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1.公爵令嬢は加減知らず ~13年分の愛は重たいです~

 拝啓。前の世界にいた、俺を非リア充としてからかってきた友人たち。


 俺は今、女の子に見向きすらされないどころか、俺を求めて走り寄ってきているほどにまで注目されるようになった。それも、君たちの彼女より何倍もスタイルが良くて、顔が綺麗にしてかわいい美少女にだ。


 いやぁ、幸せなことこの上ないね……うん。

 言い換えれば追いかけられているんだけどね。


「ヴェノスのバカー! 大馬鹿野郎ー!」


 山岳一帯を揺らさんばかりの轟音。どこからか聞こえる土砂崩れと鳥の群れが羽ばたいていく音を耳に、その衝撃で俺の身体はふわりと飛んでは何とか着地する。

 ぐぎりと足首から変な音がしたけど、とにかく今は町から離れるように逃げるしかない。そんな心境だった。


「なんだよあいつ! やべぇよあいつ!」


 そんな語彙力皆無な叫びを口から漏らす。


 俺を泣きながら追いかけているのは、一言で表せば赤髪の美少女。服装や顔つきからしてどこかの大富豪の令嬢といったところだが、その活気な表情と声、そしてこの目で見ても分かる程の行動力を前に、とてもあのしゃなりしゃなりとした令嬢のイメージとはかけ離れている。


 その右手には、術式の展開を補佐する1m弱の宝玉付きの魔法杖。いや、杖なのかアレ。さきほどから逃げ続けている俺にはもう、人殺し用のハンマーにしか見えない。


「もうヴェノスなんて知らない! 一回病院行って頭冷やせバカー!」

「おまえが頭冷やせバカ! これ病院じゃ済まねぇから! 霊安室一直線だから!」


 これは男の一人として体験したことなのだが、女の怒り・悲しみは些細なことからはじまり、一線越えると手に負えなくなる。その女性のメンタルが病んでるほど、そのボーダーラインは低い。

 ただ、今回ばかりは俺が悪いのかもしれないけど。


 またもや爆轟に似た地鳴り。天へ舞い上がる土砂。形成される小さなクレーターの爆風で、再び俺の身体は吹き飛んだ。


 どうしてこうなったのか。あのとき俺は何をした。もうパニックでよくわからなくなってきた。


 原因は何なのか、冷静になって一から思い出すしかねぇな。……ああ、走馬灯のように流れてくる。


     *


 何度か町に行っているおかげで、町の人に対して少し抵抗はなくなったが、それでもエリシアさんの家の方が落ち着くし、居心地がいい。


「早寝早起きもいいもんだな」


 何故か独り言をつぶやいてしまったが、今この家には俺しかいない。


 エリシアさんやフェミルの部屋を漁れる絶好の機会だが、人として何か踏み込んではいけない気がし、また友好的に頼みの綱であるこの家との関係を悪くしたらまずいことになる。毎日美少女二人との共同生活から離れた暮らしなんて考えたくもない。


 今の暮らしは幸せすぎるが、その代り性的に生殺しな日々が続き、ある意味苦痛を感じる。しかしそんな苦痛も悪くはないと思う。


 ……エリシアさんに一時間ぐらい土下座して頼み込んだら、してくれるかもしれないな、いろいろ。


「……」


 1グラムのナトリウムを手のひらから創成し、析出した小粒のそれを口に放る。当然、食道あたりで胸焼け以上の熱さとぼろぼろに張り裂けそうな痛みと共に、「おぼろろろ」と血を吐く。


 何考えてんだ俺! 落ち着け俺! 調子に乗るな俺!


 まだこの世界に転生してから10日ぐらいしかたってないぞ! 日が浅い! ここで帝国王女にして大賢者様に性犯罪でもしてしまったら、転生初日よりも全力で町に処刑される!

 いや、相手が同意した上でだったら大丈夫……いやフェミルがいる! 串刺しでは済まされないぞ!


