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初めての家の外

「森に行く前に、やるべき事があるぞ」

 森に行く気満々だったのに、コーヒーがそれをさえぎる。

「まず、そこの水瓶(みずかめ)の水が少なくなっている。近くの湖に行って水を補給するのが先だ」

 ふむふむ。なるほど。確かに水は大切だ。生き物が生きていくのに必要不可欠だとあの友達が言っていたな。あと塩も必要だと言ってた。

「分かったよ。コーヒー。水を補給したら行っていいんだよね?」

「あ、あぁ。なんか、素直なお前だと調子が狂うな」

 つまり、以前は素直ではなかったのか。

「素直では、ダメなのか?」

「いや、素直な方が断然いい。わざわざ説得しなくていいからな。どちらかと言うとその喋り方に違和感を感じる」

 コーヒーの言葉に、深く頷くヨーちゃん。

「たしかに、少し堅苦しい言い方には、なれないわ。もう少しくずしていいのよ?」

「そうなのか?」

「そこよぉ〜。そうなのか?じゃなくて、そうなの!?の方がいいわぁ」

 杏が、崩した喋り方を教えてくれる。

「プランクトン、水汲みに行こうよ。早く終われば、それだけ早く森に行けるよ」

 プリンが、木でできた大きなをバケツを二個重ねた状態のものと小さなバケツ一個頭に乗せて持ってきた。

「ちなみに、そのバケツも俺らが持ってきてやったんだぜ」

 コーヒーがドヤ顔で自慢してきた。

 いちおう、感謝はしとこう。

 転生して、初めて家の外に出た。小さいバケツは私が持ち、大きいバケツは重ねてプリンが頭の上で運んでいる。他の部下たちは、掃除をするため家にいる。

 森の木々は、私よりもはるかに背が高く、先端が見えない。私を千人積み上げても届かないのではと思うぐらい高い。それに比例するかのように、幹も太い。私が千人で囲んでも余裕があると思われる。まあ、私が小さくて手が短いので、なりたかった天使やエルフだったらもう少し少ないと思う。

「森は……広いな。それに、沢山の色がある」

私は頭上に広がる木々の葉を指しながら心に浮かんだ疑問を口にする。

「この色は、落ち着く色だな。あ……くずした言い方だと……えっと、落ち着く色だね。緑色なのに透けていてキラキラしてる。緑なのに緑じゃないみたいだ」

「そうだよ。この緑はエメラルドグリーンっていいうんだ。本物のエメラルドみたいに透明度があってキラキラしているのがこの森の木の特徴なんだ」

 隣を歩いているプリンが素早く答えてくれる。

「えめ……らるど?何それ?」

「あ、そっか。見たことないからわかんないのか。エメラルドって言うのはね、宝石なんだ。宝石って言うのは綺麗な石のことでこう……キラキラしてて、光にあたるととっても綺麗なんだよ。でも、お金持ちの人しか持っていないんだ」

 エメラルドや宝石を見たことのない私にも分かるように、丁寧に教えてくれる。

「お金持ちって何?」

「お金をたくさん持っている人たちのことだよ」

「そのお金って何?」

「うーん……お金があると街で物と交換できるんだ。物じゃ無い時もあるけど……。もし、街に出る機会があったら現物を見せて教えるよ」

 プリンは、優しいな。あのゼリーやコーヒーとは、違う。あの二人だと多分こんな風に丁寧に教えてくれないだろう。

「ほら、そろそろ湖につくよ」

 プリンが、前方を見ながら言う。私も前を見ると木々が途切れ、光が差し込んでいた。

 眩しい。目を細めながらプリンに聞く。

「どうして、前が明るいの?」

「太陽があるからだよ。太陽ってのは、明るくて暖かくて眩しい天体なんだ。遮るものがないと暖かくなるけど、眩しくもなるんだよ」

 天体?なんだそれ?

「ほら、少し、地面が盛り上がっているでしょ?あれはね、天然堤防って呼ばれているの。湖の水が溢れそうになっても森に流れてこないようにする役割があるんだ」

 天然?

