乾杯
第四試合。要するに、俺とサチというプレイヤーの戦いは魔法使いvs弓使いという他には見ないであろう戦闘が繰り広げられる……様に思ったらしいがサチさんが魔法を使うよりも前に俺がヘッドショットを決めてしまった為呆気なく終わった。何故第三者視線が入っているのかと言うと……。
「レンジくん聞いてる!?あれは流石にひどすぎるよ!」
「レンジ……お前が魔王だったのか」
「……その……」
「ぼ、僕は良いと思いますよ!」
レイナさんと十六夜さんはいないとはいえそれ以外の全員がいるクラン内で、俺は正座を自主的にしていた。……コワイ。わざわざこの為だけに闘技場から戻ってきたとかいう楓さんとソラもいる中で、俺を見て腹を抱えて笑っている姉は毎度ながら腹が立つが、そちらに視線を向けると目の前にいる楓さんに怒られる。
ただ、言い訳をさせてほしい。
「サチvsスーラの試合見ました?」
「見てないけど……そんな凄いの?」
「見てない」
「……一応は」
「……はい」
俺とサチさんの試合の後に行われた、サチさんとスーラの戦い。スーラの言動によると、俺とは違って紳士だからという理由で先手を譲ったのだが……大爆発でワンパンされた。10秒もかかったとはいえ大爆発だ。俺がその攻撃をくらっていれば負けたのは間違いないので、その攻撃をくらうよりも前に倒した俺の行動は間違っていないはずだった。
楓さんとソラが記録映像から第五試合を見つけ出して視聴している間にユウさん、イサを味方につけてから姉に精霊達をけしかける。お願いどおりにボール系魔法と呼べるか呼べないかと言った辺りの威力の攻撃の嵐を見て満足しながら……、
「う、うわぁ……複合魔法に並列魔法?あと、魔法陣で置いてるね……これは……うん、私が悪かったよレンジくん」
「……」
サチさんの攻撃力を理解した楓さん、声を失っているソラを一目見てから扉から入ってきた十六夜さん、レイナさんを迎え入れる。叱られてる最中もこっそりと試合を見て結果を見ていたので分かっているのだが、十六夜さんが3勝0敗で本戦進出、レイナさんが2勝1敗で本戦進出だった。
「本戦進出おめでとうございます」
「レンジも」
「レンジさんもおめでとうございます」
レイナさんがちょっと悔しそうな顔をしているのは1回負けてしまっているからだろう。一言お礼を言ってから未だ姉に攻撃をし続けていた精霊達を諌めて自分の定位置へと戻っていく。もちろん、正座はしない。
「じゃあ……明日のクラン戦の話でもしますか?」
「打ち上げしようよ打ち上げ!ソロでは十六夜にレイナ、レンジくんが本戦に行ってるしパーティだとソラくん。クラン員の半数が本戦に進出できてんだよ!?」
「では準備を──」
「もう出来てるよ!宴会グッズは一式持ち歩いてるから!安心してね、死ねるぜ系統は無いから!」
「あ、私極死ねるぜ持ってるよ?」
姉のその一言は完全になかった事になるようで、各々が黙々と準備を始めた。その風景を見渡した後に嬉々として水筒に飲み物を移し始めた姉を見て、俺へと視線が集まってきたが俺が止められる訳がない。
取り敢えず水精霊であるティアにお願いして浄化でも……あ、無理?一つの水筒に近づいた瞬間に涙目になりながら全力疾走でこちらへと逃げてきたティア。取り敢えず、どれが極死ねるぜなのかが分かっただけ良しとしよう。
十六夜さんも見ていた為分かっただろうが……まあ、共犯だ。
「じゃ、じゃあ……それぞれで飲み物を……」
「わ、私自分のあるから!」
「お、俺も自分のが有るから」
「わ、私も」
「僕も……」
姉が配るよりも前に各々でストレージから取り出した彼女等は準備が良かったのだろう。レイナさんもしっかりと言い出した瞬間に出していたので、手元に飲み物がないのは俺、十六夜さん、姉の三人だけとなった。これならば、被害が出ても被害者と加害者が同一人物になるだけなので問題ない。
十六夜さんと俺が迷いなく一つの水筒を取り、それに続いて姉も水筒を取る。迷いがない十六夜さんと俺の手付きにレイナさんは首を傾げていたが、何か納得できる理由でもあったのか……、
「本戦出場と、楓さんに捧げるクラン戦優勝に」
「「「「「「乾杯」」」」」」
「ちょ、待って!?」
「ぐふっ……」
「「「あっ」」」




