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最弱にて最強の  作者: 凪
35/50

三十四幕目 据え物と敵一人、貝寄風に非常食

 謎の言葉は後書きで。

 残酷な作法がでます。注意して下さい。

 性描写があります。注意して下さい。

「凪様の学んだ御流技は、どの様な武芸でごさいましょうか」

 風呂からあがり、全員が湯帷子ゆかたびら(浴衣の原形)を着て、五組の布団が敷いてある部屋に戻ると、ひめのが質問してきた。


「自分が学んだ流派は、師匠が亡くなったから、自分が死んだら絶流ぜつりゅう(絶えた流技)になる。

冬のなごりに吹く西風、貝が浜に打ち寄せられる程の西風。貝寄風かいよせの意の流技。

他の御流技をあわせ、新たに工夫した流技。荒々しくそれでいて繊細な業。

剣、槍でも多人数相手にと工夫された流技。一人いちにんの業も多彩さ。

長巻ながまき、槍、薙刀、柔術、千切木ちぎりき、鎖鎌、手裏剣など外物とのものも多い。

剣一人いちにんの敵、学ぶにらずの諺に重きを置き、兵法へいほう(軍学・軍略)もある流技。

貝寄風かいよせ流剣術」

「貝寄風とは荒々しい名です」

 真風か呟いた。

「真風御姉様、貝寄風は荒々しいのですか」

 早彩ちゃんが真風に聴いてる。

「海の土の中の貝を抉り出し、貝が浜辺に打ち寄せる程強い風です。如月きさらぎ(陰暦・旧暦 二月)の二十日頃に吹く、冬のなごりの荒々い西風です」

「翔べない程の強い風みたいです」 

「我ら翼人には、嫌な西風です」

 早彩ちゃんと真風、翼人には不人気だな。

「御兄様、けんいちにんは何ぞでしょうか」

 諺も早彩ちゃん?

「日乃にも御座います。剣一人の敵、学ぶに足ず。一人しか倒せぬ剣術より、世にでる者は万人の敵に当たる兵法を学べとの諺で御座います」

 流石はひめの、心の中で拍手です。

「兵法ですか、おなごには無用で御座います」

 かもね、迷霧ちゃん。

「凪様、外物とのものとは何ぞでごさいましょうか」

 炎は真っ向勝負だからね。

「外物は鎖鎌、寸鉄すんてつなど、戦場いくさばで使えぬ武具の事。炎は槍が得手だからね。外で生きる日々の心構えと、緊急の変に対しての対処の意もある。生きざまも大切との意」

「外物はよろしゅう御座いますが、生きざまは何でしょうや」

 ひめのがまたかと、呆れた表情をして話した。やっちゃたかな。

「死にざまの言葉は御座います。生きざまは生きている間のさまでごさいましょうか」

「ひめの、それであってる」

 やっちゃた。言葉遣いは気を付けよう。

 

「旦那様は、腕前はどの位でしょうや」

 椿よ、当然の疑問だね。

「貝寄流は目録などが無い流技だ、外物や剣に兵法を準々に学び、柔術を学んで終わる。

選ばれた者が、奥伝おくでん(奥義・口伝・秘伝)を学ぶ。

自分しかいないから、家元いえもと宗家そうけになるが、今の日本では真剣での勝負は許されない。自分の力量が判らない」

「宗家とは何ぞでしょう」

 又々やっちゃた、ひめのごめん。

「流技の元締めかな」

家元いえもとで御座います」

 ひめの先生、御教示有り難う御座います。家元は流技の独特の言い方だと思い込んでた。華道や茶道と同じなんだ。

「家元様でいらっしゃる」

 早彩ちゃんが目を輝かしてる。隣の迷霧ちゃんは疑うような視線、陰陽師の話しで、呪術が出来ないとガッカリさせてるからね。

「天下泰平の日本だったからな。皆は戦った事は」

 最近は、キナ臭くなったが。

「流技にもよりますが、魔獣との戦いが目録の関門となっている流技が多いと聴き及びます」

 椿、危険な段級審査だね。

「魔獣と戦った事がある者は手を挙げて」

 早彩ちゃん以外七人が手を挙げた。

「阿嘉村は森と竹林に囲まれております。獣や魔獣がいくらでも出てきます。魔獣は人を餌と見ますが、村人にとっても魔獣は御馳走です。飢饉の時は襲われて大喜びです」

 非常食扱い何だね、魔獣は。迷霧ちゃん。

「僻地の開墾中です、村に魔獣が襲ってくるので、竹槍で突き殺すか、竹槍を投げるか、我らで作った飄石ずんぱいで殺します。職人が仕上げた振り飄石は名倉なくら家(三崎藩の主家)に取り上げられたので」

