つらい別れ
ユタカが熱を出した。
どうやら高熱でダウンしてしまったらしい。
確かに昨日、別れ際のあいつはどこか遠くを見るような眼差しで、少し悲しそうな笑顔を浮かべていた。
今朝、送られてきたメールには
「熱出しちゃった、ごめん。今日は行かれそうにないや。明日までには治すから」
短い文章だけど、長い付き合いから迷惑をかけたくない気持ちが伝わってきた。
なあ、ユタカ、お願いだからリーダーには強がるなって
プロ魂が誰よりもあるお前が職場に来れないのなら、きっと、とても辛いんだろう?
次の打ち合わせまでに十分な時間があることを確認して彼の家へ急ぐ。
彼のポストの奥から鍵を取り出す。このシステム、変わってなくてよかった。
ドアを開けて彼の名を呼ぶ。
部屋の奥へ進むと、ソファーから蒸気が…
俺からしたら小さめのそのソファに収まる彼が、余計に小さく((おっと…
「おい、こんなところで寝ると余計に悪化しちまうぞ…」
声をかけると、重たそうに開いた瞳が俺を捉える。辛いか?と尋ねると、ゆっくりとまぶたを閉じる。辛いよな。
ふう。と息をつき、彼を抱えてベットへ向かう。
小っさ、軽、熱、汗っかきが…
仕方なく服を取り替え、寝かせてから氷枕とタオルを駆使して看病してみる。
らしくねぇな…と一人笑うと下から「本当に…」と聞こえた。
さっきよりも幾分、楽そうな表情にほっとする。
「でも…ありがと…」
おいおい、久しぶりに俺は後輩を可愛いと思ったぞ。
少し笑って、でも辛そうに眉をひそめた末っ子に「もう、何も言うな」と声をかけてくしゃくしゃの頭を撫でる。
これ程までに体調を崩したのは、
こうして、周りに気を使って無理を重ねたからだ。すぐにガタがくるくせに。
許されるのなら、ずっとこうして面倒をみていたい。
でも、次の仕事の時間が迫ってた。
畜生。
本物のリーダーっつうならさ、
こんな時こそ傍にいて、お前が辛いことも、その全てを受け入れてやるもんだろう?
限られた時間が悔しい。
「いい子にしてろよ?少し待ってろ、
また、来るからな。」
頭をぽんぽんして部屋を後にする。
後ろから「ありがと」と聞こえたきがした。…いいんだって、
いいかユタカ、俺はお前たちのリーダーなんだからな。
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