「アレをこえると湖があるよ。紫色の湖で、とっても綺麗だよ」

 知らない単語については、考えることを放置するか。必要ならいつか分かるだろうし。


 天然堤防をこえると湖が広がっていた。プリン曰く、水は色で綺麗さ、水温、効果がわかるらしい。

 ここの湖のようにはっきりとした紫色な場合、生き物が飲むには十分綺麗で、水温は少し低め。効果が気になったが、プリンは少し残念そうに

「観光地に行ったら、専門家が調べて一般の人でも分かるように看板が立ててあるみたいだけど、ここは観光地じゃないから効果までは分からないんだ」

 一番気になったものがわからなくて残念だ。もし機会があるのなら、その専門家というのに聞いてみたい。

「水温でも水の色が変わるということは、暖かくなったり寒くなったりしたらここの湖の色が変わるの?」

「普通だったら、ね。でも、ここは年中水温が変わらないから色も変わらないんだ。ほら、あそこ。川の水が湖に注がれているのがわかる?」

 ちょうど今、私達が立っている所から少し離れたところを見ながらプリンが聞く。天然堤防が少し沈んで、その間から水が流れているのが見える。どうやら水は森のずっとずっと奥から流れてきてるらしい。

「あの川の水はね、(うしろ)の山から流れてきてる雪解け水なんだ」

 今度は、湖の反対の方向をみた。たしかに、山があった。下の方は薄い青色だが、頂上に行くにつれ白くなっている。頂上は真っ白かと思いきや雲に隠れて見えない。正確な距離はわからないがかなり遠いところにあるようだ。

「山の頂上、雲に隠れて見えないでしょ?実はね、あの雲の上には、天使族や竜人族、ドラゴンがいる国があるんだ」

 なるほど。本当なら産まれてくるはずだった場所の一つか。

「最近は、交通が発達して交流が盛んだから行こうと思えばいけるよ」

 この身体に慣れたら行きたいな。今のままだと嫉妬してその国でなにをしでかすか分からんからな。うん。


「さあ、早く水を運んで森に行こうよ」

そうだった。雲の上の国に行く前に森に行くんだった。

 湖の近くに行き私はバケツ一杯に水を入れた。よし。これぐらいでいいかな。片手で持ち上げようと水面から出した瞬間に、腕が引っ張られた。

「うぎゃ!!だ、誰だ!!!!」

 しかし、そこには誰もいなかった。

「おかしいな?今、たしかに、引っ張られたのに」

 今度は、両手で持ち上げると引っ張られることは、なかったが水面から出したときに重みがいっきに両腕にかかった。なるほど。誰かに引っ張られてるではなく、ただ単に私の腕がこの重みに耐えれなかったのか。我ながらなんとひ弱な。

