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最弱にて最強の  作者: 凪
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四十三幕目  イカとタコと七方出

 七方出の解説だけする予定が、少しだけウンチクをいれたら止まらなくなってしまった、イカとタコに乗物、白拍子は予定に有りませんでした。

 湯浴みは、前を洗うのは椿に譲って、ひめの先生と迷霧ちゃんが仲良く?じゃなくて、張り合いながらも、自分の背中を流してくれました。

 迷霧ちゃんが里の御姉様方から聴いた、殿方の背中の流し方を実践、ひめのと椿が絶句。

 迷霧ちゃん、くノ一のマル秘テクニックですか?

 ひめのは迷霧ちゃんに対抗する為に、自分が止めてもマル秘テクニックを真似る。

 あらま〜、凄く気持ちい〜いです。

 テクニックはマル秘と言うことで。マル秘。(R15の為に自主規制)

 二人は自分の事になると張り合うからな。

 

 湯船に入ると、ひめの先生と迷霧ちゃんが自分の左の取り合いを始めた。

 今宵は椿か伽の為右に、二人が空いている左の席を巡る争いをする。

 この二人は、仲良くなさい!

「横は空けておけばいい、二人は騒いだから前」 

 ひめの先生と迷霧ちゃんが嫌な表情をしたが、前に座ると迷霧ちゃんが悪戯してきた。

 身体を隠していた手拭いを少しずらす、迷霧ちゃんは自分の視線で怒らしたと気付きシュンとした。




「凪様、雨戸を閉め戸締まりを致しました」

 床着に着替え、居間で真風の報告を受ける。真風、有り難う。皆、御苦労様。

 

 さて、残りの五人がお風呂に入る。


「凪様、メラン殿にお会いするにしても、みりあさんが湯浴みを終える迄に刻がかかりますが、如何致します」

 ひめの先生、其処まで考えてませんでした。

 う〜ん、どうしようか。

「凪様、ならば、我の忍び道具を御覧になりますか?

 忍び道具は、本来は忍器にんきと申します。

 忍者しのびもの位しか、忍器と申しません。

 人前で忍器と申せば怪しまれます。こころ(注意の意味)して下され」

「気を付けよう、迷霧」

 迷霧ちゃんが立ち上がり、寝間着の裾から、巾着袋を取り出した。何処に隠してるの、狐ちゃんは。


七方出ひちほうでと申しまして、他国を探索致すのに、怪しまれない様に着る着物が御座います。

 七つの姿が御座います。

 七方出は姿を替えるだけでなく、姿にあった芸や知に商いの仕方に作法、方言や訛りを修めなければなりません。

 忍者しのびものは、下界に知られず。姿を替えれば親兄弟にも悟られず、他の者に露見するなどは恥で御座います」


 迷霧ちゃんが巾着袋から、女物の羽織りを取り出すと自分達に見える様にかかげた。

忍者しのびものの羽織りは、裏表が別の色と柄となり、両方着れます。この羽織りは商いの羽織りで御座います」

 忍び者の羽織りは、リバーシブルか!

 確かに、青色の柄で片方は赤色の柄だ!