 コンコン、というノックの音にびくりとする。体毛が威嚇したネコみたいに逆立ってしまった。

 髪の毛もアニメみたいにぶわっと……これ寝癖か。『化学変化』と『物理変化』スキルで髪の水素結合を少し緩め、寝癖を直した。親子ならぬ寝癖水入らずとはこのことを言う。何言ってんだ。


 そして、とっさに床に盛大に吐いた鮮血を『物質分解』スキルで跡形もなく隠滅させる。ちょっと鉄臭いけど。


 まさか客か? 俺だけの時に限って……と不満に思ってた数秒前の俺を殴りたい。

 玄関の扉を開いた先には天使がいました。


「あれ、確か道具屋の……」

「はい、リーア・テンクスと申します」


 この間盗賊団に攫われて、俺とフェミルで助けに行ったんだったな。

 ぺこりと頭を下げるリーアだが、おまえも随分と大胆に胸元を強調したように見せるくるよな畜生。なに、そういうファッションなの? 飲み会いくとき化粧して短いスカートとハイヒール履いてくる女子大生と同じ感じなの?


「お、おお、エリシアさんに何か用で」

「いえ、その……」


 もじもじしているようにもみえるが……はぁ、そうだったな。こいつフェミルに惚れてたんだっけ。そっち路線にいっちゃったんだっけか。


「ああ、フェミルか。悪いけど、ふたりとも今いないんだ。なんなら代わりに俺が用件聞いておくけど」

「あのっ、違います。ヘルメスさんに御用があってきました」

「ふーん…………俺に!?」


 おいおい、エイプリルフールは今日じゃないぜ? 今日何月何日かさえ知らないけど。


「は、はい。この間、フェミルさんと一緒に私を助けてくださったのに、お礼すら言えていなかったので……」

「ああー、いいよいいよ。俺はフェミルの手伝いみたいな感じで来てただけだから」

「ですけど、盗賊団をやっつけたのはヘルメスさんだとフェミルさんが言ってましたよ……?」

「え、フェミルが?」


 あいつ……コミュ障のあまり事実とは違うこと言ってんじゃねぇか。全滅させたのはあいつだろ。


「はい、フェミルさんでさえ手強かった敵将も難なく倒したと」


 敵将……? あいつ瞬殺だったよな。ああ、悪い魔族の方か。あれは確かにフェミルは手こずっていたな。俺がボスと黒幕倒したのは事実だな。


「そ、そうか……」


 しかし、あのフェミルが俺のことを話してくれるなんてな。嫌われていると思っていた分、少し意外だ。


「本当に、ありがとうございます。これはほんのお礼ですが……受け取ってくれますか?」


 何かのプレゼント箱をゲットしました。芳しい香りがしてくるし、なにかのお菓子かな。……おおお、やっぱり目に映るものだったら物体でも香りでも構造式や組成式視えるんだな。ただ今は視界の邪魔にすぎないけど。


「おお、ありがとうな。すっげー気に入ったよ」


 動かしにくい表情筋を精一杯ひっぱり、笑顔で言う。ぱぁっ、と咲くリーアさんの笑顔の輝きが百万カラットでわたくし思わず目を逸らしてしまいましたよ。


「本当ですか! ありがとうございます! あの、よかったらいつでも私の店に来てくださいね! あと、夜はおとうさんの酒場でお手伝いもしていますので、よければそこにも来ていただければ歓迎します!」

「おう、わかった」


 こんな崇拝するほどかわいい娘に歓迎されるものなら地の果てでも行ってやるよ。


「あ……あの、それと」

「……ん?」

「い、いえ何でもないです。この件は本当にありがとうございました!」


 なんだか意味深な雰囲気を残して、深くお辞儀してからそそくさと去っていった。ははぁ、やっぱりフェミルが目的だったか? なんか恥ずかしそうに照れてたもんな終始。


 あれ、でもフェミルがいないとわかってても顔赤くしていたのはなんでだろ。前向きに俺のことも気に入ってるってことでいいか。


「いやぁ~、律儀だったなぁ」


 ああいうしっかりした人こそ、幸せになってほしいよなぁ。健気でかわいかったな。

 寝起きだったけど元気貰ったし、元気100倍ということで今なら山ひとつ分の金を一気に創成できる気がする。


「まさかあんなかわいい子からプレゼント貰うなんてな」


 さてさて、これはひとりで頂戴するとするか。おお、表面がパウダー系の砂糖スクロースの構造式で埋まってんなぁ。今は任意で数値や化学式の表示のオンオフできるから別にいいけど、これなんていうお菓子だろ。


