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良薬は口に苦し

「んー、竜の肉って少し硬いけど美味しいわね。魔力の補給効率もいいわ」

「しかし竜が現れたのにも驚きですが、それよりも竜を倒したという方が驚きですね」


 いつの間に用意したのか、食卓には俺の席に新品の食器が置かれている。

 そのおかげか、竜の肉は確かに硬いが、味はワニの肉よりも美味しく思えた。

 まるで魚と牛肉を足して2で割ったような味で、酒によく合いそうだ。


「まあ、わたくしとルークが力を合わせれば、これくらい朝飯前ですわ」


 コルトは小さな胸を張りながら、自慢げに言った。


「肋骨折って吐血するのが朝飯前なら、午後くらいには一体どうなるのかしら」


 ベレッタは訝しげな眼でコルトを見つめるが、コルトの表情には雲一つ陰りがない。


「しかし珍しいものだな。貴様のことだ、実際に何があったか知らんが、手柄を全て自分のお蔭だとのたまいそうなものだが」

「わたくし、そんなことはしませんわ」


 同意を求めるコルトの視線に、俺は苦笑いしながら頷いた。


「だけど、ルークは本当に大丈夫なの? 医者に診てもらった方が良いと思うわよ」


 今は、ベレッタが慌てて巻いた包帯に包まれている。

 外見だけで言えば、ただのミイラ男にしか見えない。

 某野球漫画の強制ギプス同様、食事が修行と化してるが、悪い気はしなかった。


「竜の肉のおかげで魔力が回復してるのか、良くなってはいる気がするよ」

「ならいいが、魔力は自然治癒を速めているだけだからな。もし貴様の骨が変な風に折れていたら……」


 カトラスはまるで、怪談でもしているかのように暗い顔をして言った。


「……折れていたら?」

「変な形のまま治癒することとなる。もしそうなったら私に言いたまえ、遠慮なくもう一度骨を折り、力づくで元の位置に戻してやる」

「……医者を呼んでくれ」

「分かった」


 いの一番に食事を終えたカトラスが部屋に戻ったかと思うと、何故か白衣を纏って部屋から出てきた。


「なに、コスプレ? いい年して趣味が悪いよカトラス」

「殺されたいのか貴様。この医師免許を見ろ、貴様みたいな馬鹿と違って私は賢いからな」

「嘘だろ!」


 大体、魔人の医師免許なんて見せられても正式な物か判別できない。

 が、大声を出したせいで胸に激痛が走った俺は、近寄る死神を制止することは出来なかった。


 ブラックジャックを呼んでくれ。金なら紅玉を売り払って用意するから。


「まって。まって! まてよ!」

「どうした。貴様はいくつだ? まるで薬草を食べるのを嫌がる子供の様だぞ」

「それは本当に薬草なの!? 毒草の間違いじゃないよね!?」


 一丁前に手袋をしたカトラスの手が俺の身体に忍び寄る。


「安心して良いわ。カトラスの腕は確かよ」


 ベレッタはそう言うが、俺とベレッタでは取扱いに天と地ほどの差がありそうな気がする。


「やめろ、俺の体と心に消えない傷を残すつもりか!」

「貴様、変な言いがかりをつけると、手元が狂うぞ」


 そんな理不尽な脅しは聞いたことがない。


「じゃあ、私は寝るわね。カトラスとルークもいつまでも遊んでないで、早く寝るのよ」


 遊んで!? いま遊んでって言ったよね確実に! 


「やぶ医者じゃねーか! 助けてコルト!」

「……わたくし、男の人同士というのにも興味がありますわ」

「やっぱりお前は頼りにならないから早く寝ろ!」


 寝顔に思いっきりコーヒーぶちまけてやる。


「さて……」

「ああああああああ!」


 カトラスは俺の体に巻かれていた包帯を剥ぎ取っていく。

 結果、俺の身体はカトラスに良いように弄ばれた。


 特に深い意味はない。

次回2/5(日)更新予定

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