クラン戦5
「なっ……!?」
「まあまあ。折角なんだ、情報交換でもしておかないかい?」
「……余裕ですね」
降ってきたバジリスク達に驚かされたものの、全てが落ちてきてしまえばある程度の余裕が出来るのでルトさんの方に視線を向ける事が出来た。……いや、ルトさんの気配は変わらず向こう側にあるので……なんだ?映像?
「いやー、レンジ君。ブラッドスキルが派手だね。僕のとは大違いだ」
「……そうで、え?」
「うん。その反応が見れただけ、クラン内でも秘匿していた甲斐があったよ」
「秘匿、してたんですか?」
「そうだよ。知ってるのは……僕とサブマス、後はスイ達だね。他にも個人的に知ってる人はいるかもしれないけど……まあいないだろうね」
「……なんで?」
正直【瞬光】の人数を考えれば、ブラッドスキルをクラン内に公開するだけで最強クランに至る事が出来るだろう。そうなっていれば例えグドラがいようとも、俺一人では勝つことが出来ないのは間違いなく、クラン戦で圧倒的勝利を得られるのも間違いない。
「んー。僕のギルドに派閥が有るのは知ってるかい?」
「はい」
「大まかに分けると、楽しむためにゲームをやっている人。頂点に立つ為にゲームをやっている人なんだけど……【瞬光】はどっちを目指してる様に見える?」
「……頂点をですか?」
【瞬光】に対する俺のイメージは攻略組、最先端を走り続けようとする人々の集団という物で固まっている。何故そんな質問をするのかは分からないが……下手に深読みするよりも正直に答えたほうが良いだろう。
「だよね。でもね……僕にとって、トップにいる事は手段でしか無いんだ。誰よりも一番最初に”面白い”を体験する。それだけの為にトップにいるんだ。だから……情報共有はしない。あってもヒント程度なんだ」
「……」
「まあ、僕の場合は”面白い”を提供する事が最も”面白い”事だからね、しっかりと全ての情報が来るようにしているし、情報操作も沢山しているよ。ブラッドスキルなんて顕著な例だ。僕等側の人間にはヒントを、それ以外にはそもそも情報を与えない」
「……何故今そんな話を?」
リーマンと……スーラ、同じクラン員だったのに全然反応が違かったのは性格の問題だけでなくそういった問題もあったのかもしれない。だが、何故今その話をするのかが分からなかった。時間が経てば経つほど、俺が有利になっていくのは間違いない。
「レンジ君が考えてる事は手を取るように分かる。だからこそ、言わせてもらうよ。こうした方が楽しめる。まずは仲間達での勝負だ。勿論、僕は勝つと思っているし、レンジ君も勝つと思っている。だからこそ、待った方が楽しめるんだよ」
「……。俺の従魔が勝ったらルトさん達では勝て──」
「──勝つ。だからこそ、待ってるんだ。リーマン達が勝とうが負けようがどうでも良い。何なら負けてくれていい。全力のレンジ君と当たりたい。そんなプレイヤー達がここには集まってるからね。勿論、ナオ君も僕も含めてね」
「へぇ」
「ほら、MP回復薬を飲みなよ。ただ、【チャージ】は使わせないけどね。事前準備は禁止だ。その場での全力勝負が僕は……いや、僕達はしたい」
それならばと、MPが不安だった事もあってお言葉に甘えてMP回復薬を飲んだ。ルトさんの奥に見える40人程度の人影。内訳は全く分からないが、別に良い。全力で戦いたいというならば、俺はそれを【遠距離物理】の人間として真っ向から捻り潰す。まだ召喚していない一体の従魔を使えば、それも容易に行えるだろう。
「ルトさん」
「なんだい?」
「俺は、弓使いとして叩き潰しますよ」
「そう……?そう。良いね!乗ってくれて嬉しいよレンジ君。なら僕達は、挑戦者として君を引きずりおろそう」
「そもそも近づかせませんから」
「あー……そうだ。空のワイバーン達は一度引き下げるから安心してね。スタート地点は守るよ」
「あ、そういえばバジリスク」
「調教師っていうのは便利でね。召喚師と割と似てるんだよ。まあ、レンジ君の【チャージ】対策だけにバジリスクを4体も使ったんだ。僕等の相手、レンジ君の力を見れたのは本当に良かった。フェアじゃないし、僕のブラッドスキルも公開しよう」
「へ?」
空から降ってきたバジリスク。確かに、俺の全力攻撃はそれの対処をする事しか出来なかったが、情報戦だって立派な戦いだ。ルトさんのスキルの推測をたてながら話を聞いていたのだが……まあ、教えてもらえるのなら教えてもらおう。
「パッシブスキル、【超感覚】まあ、第六感、直感みたいな感じで【気配察知】とかの延長と思ってくれていいよ。で、今僕がレンジ君と話せてるこれが【蜃気楼】。分身を作り出したり立ち位置を入れ替えたり出来る、応用効くスキルだよ。これ以上は……自分で確かめたほうが楽しいだろう?」
「そうですね」
戦闘……入る予定だったんだけどな。
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