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冠詞とは何か3:ポリネシア言語の冠詞

 さて、冠詞というのはヨーロッパの言語にだけあるというものでもない。前回・前々回紹介した言語の中にも印欧語族ではないアラビア語やハンガリー語などがあったが、今回はハワイ語の冠詞について紹介したい。といっても、ポリネシア言語の「冠詞」というのは定冠詞や不定冠詞というのとは少し趣が違う。


 まず、ハワイ語においては全ての名詞に冠詞がつく。ハワイ語の冠詞は英語でいう定冠詞・不定冠詞と言った区別はなく、単にその単語が名詞であることを示しているような感じである。


ka hale 「家」

ke kanaka 「人間」


 haleとkanakaの前についているkaやkeが冠詞で、大体ほとんどの普通名詞の前についている。(この二つの区別は単にその名詞の語頭に立つ子音や母音が何であるかによるものであり、文法上の性などとは関係ない)そして人間に関連する名詞の場合は(全てではないが)複数形になるとkānakaになって最初の部分の母音が伸びる。冠詞はnāに変わり、nā kānakaでthe menとかsome menというような意味合いになる。

 そして、これらの冠詞は「AはBである」という文を作る際にはBの名詞につく冠詞がheに置き換えられる。


He haumana ke keiki.(その子供は学生だ)

haumana 学生

keiki 子供


 ハワイ語では英語でいうbe動詞がなく、二つの名詞を並べるとそれだけでAはBであるという文を作ることができる。VSO言語であるハワイ語は語順が日本語や英語とは逆になり、He B ke/ka A.と言うとA is Bという文が作れる。

 しかしハワイ語の冠詞はこれだけではない。実はke, kaに加えてʻoという「人間を表す固有名詞につく冠詞」なるものがあり、人の名前やia(彼、彼女)のような人称代名詞にもこのʻoがつく。


ʻO Kimo ʻo ia. 彼はキモである。

※「キモ」というのはハワイではよくある人名。


 この場合はʻoはheには変わらない。こうして見ると、heは述語部分にみ使われる不定冠詞のようである。実際、英語で書かれたハワイ語の文法書では便宜的にke, kaがdefinite article(定冠詞)、heがindefinite article(不定冠詞)であるといった説明がなされている。

 こうした普通名詞・固有名詞による冠詞や前置詞の使い分けはポリネシアの言語に広く見られ、マオリ語やタガログ語にもある。ハワイ語やマオリ語の場合は冠詞的性格が強いが、タガログ語ではどちらかというと前置詞・格助詞的な性格が強くもはや冠詞とは呼べないかもしれない。

 タガログ語の場合、ang, ng, saという三つのマーカー(日本語でいう格助詞)があり、これらは人間を表す固有名詞につくときはsi, ni, kayという形になるのに加えて、それぞれに複数形があるので全部で12個に変化する。ang/siは日本語でいう「は」ないし「が」、ng/niは「の」、sa/kayは「に」に当たる。

 

 Estudyante ang bata. (その)子供は学生だ。

 Estudyante si John. ジョンは学生だ。


estudyante 学生

bata 子供


 Pinya ang mga ito. これらはパイナップルだ。

 Maganda sina Maria. マリアたちは美しい。


ito これ

pinya パイナップル

maganda 美しい


 まあ要するに、日本語なら「は」だけで済むところが、タガログ語は名詞が普通名詞か人間を表す固有名詞か、名詞が複数かによって同じ助詞でも違う形に変化させないといけないということである。日本語の助詞と違うところは、省くことができないといったところか。

 私の推測だが、こうした言語にはbe動詞がないのでおそらくこういう形に文法が発達したのであろう。

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