侵食領域と影響
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侵食領域の逆侵攻を行います。
対象:???・???
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先ほど流れたこの通知は、想像以上に辺り一帯へと大きな変化をもたらした。いつもであれば根付いてからすぐに広がるグドラの領域も、徐々に広がってはいるものの所々で押し戻されたり、唐突に大地になると共に木が生えてきたり、凍ったりしていた。
それ以上に変化があったのは下位災獣であるライオンの周囲なのだが……、
「氷……?」
毒沼が凍り、氷を木が突き破り、木を毒沼が腐食させる。それと同時に木が毒沼を掻き消し、氷が木を粉々に砕き、毒沼が氷を飲み込むといった光景が目の前には広がっていた。
勢いには差があり、一番強いのが毒沼、その次が木と大地、最後に氷なのでグドラの領域内にいる俺が影響を受ける事は然程無いのだが、下位災獣の真下から体を出そうとしていたクラなどは、部分的にではあるが一瞬で粉々に砕かれてしまっていた。
「……なんだ?」
氷は恐らく下位災獣であるライオンだろう。水属性だと思っていた上に、先ほどまでは木を操ったりしてきていたので想定外ではあるがそれは良い。それよりも……大地、木を司っている災獣が近くにいる事の方が問題だった。その災獣が何処にいるか分からないので、唐突に攻撃をくわえられる事を警戒しながら戦わなくてはいけない。
イベント当初から発動している【気配感知】【気配探知】【魔力感知】【熱感知】に、自動で発動している【気配察知】。それ等全てが常時周囲を示し続けるという状態なので、周囲を警戒するには精霊たちに頼るしか無いのだが……、
「ヤミ、ファイ、イム……分かるか?」
『……』
『わかんない!!』
『ん〜とね!ビューって、ここビューってなってるよ!』
「だよね……」
イベントまでに上級精霊になる事が出来、話す事が出来るヤミ、ファイ、イムに聞いてみるが、あまり期待できる回答は返ってこなかった。因みに、イムがライなどよりも先に進化できている理由だが……推測の域を出ないのだが矢を射る時などに毎回頼りにしていたからだろう。風精霊の力があればまず間違いなく対象に攻撃をくらわせる事が出来る。
それにしても……ファイの直球な回答は良いし、ヤミの髪の毛を引っ張った回答もまあ良いだろう。が、『ビュー』ってどういう事だろうか。風精霊である上に風の擬音なのだから、ここに強風が吹き付けているという事でも伝えたいのだろうが、今俺には全くと言っても良い程風が来ていなかった。
「……来ないな」
領域を広げる事に力が入っているのか、何処かで見たことが有るような遠吠えのポーズをしながら水の柱を周囲に打ち立て続ける下位災獣に、動き続ける領域の境目。遠距離攻撃が出来る俺には境目など関係ないと言ってしまえばその通りなのだが、グドラによって召喚された眷属たちが簡単に水柱によって打ち上げられているのを見て、多少圧倒されてしまっていた。
一応は精霊たちにお願いをしながら攻撃を放ってみるものの……、
「……【領域射撃:攻殺陣】」
「ガァァア!」
水を周囲に覆われて防がれてしまう。そろそろ来るであろう眷属の再召喚に備えて全力攻撃はしていないのだが、それでも全くダメージがくわえられないというのは想定外この上なかった。MP回復薬を飲み、新たに現れる眷属達への準備……というよりも災獣を討伐する為の準備を万端にする。大地、木を司っている災獣も気になりはするが……出てこないならば下位災獣の方が優先順位が高くなるのは当然だろう。
「眷属が出たら速攻である程度を倒すから、あまりはコリィとクロで。下位災獣はクラ、ロスト、一緒に殺るよ」
「ガアァァァアァアァ!!!!」
「【ハンドレッズアロー】【インパクト】【ブラスト】!!」
下位災獣へ、では無く周囲に召喚された眷属たちへと向けられた攻撃が超大規模な爆発を引き起こす。ファイ、エンによって強化された爆発威力だが……水属性を主とする災獣の眷属だからか、相当数が残ってしまっている。が、それ等はクロ、コリィに任せてクラとロストと共に下位災獣の攻略を開始した。
「まずはっ、【矢刻ノ雪】【サウザンドアロー】」
「「ジャァアァアァァァァ!!!!」」
「ガァァアァァァァ!!!!」
矢の形をした雪が降り出し、2000本の矢が射出されると同時にロストからは大量の石槍、ブレス、魔眼攻撃が。クラからは真下からの大量の体を使った打ち上げ、毒攻撃が行われた。
現在下位災獣には貫通耐性の極大低下が付与されているので……当たりさえすれば、大きなダメージを与えられる。当たり前のように真っ向から迎え撃たんと飛び立ちながら大量の水槍を展開した下位災獣の眼球に……、
「【ツインアロー】【クイック】【ペネトレイト】【エンチャント】『水』」
攻撃をくらわせる。……まずは、
目から潰させてもらおう。
一番相性悪いのでもう数話は掛かりそうです……。




