表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/60

金色の勇者

「誰だ?」


 対面してみると、俺でも分かった。この女の子から何やら強い力を感じる。

 歳は俺やベレッタと同じくらいだろう。凛とした雰囲気はベレッタも同様だが、どこか堅苦しい印象を受ける。


「私は勇者の大任を負った者。今回は偵察が主たる任務だけど、いずれは魔王を討ち滅ぼす」


 勇者とは、俺が前見たのとは違う人だ。だが、まあ、勇者とは何人かいた気がするが。

 しかし勇者の名を聞いたベレッタは、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。

 それを払拭するように、勇者と名乗った女の子は剣を一振りする。金髪の長い髪がふわりとなびいた。


「人型の魔物がいるとは聞いていたが、ここまで人間に似ているとは」

「どうしたのかしら? 同士討ちは出来ないってこと?」


 ベレッタは何やら皮肉めいた口調で言うと、バカにしたようにくすくすと笑いだした。

 しかし、勇者はそんなことを気にも留めなかった。


「外見は関係ない。先ほど人間を攻撃しているのが見えた。テレポートは上手くいったみたいだけど、間に合わなかった私に腹がたつ」


 そう言って剣を構える。


「俺は別に、お前に恨みはないんだけどな」

「私にはある。人間に危害を与える全ての魔の物が、私の敵」


 言葉が終わると同時に、勇者は俺の間合いまで踏み込んできた。咄嗟に、刀と魔力で応戦する。


 剣が接触した瞬間、電流が迸る轟音が響いた。

 

 しかし先ほどの憲兵団と違い、勇者は倒れない。

 それどころか、俺の手に痺れが生じるほどだった。

 俺も驚きが隠せなかったが、勇者も同様で、信じられないものを見るように、こちらを睨みつけてくる。


「ルーク、相性が悪いみたいね。代わるわ」


 ベレッタからも、今までにないほどの強い魔力を感じる。


「いや、しかし……」


 だが、逆に考えれば、相手の魔法も俺には効かないということだ。それならば、純粋に剣の腕前で勝負が決まる。


「電気の能力は互角でも、剣では負けるわよ。魔法とかいう小癪な力のせいでね。それに、あなたさっき言ったわよね、今度は私が言うわ。手出し無用よ。私は、勇者を名乗る人間がこの世で二番目に嫌いなの」

「……私は二対一でも構わない」


 まさに一触即発、という時だった。


「ルーク!」


 勇者の後方から、聞き覚えのある声が響く。

 それは、俺が異世界に来て初めて聞いた声であり、数少ない親友だったサイの声だ。


 ベレッタと勇者の注意もそちらへ向く。


「ど、どうしてお前が……」

「いやー、ルークが心配だったからに決まってるだろ?」


 はっきりいって、心配したという態度は一切見えない。だが、それがサイのいいところでもある。冗談のように言うことで、他人に何かを気負わせることを避けている。


「しっかし、白髪になるまで苦労したんだな。なんか、お疲れ」

「これは白髪じゃねえ、銀髪だ」


 コルトと同じ冗談を言うな。……冗談だよな?


「それに、魔物になってるなんてな。どうなってんだ?」

「まあ、色々とあったんだよ」


 俺はそう言って笑いながらサイの肩をポンポンと叩いた。

 サイや、サイの両親には異世界に来てから本当にお世話になった。これ以上心配をかけるわけにはいかない。


「ルーク、とは。サイの言っていた、友人の」


 勇者は目を丸くして俺とサイを交互に見つめる。


「そーそー。だから取り敢えず、戦いは終わりにしてさ」


 サイが場の雰囲気を和ませた、と思ったが、それに流されないのがベレッタだった。


「私は終わらせる気はないわよ」


 もはや、邪魔されたと感じているのか、サイすらも標的になっている。サイは初対面の人と打ち解けるのが得意だが、さすがに人間と魔人では溝が深すぎたか。


「ベレッタ落ち着けって。とにかく、積もる話もあるしさ。近くに洞窟があるんだけど、酒もあるし一杯飲んでこうぜ」

「ルーク、仮住まいとはいえ人間を、よもや勇者をあげるなんて……」


 俺は、ベレッタが人間や勇者にどういう理由で恨みを持っているか聞いたことはない。だが、思ったより根深いのかもしれない。

 俺はベレッタの肩に腕を回し、サイや勇者に背を向けた。


「サイはともかく、確かに勇者については俺も判断をしかねない。だから酒を飲ませて、本音を聞き出したところでどうするか決めればいいだろ。それにあの二人は、俺たちに取っても有用な情報を持ってるはずだ」


 サイと勇者に聞かれぬよう、俺はベレッタに出来るだけ顔を近づけ、小声で囁いた。

 すると、ベレッタは俺から目を背け、体をそわそわさせている。


「どうした? 勇者をあげるのはそんなに嫌か?」

「ち、違っ! くは、ないわね。そ、そうよ。でもまあ、ルークがそこまで言うなら、分かったわ」

「よし、そうと決まれば酒を飲むぞ。確か、カトラスが隠し持っていた秘蔵の酒があったはずだ。昼から飲む酒は格別だからな」

「……あなた、カトラスに殺されるわよ」


 そんなん知らん。

 その時は勇者が飲み干したって言えばいい。


 かくして、仮の魔王城にて、魔王候補と勇者が一堂に会した飲み会が開催されることとなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