クラン戦8
凄い今更ながら宣伝を。
拙作『不遇職の弓使いだけど何とか無難にやってます』が5月9日、TOブックス様のお陰で書籍化致します!
イラストレーター様はbun150様で僕はレイナさんが個人的に好きですはい。
書籍版では一部大幅に変わった点などもありますが、是非お手にとって見比べて頂けると嬉しいです!!
3ッ!!!
【アースウェーブ】、地面を波立たせる技はクラにとって少し揺れたという程度の物でしか無く全くダメージを与えられていなかったが、全身を揺らされたというのは大きな衝撃であった。そもそも全長が50m近くあるクラに取って、大地は自分の物であるという認識が強く……、
『ジャァアアア!!』
「んなっ!?」
「全員、出来る限りの退避を!!」
「シャァアアァァァ!!!」
「っちィッ!!」
それ故に、自分の領域を汚そうとする下々に罰を下そうとするのは当たり前の事であった。それまでは主の指示通りに姿をさらけ出す事無く屠ろうと考えていたのだが……”指示”程度でしか無いのなら聞く必要がないだろうと考えたクラは姿を晒した。
『ャァアア???』
「シャアァァァ!!!」
「な、なんだ?」
「え、今バジリスク味方を攻撃したぞ」
「……協力していないのなら好都合ですねー。今のうちにバジリスクの援護を!!」
だが、ロストにしてみればそれは重大な違反行為であった。従魔同士で争う事は禁止されていたが、それでも、範囲攻撃に入って来たのだから仕方がない。その後、何故か攻撃をしてきたのだから仕方なくやり返した。ただ、その事実が有るだけ。ロストにしてみれば、やられた事をやり返しているだけ、偶々攻撃の範囲内にクラが勝手に入ってきただけ。そういう認識なのだ。
『ジャァァアアアア!?!?』
「シャアアアァァァ!!」
「が、頑張れバジリスク!」
「そんな事言ってないでー……何属性が効くんですかねー?色々と試してください」
「【ライトボール】……あ、躱す価値も無いですか」
「【ハリケーン】……も避けねえのかよ」
次々と飛んでくる魔法の数々も、クラに取っては躱す価値すら存在しない。一部魔法は少し防御する必要があったが、それ以外は対処する必要すらないのだ。ロストがバランス良く育っているとしたら、クラは完全な近接特化。その種族特性故に、本体の姿を晒すまでは何処にいるのかすら掴ませていなかったが、クラは魔法をほぼ使えない代わりに圧倒的な防御力と攻撃力を持っていた。
「んー……まずいですねー、主に私の精神が」
「いやっ、気持ちはわかりますけど耐えてッ!」
「えー……私か弱い乙女なんですけど」
「え?」
「ん?」
「いえ、何でもありませんか弱い乙女のサブマス様!!」
「か弱い……?舐めてるんですかー」
「えぇ」
【瞬光】の全員に軽口を交わすぐらいの余裕が出来ていた。それははっきりと言ってしまえばレンジの従魔達が仲間割れをしてくれたからであって、本人達の力による物では無いのだが、好機を見逃すほど下手なプレイヤーはこの中にはいなかった。
「全員、あの邪神の眷属みたいなムカデへ。バジリスクなら連携は取れますよねー」
「行くぞ野郎ども!!」
「「「おうっ!!!」」」
が、それでクラを倒せるのならばロストも苦労しない。クラはあのデスセンチピードよりも上位の存在なのだ。デスセンチピードですら身体を半分にされても死ななかったのだから……当たり前のようにクラは自分の身体を切り離し、【瞬光】の人々へと突っ込ませる。その一体一体の強さですら試練の森のあのボスに相当する為、【瞬光】のプレイヤーであっても、切って捨てるような事は出来なかった。
「あー……恨みますよーレンジさん」
「ルルルルル」
「リーマンさん!新手……って血!?」
「わーってる。俺も見えてる、よっ!!何人死んだ!?」
「8人です!」
「その人数で猫ちゃん倒せたなら十分だな。おいてめぇら、せめて蝶はやるぞ!」
「おっけーれす!!」
「噛んでんじゃねえよ」
「社畜、いっきまァす!!」
「待、無謀と勇敢は別も……やっぱあの蝶に近づけば近づく程動けなくなる感じっすね。リーマンさんどうします?」
「そりゃ……ん?社畜からチャットが……『社畜だけに邪気は私が引き受けた!社畜だけに!』……」
「どうしますかぁ〜?」
「やれ」
「あ〜い【サンダーレイン】」
「ァ゛ァ゛ア゛アアアア゛ア゛!!!」
「女に殺されたんだ、本望だろう。……このタイミングはタバコ欲しいっす。リーマンさん持ってたり」
「しねぇよ」
「ですよねー……って、蝶倒せなくないっすか?」
「いや、元から無理なのは分かりきってただろ」
「んしょっ、これを〜、こ〜してぇ〜」
「え、ちょ、何やってるんすか!?それっ」
「落ち着け。俺達は何のためにゲームをやってる?」
「え、そりゃ日々の鬱憤を晴らすた──」
「──そう。だから──」
「──私達わぁ〜、現実では出来ない事をしてはっちゃけるの」
「おい、俺の言葉を──」
「【マルチエクスプロージョン】」




