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風呂上がりは女の子の可愛さ3割増。コーヒー牛乳の美味しさも3割増。

 正直な話、魔界の植物で食べられるか否かは俺には分からない。

 しかし、ニートを頼りにしたのが間違いだった。


「コーヒー、んまいですわ」


 もう現実逃避である。


 どこに隠し持っていたのか、水筒にコーヒーを入れて持ってきている。


「仕事をしろカフェイン中毒者」

「あら、その植物は見たことがなくもなくなくないですわ。それにわたくしは中毒になったわけではなくてよ」


 ……何重否定すれば気が済むんだ。

 

「ただコーヒーを飲まないと、イライラして手が震えてしまい、しだいに強大な睡魔に襲われてしまうだけですの。ちなみに、働いても同じ症状が出ますわ」

「病院へ行ってこい」


 野草を凝視したところで、食べられるかどうかは分かるはずもない。

 コルトを無視して毟り取ったものを全て籠に入れると、量が多くなったので一度洞穴へと戻ることになった。


 

「わたくし、もう疲れてしまいましたわ。あとはお任せしてもよろしくて?」

「よろしくて、じゃねえわ! 全然よろしくないから! 仕事しなかったらベレッタに言いつけるからな、マジで」


 洞穴に戻った瞬間、ニートは仕事の放棄宣言をした。

 ここにベレッタかカトラスがいれば鉄拳の一つも飛んできたところだろうが、残念ながら今はいない。


 まさか、異世界に渡ってニートの世話をすると誰が思うだろうか。


「まだ宙に浮くのもやっとなのに、牛をここまで運んでこれるわけがないだろう」


 コルトは嫌な気持ちを前面に出しながら、ジト目で俺を見る。


「チッ、ですわ。仕方ありませんわね。けれど、出発する前にお風呂に入ってもよろしくて? わたくし、汗をかいてしまいましたの」


 そう言って、コルトは服をはだけさせる。


「ふ、風呂!? まぁ、べつに、いいけど……」


 風呂はまあ、その、よろしくてよ。

 ただ目線のやり場に困る。

 だけど、そんな誘惑に何か負けたりしないもん。


「そういえば、今はベレッタもカトラスもいませんのね。……ねぇ、少しだけなら、覗いてもよろしいんですのよ?」

「んえっ!?」


 コルトが上目づかいでそんなことを言うものだから、俺は変な声を出してしまった。


 いやしかし待て。

 俺はロリコンじゃない。

 俺はロリコンじゃない。

 俺はロリコンじゃない。


 そう、こいつは自分がニートであることを棚に上げて、俺に対し優位性を保ちたいだけなのだ。


「い、いや別に、俺はそんな無粋なことはしないし? し、紳士だからね」

「ふぅん? まあそこで一人、虚しく悶々としていればいいのではなくて?」


 コルトは勝ち誇った顔で、洞穴の奥にある温泉へと向かっていった。

 ……馬鹿な、顔に出ていたか。


 俺も別に、覗きたいと思わないわけでもないような、そんな気がしなくもなくなくない。

 あれ、いま何重否定したんだ?

 こうやって考え事をしているだけで、コルトの術中に嵌ったみたいで気分が悪い。


 そんな気を知ってか知らでか、コルトは風呂で鼻歌を奏でている。

 


「ふう、良い湯でしたわ」


 やっと出てきたか、とコルトの方を見ると。


 湿った髪に、紅潮した顔、湯気だった体。

 身に纏っているのはタオル一枚で、小さいながらも発展途上の胸の双丘が体のラインで確認できる。


「どうしたんですの?」


 ちくしょう、可愛い。


「わたくし、のぼせてしまったのかしら。眠くなってしまったわ。少し、休んでから行きませんこと?」


 熱い吐息。

 確かに、魅力的に見える。


 だが、俺は知っているのだ。


「コーヒー牛乳でも飲んでろ」

「んぅっ!? がばごぼがぼっ!」


 ハニートラップに引っかかるほど、俺は耄碌していない。


「ご、強引、ですのね……。嫌いでは、なくてよ」


 口からコーヒー牛乳をこぼし、荒い息遣いをするコルトを見て、俺は少しだけ満足する。

 なんとなく、次のミッションにやる気が出てきた。


次回、1/24 夜更新予定

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