表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/60

魔の力

「貴方も、着替えたら良いのではなくて?」


 着替え終わったコルトが、俺のよれよれの服を見て言った。


「そうだけど、着替えないしな」


 洗いはしたが、同じものを三日も着ていると気が滅入る。


「カトラスのを着ればいいですわ。サイズが合うのは少ないけれど、仕方ありませんわ」


 そう言って取り出したのは。

 上下共に赤の服だった。


「え、ダサっ」


 カトラスのやつ、こんな趣味の悪いのを持っていたのか。

 さすがに同時に着ることはないだろうが、正直引いた。


「そんなことありませんわ。赤は、血と情熱を表す、魔族にとってのシンボルカラーと言っても過言ではありませんの。それに……」


 コルトが近づいてきて、腕を組んだ。


「わたくしの髪や瞳と、おそろいですわ」


 作り笑いだという事は分かっている。

 だけど、ちくしょう。


 俺は振り切るように牛の狩場へ向かっていった。



---------------------------------------------------------



「ど、どうして。歩く、必要があるん、ですの……?」


 拾った木の棒を杖代わりに、コルトはひぃひぃ言いながら付いてくる。


「牛は群れだから、あまり気付かれないようにって、ベレッタが言ってただろ。魔力を使うと存在がばれやすいしな」

「……え?」

「……は?」


 俺の嫌な予感センサが、また発動した。

 的中率は天気予報よりも正確だ。


「いや、何でもないですわ。取りあえず、お昼ご飯にしませんこと?」


 何かを誤魔化したのか、コルトは俺の承諾も得ずに切り株へ座った。

 しかし太陽も真上を過ぎ、俺も腹が減ったので提案を無下にできない。


 ベレッタが作ったという弁当を広げて昼食にする。

 顔に似合わず、可愛らしい弁当を作ってくるじゃないか。

 米の上に、何かの食材で絵柄っぽいのが描かれている。

 米を食べたのなんて、実に一年ぶりだ。


「そう言えば貴方、何か攻撃手段はありますの?」


 絶対に食事の内容と合わないであろうコーヒーを飲みながら、コルトは俺に質問を投げかける。


「え、……ないけど」


 鍛冶屋の時に剣はちょくちょく振っていたが、今そんな武器はない。

 牛とはいえ、やはり魔物だと狩りは大変なのだろうか。

 確かに、体も大きいしな。


「魔力の恩恵は、身体能力の向上や宙に浮く、その他便利機能だけではありませんの。きっと貴方にも必殺技が備わっているはずですわ」

「必殺技?」


 確かに憧れはあるが、そう易々と必殺技を習得できるものだろうか。


「必殺技とは文字通り相手を殺す技。ひいては身を守る術ですわ。魔力を習得した時、死に抗う力は発動しませんでしたの?」

「……うっぷ」


 トラウマのせいで、胃に入ったものが逆流しそうになった。


 だが、死に抗う力って、なんかカッコいいな。

 体が拒否反応を起こしているのか、中々思い出すことができないが、吐き気を抑えながらも懸命に海馬を探る。


 ……理不尽な世界。否応なしに近づいてくる死。泥水に塗れながら何を思ったか。

 込み上げる感情に魔力を乗せて、傍らの木に向かって全てをぶつける。


 直後、耳をつんざくような音が響いた。

 目の前にあった木は焼け焦げ、大人の腕が丁度一周するほどの太さにもかかわらず、後ろへと倒れている。


「……ベレッタと同様、爆発系統ですの?」

「いや」


 違う。

 そうだ、思い出した。

 魔力を得た時のことを。雷が落ちてきた時のことを。


 雷と魔力の波長が一致した、そんな感触が確かにあった。


「これは、電気だ」


 電撃使い。いいじゃないか。

 なんかこう、SFチックで知的な感じがする。


「……ふぅん、アフロヘアーになったのも、無駄ではなかったという事ですわね」

「それは言うな」


 日本人がアフロヘアーになったって、全然知的じゃない。


 まあいい、これで武器ができたわけだ。

 復讐を完遂するための武器が。


「ニヤニヤしてると、気持ち悪いですわよ?」

「うるさいだまれ」


 取り敢えずの目標は、山を越えた先にいるであろう、牛の群れだ。

 新しい力を、存分に試させてもらう。

次回 1/26 更新予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