開かれた災厄の箱
「アヴァランチに通達。パンドラが東北に上陸。直ちに殲滅してください」
「了解した」
すぐさま向かう。今のところは海岸に設置したターレットで進行速度を抑えてはいるが、時間の問題だろう。パーソナリティを起動し、最高速度で飛翔する。
その頃。
「ヴァイアラン、ディーヴァに通達。あなたたちの行動範囲内にパンドラを確認。直ちに行動を開始してください」
「「了解」」
二人の元にも指令が下され、慌ただしく事態は動く。
「せいっ!」
ロングソードを振るい、まずは主武装をはぎ取る。続けて背後のパンドラを強襲。機動性を削ぐ。
――イイイイィィィィンッッ――
パンドラから奇妙な音が鳴ると同時。機体の形が崩壊する。
「――ッ!? な、何が……?」
疑問がすぐさま生まれるが、それには構っていられない。樹里亜もあいつらの援護で忙しいのか、通信は入らない。マップを随時確認し、ターレットに反応があるところに向かう。
「はあああッ!」
ロングソードを投擲し、一体のスラスターを砕く。だが、数機が道路を飛び越える。
「くそっ!」
スラスターを吹かすが。
「くっ――!?」
いつの間にか射出されたワイヤーに足を取られる。
道路わきの木々をなぎ倒し、とうとう人家へと――!
「瑞樹、大丈夫!? パーソナリティ、展開!」
マスターのパーソナリティでそれらが崩壊する。――崩壊?
疑問は無視するしかない。残ったパンドラをワイヤーで縛り上げ、主武装とスラスターを完全に破壊する。とりあえずそれらを放置し、別のポイントへ向かう。
その頃――
「ちいっ!?」
固い。固すぎる。これほどまでの装甲はおかしい。ここまで俺の弾丸が通らないとは。
「やってくれるじゃねえか、オリジン!」
なんとかスラスターは破壊できるものの、すぐに再形成され、足止めにもならない。破壊しようとしても弾丸は一切通らない。
「しゃーがねえ、パーソナリティ、……っぁああああっ!?」
いきなり迸る激痛が俺の体を嬲る。これは、一体――!? 徐々に意識が削り取られる。くそ、やらせるかーッ!
「うおおおおっ!」
無理やり意識を引き起こし、目に映ったのは。
「……マスター?」
いや違う。見た目は瓜二つだが、雰囲気が違う。この感じは何といえばいいのか。あのエリズベルよりも濃い闇。そうとしか言えない。
その口が動く。
「パーソナリティ、オープン」
その声はもう、俺には届いていなかった――