「殿方の七方出は、出家、虚無僧、修験者しゅげんじゃ(山伏)、商人、放下師ほうかし猿楽師さるがくしつねかたと御座います。

 放下師は、手妻てづま(手品・奇術)や軽業等、様々な芸をする芸人です。

 猿楽は話しと歌や踊りです。狂言や万歳が御座います。

 常の形は、その者が常に着ている着物です。

 忍者しのびものは農民や町人に侍に混ざり、活きております。

 まぎれこむ身分の姿になりまする。

 その者が常にしている姿なので、常の形程怪しまれない姿は御座いますせん。

 女人七方出にょにんひちほうでは、尼僧にそう(女の僧侶)、歩き巫女、渡り医者、商人、放下師、猿楽師、女人常にょにんつねかたです。

 我は商人なら、くしや小物を商いまする。おなごだからこそ、おなごが喜ぶ品が判りまする。

 其れに、おなごは噂話しが好きなので、集め易いので御座います。

 童が喜ぶ品、菓子、飴やあそもの(おもちゃ・楽器)を太鼓を叩いたり、歌を歌いながら行商をすれば、童は集まります。

 童は大人の話しを覚えますが、話して良いか判別出来ないので、菓子、飴や遊び物をまいないとして渡せば、上手く聞きだせまする」 

 迷霧ちゃんの笑顔が怖いよ。

「季節物なら、新顔でも怪しまれません。その季節だけ行商を行う者も居ますから。

 師走しわす(十二月)なら、正月飾りや羽根突はねつきです。

 凪様、羽根突きは童女が(居)る家に、縁起物として師走に贈り、正月に贈り物の羽根突きで遊びまする。

 正月に羽根突きで遊べば、夏に蚊に刺されないと言い伝えが御座います。

 正月ならこよみ(カレンダー)。春ならしえん。夏なら風鈴、団扇に扇子、朝顔の苗等になりまする。

 朝顔の種子は強い下剤(注)になりまする。強すぎるので、使われ無くなった下剤です。

 種子を扱うかも知れないので、心して下され」

 あらま!朝顔の種子は下剤なんだ!(注)

 羽根突きが厄除けが起源なのは知ってが、でも、しえん?

 迷霧ちゃんが解説してくれた。紙鳶と書き、しえんと読む。

 いか・いかのぼり・とも少し前は読んだ。

 公儀が禁止令をだしたので、紙鳶と書き・タコと読み、これは禁止された紙鳶いかではなく、タコで御座いますと、凧の文字をあてたとの事。

 あらま!紙鳶は正月に、遊ぶ凧の事だった!

 正月も遊ぶが、春の行事とするところが多いらしい。

 公儀が禁止したのは、紙鳶が大名の行列、将軍の行列のしかも、将軍様の物籠ものかごに落ちた為だ。あちゃ~。禁止されるな~。

 大凧を飛ばすのも流行ったが、落ちた時に大形の為、家や大名の屋敷を壊してしまい、飛ばした奴らは逃げるので被害者が自費で直さなければならない、事例が多発したのも理由だ。農作物にも被害がでまくった為。被害がでて禁止される程の大凧って、どんなけ大きい凧なんだ!

 人気のある遊び物だから、紙鳶の読み方をタコに替え。漢字まで凧に替えて、此は禁止されてない凧ですと禁止令をかいくぐった。しぶといな。町人は!

 でも、乗り物駕籠?