 しかし、そんなお楽しみタイムもつかの間、再びノックが聞こえてきた。


「また客か……?」


 ダイニングテーブルに貰い物を置いては、「はーい」とドアを開ける。

 しかし、今度は知らない顔だった。


「……え、と……どなたですか?」


 少し赤が混じったようなブロンズ髪の男性。40代にも見える老けを感じさせるが、貴族に似た服にたくましさありつつ落ち着いた雰囲気があることから執事のようにも見える。整った髭もあり、眼鏡をかけているのもあってか、凛々しさがより一層際立たせている。


「唐突で申し訳ありません。ヴェノス・アルフォーナ・メルクリウス殿、でよろしいでしょうか」


 身構えた。俺のことをメルスト・ヘルメスではなくヴェノスと知っている奴は、俺がこの世界に来る前――この身体がヴェノスとしてがまだ生きていた頃に関わってきた人物、ということになる。


「ええ、そうですけど」

「私、ゴットフリート家に慕える執事のアインツ・フォルマーと申します。あなたの生存を知り、僭越ながらこの町に尋ねてきました」

「え、ええ……?」


 おいおいおいおい、魔族襲来二度目かおい。生存を知ったってどうやって知ったんだよ、なんかの気を感じ取っているんですかあなた方は。どこのバトル漫画ですか。


「あなたの婚約者『ソフィア』様が町でお待ちになっております。案内しますので――」

「は!?」

「……何か、問題でも」


 つい叫んでしまった。知り合いどころか交際相手って……ヴェノス(あいつ)リア充だったのかよ!

 

「い、え……行きましょうか。ちょっとこちらにもいろいろあって記憶が曖昧なところがあるんで、移動の時に説明してくれると助かります……」


 やけに流暢に言葉が出たが、果たして事情や説明を聞いたところで納得するのかが不安だった。


     *


 執事のアインツさんの手短で分かりやすい説明に、そこそこ理解できた方だ。大きく4つにまとめると……。


 ゴットフリート家は亜人族の竜人の貴族であり、魔界に住んでいること。


 婚約者らしいソフィアは公爵令嬢で、ヴェノスとゴットフリート家が関わったときに知り合って、交際を始めたということ。


 だけどヴェノスは未だに求婚を断り続けていたこと。


 俺の生存を知ったのは魔界での情報からだということ。なんでも、ゴットフリート家はかなりの情報通らしい。


 ……以上。


「って、酒場で待ってんのか」

「いえ、二階の宿屋をお借りしております」


 ううん、まぁいいんだけど、ヴェノス関連となると町の人の様子もギスギスしてくるんだよな。

 酒場の二階。店主のバジルも何も言わなかったし、不穏しか感じない。


「ソフィア様はこちらに」


 ノックし、確認を取ってはどうぞとドアを開けるんだけど、こちらの心の準備も考えてほしい。ドアから3m離れているの見て分かりませんか?


 しかし、ヴェノスが死んだのは13年前、その時点でおじいちゃんだったらしいからな。相手も相当なおばあちゃんになってんだろうな。ここできっぱりと断った方がいいよね。後が怖いけど。


「ヴェーノースーっ!!!」


 入室一歩目。先制攻撃の突進を喰らう。後頭部強打と背中の落下衝撃、そして上からのし掛かった体重で肺の中の空気は全部吐き出された。


 けど、そんなことがどうでもよくなるほど、マウントポジションをとった貴婦人は綺麗だった。おばあちゃんにしてはとても……いや、もう老人じゃない。若い女性だ。最近覚えた言葉を使わせてもらうと、まさに花顔柳腰かがんりゅうようだ。異世界の令嬢なだけある。


