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変わった部下

 しばらくすると、扉が開き、暖かい春の風と共に部下の五人(?)が入ってきた。最初にピンク、次に白、三番目に黄色と茶色の混ざったもの、四番目に白、最後に黒の部下が入ってきた。

 随分(ずいぶん)と変わったものたちだな……。

 私の第一印象は、それだった。記憶の中にも姿はあったが、実際に目にすると驚きを隠せなかった。今までたくさんの生き物を見てきたが、こんなにも変わった生き物を見るのは初めてだ。少なくとも今の記憶の中では。


 部下の五人は全員同じような姿をしていた。私の身長の半分ぐらいの大きさ。触ってみたら、プルンと跳ね返しそうな光沢を帯びた身体。

 ピンク色で目が細く、口が逆三角形に開けているのがゼリー、白色で顔のパーツがゼリーによく似ているのがヨーグルト。上の方が茶色で、下の方が黄色で、目と口がそれぞれ細いのがプリン。ヨーグルトと同じく白く独特の目をしており、頭に球身体の物身体が突き刺さっているのが杏仁豆腐。杏仁豆腐と同じ目をして黒色なのがコーヒーゼリー。

 うん。見た目は全て記憶通りだ。

 ちなみにこの五人の部下、全員兄弟らしい。長男ゼリーと次男コーヒーゼリーは双子で、その下に同じく双子の長女ヨーグルトと次女杏仁豆腐。末っ子がプリンだ。


「珍しいねー、プランクトンが一人で起きるなんて」

三番目に入ってきたプリンがそう言った。茶色と黄色い身体をプルプル揺らしながら歩いてくる。記憶上では私はいつもプリンに起こされている。一人で起きたことなどただの一度もない。

「あら、ほんと、明日雪でも降るんじゃない?せっかくあったかくなってきたのに、困るわぁ」

冗談っぽく、杏仁豆腐が白い身体をゆらしながら口を開く。

 そんなことで天気が変わって、たまるものか。気分を変えるつもりで、話しかけてみる。

「おはよう、みんな。今日はとてもいい天気だね。なんだか外に出たくなっちゃうよ」

 その瞬間、なぜか空気が固まった。……何かおかしいことでも言ったかな?

「ね、姉さん……。訂正するわ、雪じゃなくて明日は絶対に槍が降るわ」

プルプル……じゃなくてがたがた白い身体を震えながら杏仁豆腐がヨーグルトの方をゆっくりと見ながら言う。

「そ、そうね。あの一歩も外から出たくないと言い張るプランクトンが、自ら外に出たいなどと言うんですもの。天変地異が起きても不思議じゃないわ」

ヨーグルトが深く頷きながら、そう言った。

 ……外に出たいと言ってみただけで、こんな反応されるなんて、一身体全身体、今までどういう生活をしてきたんだ?

「おいおい、お前達そんなこと言ってはプランクトンが可哀想だ。ところで明日のために鎧を備えておきたいんだが、全員分あったかな?」

黒い身体のコーヒーゼリーが、引きつった笑顔で私をフォローする。フォローにはなっていないが。

「そういう貴様が一番酷いこと言ってると思うが?やはり、貴様はダメだな、コーヒーゼリー。双子である俺が悲しくなるぜ」

 兄弟達が顔色を真っ青にしながら話している中、顔色一つ変えずにゼリーがバカにしたように言う。声を聞いて分かったが、他の兄弟の中で一番声が高い。違和感がすごい。

「えっと……そんなことで天気が変わったりしないと思う……よ……?それに、見たことないけど槍ってそんなに恐ろしいものなの?」

 ここは、とりあえず私がなんとかした方がいいと判断し声を発してみる。

 すると、プリンが何かをひらめいた顔をした。私の足元に近づき私を見上げる。

「ねえ、君って本当に僕らが知ってるプランクトン?」

 プリンが細い目で私をじっと見つめる。心の奥底を覗き見るように、じっくり見ながら聞かれた。

 ……感づかれたか。確かに今の私はこいつらが知っている以前の私ではない。前世の記憶が蘇った今、中身はほとんど別人だ。

 だが、やましいことが一つもないこの私は、たとえ今の状況がこいつらにバレても、特に支障はない。むしろ、早いうちにバレてくれて嬉しいぐらいだ。話すきっかけが出来るからな。

「そうだよ。今の私は昨日までの私とは違う」

 とりあえず、今朝から今までの流れを話した。もちろん、嘘偽りなく。


「つまり、お前は身体を創ろうとしては、失敗し、転生すれば何度も何度も失敗したへなちょこというわけだ」

 コーヒーゼリーが、鼻で笑いながらバカにする。

 うぐっ!本当のことだけあって腹立つ!まるで、顔の思い出せない友達のようだ。

「これから、どうするの?今の状態に満足てしないような言い方だったけど」

 プリンがどこか悲しそうに問いかける。

「どうって、ここで暮らそうと思っているけど?ここで暮らしていたんだから、特に問題はないと思っているよ」

「もし、満足してないなら俺が今すぐ転生さしてやるが?」

 相変わらず顔色一つ変えないゼリーが、こちらを見て笑っている。いや、元々の表情が笑っているように見えるだけだからそう見えるだけなのか?……ものすごく怖い。ん?いや、それより。

「て、転生ってそんな簡単にできるもんじゃないんだよ!?次、転生して、また花とかになったら困るんだよ!!それに転生は一回死なないとダメなんだぞ!」

「だから、俺がちょちょいのちょいとあっちの世界に送ってやるよ」

「ふぁっ!?ぶ、部下だろ!?そんなこと普通、部下がするのか!!」

「そうだよ、ゼリー少し落ち着いて」

 ヨーグルトがゼリーをなだめる。

「でもぉ〜、良かったじゃない?これまでプランクトンが、私たち以外にまっっったく関わりがなくて」

 杏仁豆腐が、安心したようにいう。全くという部分が強調されていた気がしたが気のせいだろうか?

「……そんなに、外に出たことがないのか?」

「そうよ。この森から一歩もでたことがないのよ。それどころか、この森には、貴女(あなた)以外住んでいないのよ。食料となる動物とかは、住んでるけどね」

 ヨーグルトが、優しく教えてくれる。

「だから、森でとれないものは、俺らが街に行って手に入れていたんだぜ。目覚まし時計に、水瓶(みずがめ)、それに鏡だって俺らが街から持ってきてやったんだぜ」

 森以外の記憶が無いなとは、思っていたがまさかここまでとは。

「でも、どうしてそこまで私に使えてくれているの?」

「あー、趣味?暇なんだよね。他に時間が潰せるぐらい楽しいことがないから」

 杏仁豆腐が、はにかみながらこたえる。

「そう、なのか。とりあえず、これからもよろしくな!ゼリー、ヨーグルト、プリン、杏仁豆腐、コーヒーゼリー!」

「あ、私のことは、ヨーちゃんでいいわよ」

「俺は、コーヒーでいい」

「私は、杏でいいわよ♪」

「あ、兄さんと僕は元々短いからそのままでいいよ」


 こうして、私の初めて成功した転生生活が始まった。これは、単なる感だが、楽しい人生になりそうだ。


「それじゃあ、天気もいいからさっそく森に行こう!!」



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