 ひめの先生の解説によれば、引き戸が付いている、高級な駕籠で、将軍、大名、公家や奥医者、僧、侍の身分で乗れる駕籠。

 身分卑しき者は乗れないから、町民の駕籠と区別する為に、乗り物、乗物のりもの、乗り物駕籠が名だ。

 ひめの、椿は乗り物駕籠には、何度も乗ったらしい、流石は元姫様。


「殿方と女人の七方出に寺や神家の関する姿があるのは、どちらも人が集まり、噂が集まり易いからです。

 公儀の定めで、良民は村や町の寺の檀家に入りらなければならず、宗門人別帳しゅうもんにんべつちょう(戸籍にちかい帳)に記されます。

 人別帳には戸主名こしゅな(こしゅめい・へぬしな・へぬしめい・とも読む。家長名の事)に持高や身分が記入され、毎年の弥生やよい月(三月)に代官本陣に出します。

 寺に有る宗門人別帳の写本を盗み見れば、何処に誰が居るか判ります。

 旅の僧侶なら寺も入れてくれるので、盗み見が容易で御座います」

 忍の者はアザトイね。


「我は歩き巫女と白拍子しらびょうしになりまする。

 歩き巫女は、占いや厄除け等を行います。 

 神家に雇われている方もおります。

 神前で神楽かぐらを舞う神楽女かぐらめ神巫みこです。市子いちこに含まれまする。

 土地によっては、里巫女さとみこと呼ばれ、神家で里神楽さとかぐらを奏でます。

 地域を廻るのが歩き巫女、諸国を巡るのが渡り巫女で御座います。

 大抵の方は、別けることなく歩き巫女と呼びます。

 人によりまするが、遊女の真似事を為さる方もおりまする。

 白拍子しらびょうしと申しまて、白鞘巻きを佩刀はいとう(刀を腰に帯びること)をして立烏帽子たちえぼし公家くげや陰陽師が被る帽子)に直垂ひたたれ(男袴の一種)の男姿で、今様歌いまよううたを歌い、神楽を致しまする。

 侍の方や公家様の遊女となります」

 高級風俗嬢てっことか。

 

「迷霧は、口寄くちよせの市子いちこもできるのかい」

 自分の問いに迷霧ちゃんは、答えた。

「口寄せは出来ません」

「市子?確か巫女の別称ですよね」

 椿の問いに迷霧ちゃんが答える。

「市子は、神霊、生き霊、死霊の魂を呼んで、その者の意中を話せる者逹でもあります。

 市子は、巫女、口寄せとも呼ばれます。

 土地によっては、死霊を寄せるのをくち、生き霊を寄せるのをくち仏降ほとけおろし、巫女寄みこよせ(巫女がする口寄せ)とも。

 あずさ巫女とも言い、梓巫女は歩き巫女に数えられます。

 先程話した、神楽女、神巫も市子に含まれまする」

「昔の日本に似てるな。

 市子は神前に神楽かぐらを奏する舞姫の神巫いちこ(別の読み方)から、市子はきてるとの説があるが」

「凪様、流石は陰陽師様で御座います。巫女の他に市子は口寄せの意もあるのは、我は存じませんでした」

 ひめの先生も知らなかったんだ。まあ、自分は聴鬼ちょうき(霊力が聴くに特化している者)だからな。だから、精霊と聖獣の声が聴こえたんだろう。

 聴鬼なのに日乃では、見鬼しき(けんき・みき・とも読む・視鬼とも書く。霊力が視るに特化している者)みたいな能力が開眼したが。

 仲間に近い市子は当然詳しい。しかし、昔の日本と似てるな~。

 迷霧ちゃんに話しを続けるように促す。


「渡り医者と申しますが、医者と言うより、渡りの柔術家の健引けんびき(あまりにも効くので患者が治り、食べていけない為に廃れた技)、渡りの藪医者です。腕は藪が相場ですが、辺鄙へんぴな村でなら仕事が有りますが、文句がくる前に渡りまする。

