表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/60

最後の戦い 人間界へ

 ギルガメシュが呼んだのは、この世界のウィズだった。

 確かに、戦力としては申し分ない。

 俺はウィズに事情を説明すると、快諾してくれた。


「私がいない間に、面倒なことになったのね」

「ええ、色々と……」


 ウィズとギルガメシュが何の知り合いだったのかは分からないが、仲が悪いわけでもなさそうだ。


「決行は明日だ。それまでに、傷をちゃんと癒しておきなよ」


 そう言うと、ギルガメシュは屋敷の中に戻っていった。


「エーベルハルト、か」


 ウィズは、その名前を口に出す。


「しかし、催眠とか洗脳を出来る能力って、そう都合よく子孫に残せるものなんですか?」

「……違うよ、ルーク君。エーベルハルトは、家系ではなく一人の人間を指すの。私と同様に、600余年の人生を過ごした存在。連邦国初代皇帝にして現在まで即位し続けている、化け物。不老が生まれ持った能力なのか否かは知らないけれど、ただの催眠術師と思っていたら痛い目に遭うわ。それに、誰もあなた達を助けには向かえない、足手まといになるからね」

「そう、ですね」



 崩壊しかけた街は、たった一日で復興に向けて歩み続ける。

 死者が出なかったのも大きな要因だろう。

 天使を相手に、良く戦ったのだと思う。


「もっと褒めて下さい、お姉さまぁ」

「あーはいはい、ありがとうね」


 天使を相手取らなかったとはいえ、魔王軍を率いて最前線で戦ったマリーも、いつも通りベレッタに甘えている。


「じゃあ、前哨戦として、酒でも飲むことにするか!」


 もはや魔人ですらない、サイは景気づけにとどこから持って来たのか酒をふるまっている。

 昨日までの暗く、重かった雰囲気は、払拭されつつあった。


 人間も、元天使も、神も、魔人も、そして、異世界からやって来た人も。

 楽しく酒が飲める。

 これが、どれほど尊くて、代えがたいものであるか。

 俺がこれまで戦ってきたのは、これを守るためだったんだと、今なら言える。


「人というのはこういうのが素晴らしいな。まあ、戦いが終わった後の酒の方が美味いが」


 ギルガメシュは遠い昔を懐かしむように盃に口を付ける。


「戦いが終わった後、か。そいつは楽しみだな」


 酒が美味く感じる。これよりも美味い酒が飲めるなら。

 人間界にいた時、明日への労働力もそうだった。

 単純なことは何も変わらない。

 


 結局、昼から催された宴は夜まで続いた。


 明日には重要な戦いが待っていると言うのに、二日酔いにならないかが心配だ。

 酔い冷ましに外に出ると、一緒にベレッタが付いてきた。


「大分飲んでるのか? 顔が赤いぞ」

「そんなに飲んでないわよ。あなたこそ顔が赤いわ」

「だからこうやって風に当たりに来たんだよ」


 月は丸く、闇夜を照らし続けている。

 ベレッタとの間に長い沈黙が流れたが、気まずくはならなかった。

 時間で言えばそこまで長い付き合いではないのだが、それでもだいぶ長い時を共にした気もする。


「ねえルーク。この戦いが終わったら、私……」

「ああ、そりゃ駄目だ、死亡フラグだ」

「は? 死亡フラグ?」

「よくあるんだよ。この戦いが終わったら結婚するんだ、とか、真っ当な人間になる、とか言うとな、大体次の話で死んじゃうんだよ」


 出鼻をくじかれたようで、ベレッタは釈然としない顔で睨み付けてくる。


「何よ、まるで私が真っ当な生き方をしていないみたいじゃない」

「あながち間違いじゃないと思うが」


 そう言うと。ベレッタは嫌そうな顔をしながらも近づいてきた。

 横に並んで、小さな声で呟く。


「ねえ、もし元いた世界に帰れるってなったら、ルークは帰ったりするの?」

「そうだな、向こうでは死んだ扱いになってるだろうし、面倒なことになりそうだけど……。親の顔はもう一度見たいとは思うな。それに、魔力があれば生活には困らなさそうだしなー」