 ただ、その髪は炎のように赤く、瞳もまた、ルビーのように鮮やかな赤のきらめきを帯びていた。


「ヴェノスなのね! 生きてるんだよね!」


 なんじゃ、この破天荒美少女。床ドンされて身動きできないし、顔がすごく近いし。けど、涙目だ。


「あ、ああ……ふつうに生きてるというか」


 別の人格になって蘇ったというか。そんなことを言える暇は与えてくれなかった。


「13年もどこで何をしていたのよ! 処刑されたと聞いて、私……わたし……っ、ずっと……!」

「……」


 泣いてしまった。そりゃそうだよな、結婚したいほど好きな人が死んだら、俺が想像している以上に悲しいに決まってる。それでも愛人が死んで13年も経った今、こうやって泣いてるあたり彼女の愛の深さが伺える。


 ヴェノスの代弁として俺が務めていいのか、少し後ろめたい。


「さびしかったのよ……っ、ヴェノスがいない日なんて、一日も楽しくなかった……」


 そう、彼女は俺のことをヴェノスとして愛している。俺自身のことじゃない。その事実を知ったら、彼女はどう受け取るのだろうか。

 そのような意味では、再び愛する人の死の事実を押し付けるかもしれない。言うべきことだと思っても、思うように口が動かない。


「お嬢様……お気持ちはわかりますが、ヴェノス殿はこうやって生きておりますし、早くお立ちになられては」


「そ、そうね……ごめんヴェノス、でも嬉しくて……!」


 女性にここまで接されたことがないので、心臓がバクバクだったが、このあとどう説明すればいいかで頭がいっぱいだった。起き上がっては未だ俺の上に座っているソフィアに笑みを見せる。


「まぁ、今は元気にしていることだし、その、ごめんな。今まで迷惑かけていたみたいで」

「ううん、生きているだけで私は幸せだから……」


 ハンカチ持ってくればよかったな。アインツさんが渡してくれたから結果オーライだけど。


 ああ、こんないい娘の求婚を断り続けたヴェノスって、どれだけ理想高いんだよ。俺のいた世界だったら、世界的有名な俳優が束になって求婚しに来るぞ。


「それにしても、ヴェノス変わった……?」


 心臓から嫌な音がする。一気に冷や汗が流れてきた。


「そ、そうか?」

「しゃべり方とか、雰囲気とか……それにやさしくなったっていうか……」

「13年も経てば少しは変わるだろ」とポーカーフェイス。そんなことしなくても表情には出ないからいいんだけど。


「でも、見た目も若返ってるし……若返りの薬とか作ったの?」

「そういうソフィアだって、若いよね。……俺はそう思うケど」

「私は亜人族リニアの竜人種だから、魔族オストロノムスより長寿だし、まだ老ける歳じゃないよ」

「あ、あーそうだったね、あっはは」

 知ったかすんじゃねぇ俺! 嘘を重ねる気か!


 閑話休題。


 そんなわけで、ふたりベッドに並んで座って、これまでのことを話した。アインツさんはなんの空気を呼んだのか、部屋の外の廊下にいる。まだ午前中だからね。夜はまだ先ですよ執事さん。


 会話の内容は他人事のようにしか聞けなかった。ほぼソフィアが一方的だったが……まぁ、いかにヴェノスのことが好きかを聞かされたような感じだ。

 あの錬金術師、そうとうな唐変木か理想高いかと思っていたが、彼女のアプローチっぷりを聞いてから、だんだんヴェノスの気持ちがわかってきた気がする。


 ぞっこんどころでは済まないぐらい、狂気的にヴェノスのこと愛していたようだ。いわゆる……ヤンデレだ。


 明るくて健気なんだけど、無邪気なヤンデレほど厄介なものはない。一途を越え一貫した愛は人の心を蝕み、依存する要因にもなる。高校の時プレイしてたゲームのキャラが言ってた。