 竹槍でそれですか。炎よ〜、怖いよ〜。

「魔獣狩りは、楽しゅう御座います。旦那様」

 純情そうな顔立ちなのに、鬼だからか好戦的だよ。鬼姫様。

「目録の関門が魔獣との戦いでした」

 みりあよ、朝日流は過激なの?

「師範か魔獣かは、選べます」

 そうなんだ、早彩ちゃん。

「我も目録の関門が、魔獣退治でした」

 ひめのまで。

「空から弓で狙い放題です」

 真風〜。

「魔獣は、新しい太刀の試斬しざん(試し斬り)にうってつけです」

 琥珀よ、魔獣で武利目利ぶりめきき(斬れ味・刀の強さ・刀の鍛えを重視の目利)ですか。最上大業物さいじょうおおわざもの(最上の品)とか決め手てたのかい。魔獣で生き試し斬り(生きた者での試し斬り)かい。生き試しは無抵抗にして行うはずだが、琥珀~怖すぎます。

 据物斬すえものきり(試し斬りの別名)は作法知ってるが、経験は無いな。現代日本では人間の死体を使う試し斬りは、死体損壊で捕まるよ。日本では無理です!

「日本では出来ないな」

 早彩ちゃん、染まらないでね。御願いします。



「御兄様、御借りした手拭いで御座いますが、先程洗いました。明朝乾きましたら、御返しいたします」 

 忘れた、早彩ちゃんに手拭い貸してたんだ。

 いつの間にか、隣に座ってた早彩ちゃんと迷霧ちゃん。いつの間にか迷コンビになってる。

「気にしなくていいさ」

「御兄様だからこそ気にします」

 早彩ちゃん健気すぎるぞ。可愛い。

「迷霧と炎は知ってるが、二つの祝詞を唱える。日本の祝詞だから、秘め事にする」

「秘め事に」

 ひめのが驚く。

「日本での式神しきがみ(契約した鬼)と守護神しゅごしんとの祝詞。日乃では何も起こらないがな」


 ヤッパリ無反応だ。何にも聴こえないよ。

『おい、何の気配もしねえぜ。気を落とさずに楽しみな』

 草犬君、報告有り難う。

 肩を落としていると、早彩ちゃんが後ろから、抱き付いてきた。

「御兄様、我らが御力になりまする」

 心配させたね、早彩ちゃん。楽しむか。

「皆、寝よう」

 皆が就寝の挨拶をしてくる。

 皆が布団に入ると、自分は正座をしている早彩ちゃんをお姫様抱っこをして布団の中に寝かす、一緒に横になると掛け布団を掛けた。



 貝寄風は、現代暦では三月下旬です。

 貝寄風・大阪住吉の浜辺に打ち寄せられた、貝から造花を造り、四天王寺の聖徳太子をまつる聖霊会しゅうりょうえに献じました。

 貝寄風流は創作です。

 

 剣敵一人、学ぶに足らず 作中のままです。


 外物は寸鉄、鎖鎌など戦場で使えない武具の意。又は外出時の緊急の対処と心構えです。

*御流技によっては、武具の意がない流技もあります。流技で外出時の意も変わります。

 

 家元・家本は古来より。宗家は近年の言葉ようです。惣領そうりょうとも文献にあります。


 死にざまは古来より。生きざまは近年です。


 試斬は古来より。

 生き試し斬りは生き胴試しとも、どちらも縄で拘束して無抵抗にして行われました。辻斬りも生き試し斬りの一種。(強盗説もあり)

 据え物斬りは作法があり、藁巻きや罪人の死体等で試しましたが、詳しくはやりません。現代日本では死体の試斬は無理だから、自分も作法だけは習いました。こういうものがあると知って下さい。

 武利目利も詳しくはやりませんが、戦闘用の刀のランク付けです。最上大業物は作中で。


 ウンチク大好き。

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