の元へと襲いかかりに行ったので気の所為の可能性もあるが……一応覚えておくか。
「クラ、ロスト。気を取られてないで【ハンドレッズアロー】【インパクト】【ブラスト】」
200本の矢によって、固まった戦場が再び動き出す。やはり下位災獣の防御力は高く、未だ回復しきっていない部分の傷跡を広げる事には成功したが、その程度しか見た目におけるダメージを与える事は出来なかった。実際の所は沢山ダメージをくらっている──といった様なのを期待しているが、その場合はそれ以上に回復していそうなのでそこまで期待も出来ないだろう。
回復しきった翼を広げて空に舞い上がろうとした下位災獣の足に……ロストが食らいつく。
「ガァアァァアア゛!!!」
「ジャァアアアア!!!!」
腐敗しだした足、悲鳴をあげる下位災獣を見るに、ロストがありったけの毒を込めたのだろう。翼を乱暴に羽ばたかせて飛び回る下位災獣へと突進したクラが、その体を地面へと引き摺り下ろし……、
「んにゃ」
周囲一帯の影が動き、下位災獣の足を両断した。




