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失恋バスター  作者: kikuna
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嵐の中、綾乃を見つけ出した雅久。

ビジネスホテルの一室。

ハルのために泣く綾乃に、気持ちが付きあげてくる雅久だった。


 「雅久君?」

 それは衝動的だった。

 「もう泣くなよ」

 僕は綾乃を抱きしめていた。

 「そうだよね。泣かれたって雅久君、困るだけだよね。ごめんね……」

 泣き笑いする綾乃が切なくて、僕はそのまま口を塞ぐ。それが罪だと知っていても、止めることはもうできなかった。

 「やめちまえよ。もういいじゃないか。ハルなんかやめちまえよ。僕が綾乃のことを幸せにしてやる」

 「雅久君、放して」

 怯えた瞳が悲しかった。

 「どうしてだよ。畜生畜生」

 嫌がる綾乃の手を押さえつけ、僕は夢中でその胸へと顔を沈める。

 「お願い……、雅久君、やめ……」

 嫌がる綾乃を僕は愛し続けた。

 

 朝、最低な気分で目覚めた僕は、横で目を閉じている綾乃の髪を撫で、頬にキスをする。


 綾乃が一睡もできなかったことを気が付かないふりをして、僕は自分の中に芽生えた罪悪感をかき消すように、綾乃を抱き寄せる。


 「幸せなんか、後からついてくるものでしょ?」

 里中が僕に熱く語った一言だった。

 半信半疑でその時は聞いていたけど、今はそれを信じたい気分だった。   


 嵐の爪痕が残る街を、僕は綾乃と歩く。

 ずっと望んでいたことだったのに、身が切られるようで、心が痛んだ。

 僕はそっと綾乃の肩を抱く。

 綾乃は何も言わず、小さく微笑んだ。


 ――そして、僕らは付き合い始めた。


 何も考えまい。

 泣き顔ではない、綾乃が僕の腕の中にいる。それだけでいい。何も望まなければ、僕らはきっとうまくやっていける。今は辛くても、時間が解決をしてくれる。その為なら僕はどんなことも厭わない。

 僕の決心を知った美憂が珍しく、良しと言って、僕の前から去って行った。

 もう僕に迷いはなかった。

 綾乃が僕を見つけ手を振る。

 それを見て自然に顔が綻ぶ。

 もうこれ以上何も望むまい。

 幸せな日がそこにはあった。

 綾乃の為なら何にでもなれる。

 そういう僕に、綾乃は困ったように笑う。

 大袈裟でも何でもない。僕は綾乃が好きだ。胸を張って言える。

 無理も、いつか無理ではなくなるそう信じて、僕は突き進むことを選んだ。

 苦手な人ごみに溶け込み、少しおしゃべりになった僕を、綾乃が目を細め見詰めてくる。

 二人の間を阻むものなんて、何もない。

 遅い春に、僕は心を躍らせていた。

 だから僕は気づかなかった。綾乃がどんな気持ちでいたかなんて……。


 瞬く間に月日が流れ、イルミネーションが街を彩り始める11月。

 少し急ぎ過ぎかなと思いつつ、僕は指輪を手に綾乃を食事に誘う。

 緊張で吐きそうだった。

 うまくいったら兄貴の背中を、押そう。

 そんなことを考えながら二人で食事をした帰り道、イルミネーションを見て綺麗と呟く綾乃に僕はプロポーズをした。

 恐々顔を見る僕に、綾乃は小さな声で、はいと言ってくれた。

 嬉しくって、僕は初めて綾乃の前で泣いた。

 ずっと僕に無縁だと思っていた、瞬間だった。

 人目も気にせず、僕は綾乃を抱き寄せ、唇を重ねる。

 もう大丈夫。

 僕は自分の中にあった不安を吹き飛ばせ、浮足立っていた。

 


愛と罪の狭間に揺れる雅久の巻でした。

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