「鍛えたら片手でも、持てるようになるかな……」


 なんとか二頭身のちんちくりんの身体で森の入口までバケツを運んだ。

「まずい……まずいぞ。まだそんなに運んでいないのに腕がちぎれそうだ」

 私の腕は、既に悲鳴をあげ呼吸がかなり苦しくなっていた。息を吸ったり吐いたりするたびに、喉の奥の方でヒューヒューと鳴る。情けなくて泣きそうになる。

「そういや、プリンは、どこいったんだ?私より大きなバケツを二つも持っていたが」

 辺りを見渡しても、プリンはどこにもいない。おかしいな、さっきまで隣で水を汲んでいたはずなのに。

「おーい、プリーン!!どこー?」

 返事はない。一人で帰ったのか?まあ、一本道だし迷うことはないが、なんか嫌だ。

 私は、気合を入れバケツを持ち上げた。そのとき。

「あ、やっぱり苦戦してるね。プランクトン。かして、持ってあげるから」

 なぜか、私より低いはずのプリンの声が上から降ってきた。反射的に上を向くとプリンが私を見下ろしていた。

「…………ん?……うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!???」

 よく見ると顔はプリンで首から筋肉ムキムキの体が生えていた。

 想像してくれ。君が思う世界で一番可愛い顔を浮かべてくれ。小動物でもなんでもいい。そこから、筋肉ムキムキの体が生えている。しかも男の体で、ご丁寧に黒パンツ一丁。

 これで叫ぶなという方が無理がある。

「あ、あぁ、ごめんごめん。この姿は、見たことがなかったね」

プリンが、申し訳なさそうに謝る。

「な、なんなんの!?その姿!?」

「えっとね……僕達兄弟はどういうわけか力を、というか何か集中すると?こう、ムキムキって、この体が生えてくるの」

説明の仕方から、どうやら本人にも分からないようだ。

「世界はいつも不思議で満ち溢れているから、そういうことにはツッコまない方がいいと思うよ。プランクトン」

 いや、ツッコむよ。百人いたらシ百人ともツッコむよ。

「僕の体の事はほっといてとりあえず家に帰ろう。でないと森に行けないからね」

 いや、君の体のことをほうっておけないけどな。などとツッコミをいれたらいつまでも森に行けそうにないので黙る。

 プリンは私のバケツを片手で持ち、私を肩車した。私も体を鍛えたらこんな風とまではいかないが、バケツを片手で持ち上げれるようになるのかな。


 プリンは、私の歩くスピードよりもはるかに早くあっという間に私の家が、見えてきた。

 真っ赤の屋根に、少し濃いめの茶色の壁、見た目は大きなキノコのようだ。家の後ろには他の木々よりもはるかに巨大な木がそびえ立っていた。

「プリン、あの家はお前たちが街から持ってきたのか?」

「まっさか〜。あれは元々あそこに入っていたキノコを改造したんだよ。僕たち五人兄弟とプランクトンとね。その様子じゃ覚えてないみたいだね」

「随分と大きなキノコだね……」

「食用とかじゃなくて妖精たちが住むためのキノコだからね。おとぎ話だと、元々普通の大きさだったキノコに魔法をかけてあんな風に巨大にしたらしいよ」

 魔法……か。そういえば、この世界には魔法が存在するのだろうか。魔法があれば今日のように水汲みに行かなくても済むのにな。


 プリンがバケツの水を水瓶に入れてくれた。結局、私はほとんど何もしないまま水汲みを終えた。……プリン一人で行けばよかったのに。チラッとプリンを見る。

 筋肉ムキムキの状態のままでは家に入れないため、プリンは来た時の姿に戻っていた。うん、やはりこっちの方が断然可愛い。できれば、もうあの姿は見たくない。


「あ!プランクトン、帰ってきてたの?おかえりなさい」

 ガチャと音がして、外から杏が帰ってきた。あれ?行く前とどこが違うような気がする。

「おかえり、姉さん。この今帰ってきたところなんだよ。それ、新しい髪飾り?可愛いね」

 プリンが反応してくれたおかげで、違和感の正体がわかった。来た時は丸い球体のものが一つ頭に突き刺さっていただけだったが、今は可愛らしい花が頭につけてある。

「そう?ありがとう。これ、ゼリー兄さんが持ってきてくれたんだけど……私的にはコーヒー兄さんが持ってきたこのハルタマのほがいいんだけど」

 杏は、そう言いながら白くて丸いものに、細い棒がくっついている髪飾りをどこからか出てきた。

「わあ、すごい!ハルタマの白なんて珍しいじゃん!!しかも二個も!珍しさで言うと、コーヒー兄さんの方が上だね」

プリンの声が弾んでいる。つまりそのハルタマの白というのはとても珍しいものなのだろう。

「でしょでしょ!!それにハルタマなら花よりも長持ちするから、やっぱりこっちにしようかな」

「だったら、付けてみたら?私が付けてあげるよ」

私もちょっとは、役に立ちたいので提案する。

「ほんとに?じゃあ、お言葉に甘えて付けてくれない?こう、頭にぶっ刺す感じでいいから」

 私は付けてあった花を取り言われた通りに、頭にぶっ刺した。

 刺した瞬間、ぷるんっと跳ね返るような感触があった。

「ねえ、どんな感じ?」

「いいと思うよ。杏。上に鏡があるから見てくれば?」

「そうさせてもらうわ」

「じゃあ、僕達は森に出掛けてくるから。兄さん達に会ったら伝えておいて」

「OK、いってらっしゃーい」

杏は、鼻歌交じりにハシゴを登っていった。

 やっと、森の探索に出かけられる!!!!

次はやっと森に出かけます。投稿ペースは1週間に1回を目標にしようと思います。

さて、現実に目を向けようか…。

しばらくあげれないかも…です。

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