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失恋バスター  作者: kikuna
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念願かなってハルにプロポーズをされた綾乃だったが、不安が消せずにいた。

新居をカナダで構えると言うハルの真意を確かめるため、雅久は対峙するのだった


 式場が見えてきて、僕は襟を正す。


 「ガッちゃん」

 久しぶりに聞く里中の声に、僕は頬を緩まし、軽く手を上げて見せる。

 少しだけ大人になった僕に、里中が嬉しそうに微笑む。

 嫌々着ていたのスーツもすっかり体になじんで、今では自分で新調したりもする。

 里中らしくもない。話の糸口を探るような目で、僕を見る。

 「兄貴なら、元気にしていますよ」

 こんな芸当も、出来るようになった僕の頭を、里中は愛おしそうに撫で、良かったを連呼して喜んだ。

 遠くで呼ぶ声に反応して、里中が、僕から離れて行く。

 僕は呆れるように、隣で素知らぬ顔をしている美憂を、肘で小突く。

 「挨拶くらいしろよ。一応、お世話になった先輩だろ」

 「嫌いなものは、嫌いなの」

 美憂がどうしてここまで、里中を嫌うのか、理由を知りたいと、少しだけ思った僕は口元を緩ます。

 「大人じゃないねぇ」

 「雅久にだけには言われたくはない」

 妙にツボにはまってしまった僕は、笑いが止まらなくなる。

 ますます不機嫌顔になる美優が、またおかしくて、おかしくて。

 先に会場に入って行く美憂を追いかけ、僕は中へと進んで行く。

 酒も料理も喉を通って行かない。

 幸せそうに並ぶ二人を、僕はまともに見ることが出来ずにいた。

 「ちょっと大丈夫なの? 何なら私、二人に言って来てあげようか?」

 顔を近づけて言う美憂に、僕は苦笑する。

 「何て言うんだよ」

 「あなたたちバカでしょ。チェリーボーイをからかうのにもほどがあるって」

 「チェリーって、失敬なやつだな」

 「違うの」

 大袈裟に驚く仕草に、僕は遠い目をする。

 

 ――そして、緊張の時を僕は迎えていた。


 ウエディングドレスを着た綾乃を目の当たりにして、僕の胸がいっぱいになる。

 僕はそれをグッと堪え、メモを取り出す。

 言いたいことは沢山ある。

 肩で深呼吸した僕は、一度開いたメモをそのまま胸ポケットへ戻す。

 僕は二人をまっすぐ見る。


 「綾乃さん、僕と会う時はいつでも、君は泣いていて、ひた向きにハルを愛し、ハルだけを見続けていた。不埒な男でどうしようもないハル。だけど僕にとっては無二の親友。僕にどこか似ていて、全く違う。こんなこと、この席で言うべきではない。それを百も承知で告白をします。僕はまだ綾乃が好きだと思う。泣いて電話を掛けてきたら、僕はきっと綾乃さん、君に会いに行ってしまうだろう。そんな愚かな僕から奪った愛をハル、何があっても手放さないでください。これは僕の願いであり、祈りでもあります。幸せは後からついてくるのではなく、幸せに向って行くものだと言って、大切な人を守ろうとした、男を僕は知っています。愛の形に、何が正しいのか間違っているのか、それは誰にも分らないと思います。でも一つだけ言えるのは、その人が笑う姿だけを見続けていけれるように、今日という日を精いっぱいに生きる。僕はそう信じています。綾乃さん、そしてハル、僕から心を込めてこの言葉を贈ります。僕も君たちに負けないくらいの幸せを手に入れて見せます」


 肩の荷を下ろし、席に戻った僕を美憂が、肩で小突いてくる。

 「やればできるじゃない。良くできました」

 頭を撫でようとする美憂の手から逃れ、僕は酒を一気に煽る。


 ロンリーファクトリーと兄貴があだ名をつけた時の僕は、部屋に閉じこもり、見えない相手に怯えていた。

 タイムが伸びるたび、友達がライバルになって行った。

 前を走り続けることは容易なことじゃない。

 閉ざしてしまった心の扉をこじ開けてくれたのも、兄貴。

 自分のちっぽけさに、嫌気がさす。

 今度会う日は、もっとうまい酒を飲もう。そして、バカ話をしよう。


 日焼けした兄貴の笑顔の写真が添えられた手紙が、一昨日届いた。

 大切な人が出来たから、早々に帰って来るらしい。


 それぞれの新しい人生に向かって、僕らは歩き出した。


晴れて二人の結婚式をむかえた雅久。

新たな門出に、思いのたけを募らせる雅久の巻でした。

最終話に続く

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