「別に、こっちの世界だって困らないでしょ。魔王軍の幹部なんだから」

「なんだ、引き留めてくれるのか」

「ち、違うわよ! ただ、いなくなると、寂しいけど……」

「それは、ありがたいお言葉だな」

「と、とにかく! 明日が重要なんだから、早く寝なさいよね!」

「はいはい。ベレッタも、もう酒は飲むなよ」

「分かってるわよ!」


 捨て台詞を言い残す様に、ベレッタは屋敷の中へ戻っていく。

 なんだか面倒なことになりそうなので、俺はもう少しの間、外に居ることにした。


 ……元の世界。

 行き来できるなら、戻りたいと言う気もする。

 天使でできたのだから、神だって俺を異世界に連れて行くことくらいは出来るだろう。

 だがもし、もしどちらかの世界しか選べないと言うのなら、俺はどちらの世界を選ぶだろうか。


 俺はそんなことを少し考えながら、眠りに就いた。




 翌朝、敵地に乗り込むメンバーが終集結する。

 俺、ベレッタ、コルト、カトラス、ルシフェル、ギルガメシュ、そしてウィズ。


 傷も癒え切ってはいないが、早くしなければ逆にこちら側へ乗り込まれてしまう。街が復興に向かっているのに、それは避けなければならない。


「しかし、向こうはテレポート技術を持っている。私や母上ならともかく、普通の飛行では入れ違いになってしまっては元も子もない」

「それなら問題ないさ。俺の能力は重力を操る類のものでね。本気になれば小型のブラックホール位は造れるわけだが……」


 カトラスの問いに、ギルガメシュは淡々と答える。

 ブラックホールという言葉はみんな知らないようだが、ギルガメシュのいう事が本当であれば、星の一つや二つは簡単に消滅させられるという事だ。


「ま、それを応用すれば、たかだか数百kmくらい、ものの30分程度だ」


 音速とまではいかずとも、ただの飛行に比べれば格段に早い。


「じゃあ、いこうか」


 ギルガメシュはパチンと指を鳴らすと、特に魔力を用いていないのに全員の身体が宙に浮いた。

 そして、何かに引っ張られているように、段々と加速していく。

 亜音速にまで達すると、加速はなくなり息が多少なりとも楽になった。


「じゃあ、作戦は昨日話した通りだ。俺が能力で敵と君たちを分散させるから各個撃破。簡単だろう?」


 ギルガメシュはさらりと言ったが、言うほど簡単なことではない。

 だが、やらなければ死ぬだけだ。


 ギルガメシュが言うには、ウィズなら神と互角に戦え、コルト・カトラス・ルシフェルは少し分が悪いという事だった。

 その分、ギルガメシュは勝てる見込みが大きく、それまでいかに時間を稼げるかが鍵となる。


 そして俺たちは……。

 ベレッタの方を見ると、表情は落ち着いていた。闘志が静かに、しかし強く秘められている。

 正直、皇帝エーベルハルトの力は未知数である。神を取り込んだのだから厄介であることに間違いはないが、相性がどう働くのか。


 そうこうしているうちに、魔界を抜け、人間界へ入って行く。

 そして。


「……あれがアマネの言っていた、皇帝エーベルハルトの住まう城か」

「確かに、3神の気配も感じるな。あと、妙な気配がもう一つ。……じゃあそろそろ別れるか」


 ギルガメシュがそう言うと同時に、4方に別れた。そして、城にも亀裂が入り、ギルガメシュの能力によって3神を引きずり出す。


「じゃあ頼むよ、お二人さん」


 城に残っているのは、雑兵と皇帝エーベルハルトのみ。確かに感じる妙な気配を頼りに、俺とベレッタは城の亀裂から入って行った。


次回は9/13あたりに更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