このくそったれな世界に復讐を!
俺の身体の中に、魔力が蠢いているのが分かる。だが、なにか違和感が……。
「魔王様、夜中ずっと魔王城でのた打ち回られるのはちょっと……」
「確かにそうね」
嫌な予感がした。
もう最近嫌な予感しかしないから、第六感が発達したのではないかと自分でも疑う程だ。
進化ってすごい。
「魔力をその身に宿すためには、体に魔力を浸透させる必要があるんだけど、体にも免疫とかあるから、時間がかかるし凄く苦しいのよね。まあ、頑張って」
ここまで心の籠っていない『頑張って』は久しぶりだ。
クソ暑い夏休みに、強制的に他の部活の応援に行かされた俺の『頑張って』といい勝負だ。
まあ、美少女なだけマシか。
しかしそうも言っていられなくなる。
ヤバさを例えるならば、満員電車で催したくらいヤバいレベル。
「お、お前ら。騙したな……?」
流石は悪魔、俺の悲痛の叫びを聞いたところで、顔色一つ変えることはない。
「魔王様は騙してなどいない。言っていなかっただけだ」
そんな、ワンクリック詐欺みたいな文句を聞きたいんじゃない。
「ああああああああああああ!」
遂に、声が抑えられなくなった。
まるで、魔力をウイルスか何かと勘違いしているのか、インフルエンザなんて目ではない程の熱が体を覆う。
畜生、なんで免疫はこんなに働き者なんだ。
コルトみたいに休んでいればいいのに。
熱い、痛い、苦しい。あらゆる拷問を結集したかのようなつらさが俺の身を襲う。
死が、生易しく思える程に。
「ちくしょおおおおおおおおおおおお!」
悲壮感漂う、いたいけな青年である俺を見てベレッタは何を思ったのか。
「やっぱうるさいわね」
俺を洞穴から蹴り飛ばした。
いや確かにいたいけではなかったかもしれないけど。
でもなんかこう……あるだろ! やり方が!
「脱水症状起こすかもしれないし、雨が降っていて良かったわね」
地獄に落ちろ。
何が脱水症状だ、献身的な介護のオプションは付いていないのか。
「お前ら、絶対に呪ってやるからな! ここで死んだら、転生してお前らに仕返しするからな! もしすでに死んでたら、地獄まで追いかけてやるからな!」
紛うこと無き本心だ。しかし、その声すら誰にも届かない。
「そう、それは将来が楽しみね。じゃあ私はもう眠いから寝るわ」
「今日は酒の肴には困らんな。ぜひその音色を、私が寝るまで奏でてくれたまえ」
「わたくし、呪術に興味がありますの。それが終わったら、わたくしにご教授願えませんこと?」
………………。
「くそったれがああああああああ!」
盗んだバイクで走り出すやつや、学校の窓ガラスを割って回ったやつの気持ちが少しだけ分かった。
冤罪という理不尽に復讐する力を得るためには、こんな仕打ちを受けなければいけないのか。
もし、そうならば。
こんな世界。
こんなクソみたいな世界。
絶対にぶっ壊してやる。
俺が首にかけていたロザリオを地面に叩きつけると、呼応するように雷鳴が轟いた。
思い切り踏み躙ると、雷が落ちてきた。
天に召します我が神よ、ぜひあなたに会い見えたい。
さすれば必ず、中指を突き立ててやる。
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