 医者は、豊様の頃より難関があり、受からなければ偽医者となりお縄(逮捕)となります。

 受かっても腕が藪なら、患者が集まらず殿方は渡り医師になる方も多いです。

 女人なのかは、忍者のおなごは幼き頃より医術を仕込まれますし、童やおなごは、おなごの方が馴染み易く、しゃべり易いからです。

 我は渡り薬師です。

 渡り薬師は諸国を巡り珍しい薬草を探し、問屋に卸したり、薬草で薬を作り、その土地で商いをします。

 薬草と客を求め季節で渡ります。

 我は薬草を採る振りをして毒草も採ります。

 毒草は扱い次第で薬となりまする。

 放下師なら、我は傀儡女くぐつめ。殿方なら傀儡師くぐつし(かいらいし・とも読む。または傀儡子とも書く)となります。

 傀儡師は人形遣いのことで御座います。

 唄や口上しながら、人形回しをしまする。

 人形回しは二つ御座います。

 我は大きめの人形を片手で操り、唄を歌いながら、着物の裾をこの様に」

 迷霧ちゃんが立ち上がり、床着の裾をヒラリ、ヒラリと捲った。

「殿方は傀儡より、裾が気になるようで」

「「はしたなや」」

 ひめの先生と椿は仲良く非難。迷霧ちゃんが二人に意味深長いみしんな笑顔を向ける。

「猿楽師は、我は鳥追とりおおんな女太夫おんなたゆう(おんなだゆうとも)になりまする。

 三味線の弾き語りや鳥追い唄を歌いまする。門付かどづけ芸人で御座います」 

 ひめの先生の解説では、門付は門口に立ち、芸の対価として金品を受け取る芸人の総称とのこと。門付けとも書き、かどつけとも読む。


 迷霧ちゃんが巾着袋から、笠と三味線を取りだすと演奏の構えに入る。

 三味線も弾けたり傀儡ができるのは、才を見て知ってたが、多才な趣味だと思ってスルーしてた。忍びの為だったのか。

 そう言えば、日本の時代劇のくノ一の変装の定番の三味線流しは、迷霧ちゃんが取り出した笠と同じ笠を持ってるな。笠が半分の所で折れいる。鳥追い笠とひめの先生。

 忍の者は覚える事が多くて大変だ。でも、三味線はヤバイ!

「迷霧、三味線は駄目だ。 

 三崎の者に聴かれると、三味線の音色がするのかと不審に思われる」

「そうで御座いますね。三味線の音色は危ういです。

 凪様に三味線を御聴かせしたかったです」

 迷霧ちゃんはションボリとした。ゴメンね、迷霧ちゃんの忍器は秘密だから。

「迷霧さん、芸や商いをするのは土地の親分衆に話しを通さないと危ういのでは」

 元姫様の椿が迷霧ちゃんに訪ねる。姫様だったのに、庶民の仕来しきたりにくわしいね。

「土地によって木札を預かったりとありますが、忍者しのびものは気が付かれる前に遁走とんそう(とんずら)!」


「「遁走!!」」

 自分逹三人は叫んだ。


 


 注・朝顔の種子は強力は下剤です。子供の誤食で死亡例が毎年有ります。朝顔を扱う時は、必ず大人が見守ってあげて下さい。

 *注意喚起の為に記載。朝顔の種子の子供の誤食は危険です。死にます。 

 大人なら一粒なら生き地獄見れば生き残れるかも?

 

 徳川幕府は自称で医者になれたので、医者の試験は創作です。


 紙鳶は大名行列に何度も落ちたのは、記録にあります。将軍の乗り物駕籠に落ちたのは創作です。


 宗門人別帳は徳川幕府より、パクりです。


 女人七方出は創作です。渡り医者は苦労した。

 昔は、女性は入峰にゅうぶ(修行の山・峰の霊場に入ること)が出来ず、山伏は男のみだったので、峰によっては明治・大正に女性の入峰が解禁になりました。

 女性の術はノ一の術のみなので。

 萬川集海は、忍びの業が絶えるのを懸念して、藤林 保武が十一人の協力で書いた、全二十二巻の秘伝書です。

 初めから徳川将軍に献上して、伊賀と甲賀こうか、江戸に忍びの学校を作らす意図があったのでしょう、重要なところがワザと書いてないです。幕府を信用してなかったんでしょね。

 結果は門前払いです。

 忍びの学校も無し。

 役に立たない忍器・水蜘蛛の使用方法がないです。名と寸法と作り方のみ。カンジキの様に足に穿き水の上を歩いくのは、後の世の創作です。

 万川集海の現代語訳が出版されましたが、元が国立公文書館内文庫本が元です。原文付きです。

 訳はどうでもいい、原文だけが欲しかった。六千四百円しますが、多分絶版になりやすいテーマなので、御早めに。

 名が違うのは、写本が元だと思います。責任を持つとの念書を書けば写本が許され、虎の巻き等の名で伝わり、写本される時に削除と加筆がされて、様々な写本があります。


参考文献  完本 万川集海 藤林保武著 中島篤巳・訳  国書刊行会


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