迷子地図
新宿にあるプラタナスの並木道の途中で、誰に呼ばれたわけでもないのに、1人振り向く時がある。
果たして俺は、どこに向かっているんだっけ?
俺の居場所は…
夕陽に染まっていた道がやがて暗くなる。
なんだか、立ち止まる自分がなんともいたたまれないな。
悔しい。
何かカタチにできないものが喉まで出かかっている。
うじうじしてるなまったく。
いつまでも立ち止まってねぇで、進むしかないだろうが…
そう自分に言い聞かせて、かたくて重いものを抱えたまま駅へ歩きはじめる。
自分が変わってしまったのか、
無駄に騒がしい街の明かりが心を揺らす。
場違いな気がして、引き目を感じる。
変化し続ける街、変わってしまう街並み
…んー…モヤモヤ…
心なしか早足になる…ここには居づらい
「あれ?ゆーじじゃん」
後ろから聞き慣れた声がして振り向くと、見慣れた小柄な兄さんの笑顔。
「あぁ、やっぱり。こんな場所で会うなんて奇跡みたいだね。」
俺の難しい表情に気がついて眉をひそめる。
「もしかして、迷子?」
どきりとする。
「実は俺さ、友達にオススメしてもらったお店探してたのに、道に迷っちゃったわけ…仲間だね!」
そう言って「このお店って、どこにある?」と地図を差し出して笑う。
その優しい笑顔に、なんだかこっちもホッとする。
それにしても、不器用すぎる彼は方向音痴でもあるのか?
「ちょっと見せて」と地図を受け取って横に並び歩き出す。
「ごめんねぇ…
ゆーじはどこに行こうとしてたの?」
返す言葉を探してうむ。と黙り込む。
その反応に鈍感な兄さんが珍しく察する。
「もしかして、また先のことを考え過ぎてわからなくなったのか?」
と下から心配そうな顔を覗き込んで来る。
俺は返す言葉も思い浮かばず曖昧な返事をして、地図に目を落とす。
「ふーん…そうだな。なんだか…人生にも地図が欲しいな。んーでも、先のことがわかるっていうのも…んー…深いな」
それでも今は、悩む前に飯だ!
腹減ったもん。迷子な俺を連れてってよ。
と、柔らかく笑う彼のあたたかさに、
『ナニか』が詰まって苦しかった胸がふいに軽くなる。
"なんだ俺は、目の前の仲間が見えていなかったんじゃねぇか"と。ようやく、少し楽になった。
小道に入るとカレーの香ばしい匂いに気がついて彼の表情がぱあっと明るくなる。
「あったぁーーー!!」
いつもよりも増して高い声を上げる
「わあ、ありがとっ!ありがとっ!」
ぶんぶんと握手をして店へ急ぐ彼の後ろ姿を見て、自分も嬉しくなる。
…
そうか、俺も確かに迷子だったんだ。
うん。たいしたことねぇな。
周りが変わってしまうのは、まあ、仕方が無いとして、それでも俺の居場所はここだ。変わらず傍にメンバーがいる。
よっしゃ、俺は信じるぜ。本当のことがわかるまで永遠に続く夢の道をメンバーたちと一緒にいればいい。
な、そうだろう?
そのことに気がつけてよかった。
俺の方こそありがとう。
「ね!奢るから一緒に食べようよ!!」
細い道によく響く声。お店の前で手を振る彼。本当に変わらない。
「お!言ったね?
折角だから最後までお供しましょう!」
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