 今のところは危害はないが……ああ、こんな幸せそうな顔を壊すのか俺は。


「ソフィア」

「ん? どうしたの?」


 俺自身のこと、受け入れることを願うしかない。ダメだったら、俺がその悲しみを受け入れよう。


「実は、謝りたいことと、言っておかなくちゃならないことがあるんだ」

「……?」

「落ち着いて聞いてほしい」

「うん、わかった……」


     *


 宿屋の一室が跡形もなくなるほどの爆風で、俺は二階から落ち、街道に叩き付けられる。 


「げほっ、げほ……びっくりしたぁ」

「――ねぇ、嘘だよねそれ」


 身も凍るよな声……というよりは、悲しそうな声。慰めてやりたいような弱弱しい声に、俺は振り返る。


「ヴェノスはもう、ヴェノスじゃないの……? そんな冗談、やめてよ……」


 けど、ぎゅっと抱きしめて落ち着かせるという展開は叶いそうにない。あれに近づけるはずがない。


 ソフィア……あいつ今、何をしたんだ。術式の作動すらなかったぞ。


 宝玉のついた杖を召喚させる。やっぱり術式使いだったか。それも、手練れっぽいな。

 でも騒動は勘弁だよ。これ以上俺の株を落とさないで。町にいられなくなる。


「お嬢様! 止めなされ! ここで暴れたら――」

「そ、そうだぜお嬢様! ここはおしとやかに気を静めて――」


「ヴェノスの……バカぁーっ!!!」

 執事と俺の言葉も届かず、杖を地面に突き刺したソフィアは、宝玉に向けて突き蹴りをかます。パン、と割れたと同時、目の前が真っ白に――光線系の衝爆術式か!


「――ぃぎぁ!」


 変な声出ちゃったけど、両手に『物質分解』スキルを思い切り発動させ、光ごと飲み込むように極太の破壊光線を消滅させる。術式もしょせんは素粒子と同じような神素というわけわからない物質の反応と現象に過ぎない。

 けど、その威力が強すぎるためか、消滅させたと同時に俺は町の外へ吹き飛ばされる。


「ごぶっ!」


 町の外にあるエリシアさんの家を通り過ぎ、山岳の岩壁に激突する。鼻と顔面が痛い……あ、人型の穴ができた。


「やべぇよ……やべぇよ……あいつただの公爵令嬢じゃねぇ」


 公爵令嬢の皮を被ったヤンデレだよ。ていうかただのヤンデレなのかアレは!


「――っ」

 咄嗟にその場から離れる数コンマ後、俺のいた場所は直径10mのクレーターと化した。砂混じる爆風に何度も俺の飛ばされた身体はバウンドし、三半規管が狂うほど転がり続けた。


 運動エネルギーが減少し、なんとか立ち上がったときには、またソフィアの一撃。再び避けるが同じようにズドォン! と地面に穴をあける。


 待てまてマテWait!

 なんだあれ! なんだ今の! 腕一本で地面割ったぞ! 震度いくつの大地震起こしたこいつ!

 俺の知ってる公爵令嬢じゃねぇ。どこのマウンテンゴリラに育てられたんだよ。


「ヴェノスはヴェノスよ……ヴェノスは私のすべてなの……その魂が違うだなんて……別人だなんて……馬鹿なこと言わないで……」


 涙流すソフィアもかわいいし健気だが、女の子の泣き顔ほど心が締め付けられるものはない。けど、暴力を振るうのはよくないぜ? 頼むからそのクレーター作った拳をしまってくださいお願いします。


「なんだあの馬鹿力……術式なのか?」


 それ以外考えられないが、ただの衝撃波じゃない。俺の意識や魂が身体から剥がされそうな、嫌なエネルギーを感じた。


「そんな寝言は寝てから言って!」

「永久に眠らされそうだ」

読んでいただきありがとうございます。

2月18日に掲載したのですが、活動報告に本作のバレンタインSSを書きました。本編とは別に個人的に書きたかったものです。よければどうぞ。

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