初めてのおつかい
「野菜と肉ね。牛が良いわ」
おつかいか何かだろうか、ベレッタからメモを渡された。初めての仕事は、食料の確保だった。なんか、某狩りゲームを思い出す。
一緒に行くはずのコルトは、働きたくないですわ、と目を泳がせながらぶつくさ呟いている。
しかしながら、この辺の土地はさっぱりなのでコルトを頼らざるを得ない。
「と、取り敢えず、野菜からが良いですわね……」
世界の終焉のような顔をしながらも、コルトは冷静を装って計画をたてた。
野菜といっても、食べられる野草を取ってくるだけなので、そちらは簡単らしい。
しかし何故だろう、確実なミッションから手を着けるのは当たり前な事なのに、コルトが言うと問題を後回しにしているとしか思えない。
「そう言えば貴方、空を飛ぶことはできますの?」
「……飛ぶって言われても、俺も翼を生やすことができるのか?」
コルトはコーヒーを飲みながら、悲しげな表情で俺を見た。
「翼があれば楽なのですけれど、そうでなくとも宙に浮くことくらいできますわ」
すると、コルトはまるで宇宙空間であるかのように浮き始めた。
そういえば、人間も魔法で浮いていたのを思い出す。魔力でできないわけもないか。
「体全体で重力を感じるんですの。そしてエクスタシーですわ」
意味が分からない。
コルトの言葉の前半部分だけを頼りに、重力を意識して感じてみる。
体に溜まった魔力を、それに逆らうように発動する。
すると。
「お、浮いた!」
学校でも浮いてた気がするけれど、実際に宙に浮ける日が来ようとは。
……が、すぐにひっくり返って地面に頭を強打した。
せっかく髪を生やしたのに、今度は頭皮からずり向けるところだった。
「仕方ありませんのね」
やれやれ、とでも言いたげにコルトは肩を竦めたが、瞳はオモチャを見ている子供の様だった。
「とにかく、習うよりも慣れろですわ。早くしないと置いてきますわよ?」
ひゅーんと、コルトは洞穴から飛び出していく。
あんなに働くのが嫌だったくせに、自分より下を見ると良い気になるからニートは嫌なんだ。
子供の頃、初めて補助輪を外して自転車に乗った時を思い出しながら、俺は何とかコルトに付いて行く。
そんな俺を見て、コルトは少しだけ、無邪気に笑ったような気がした。
次回、1/22 22時ごろ投稿




