表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ナナ-
9/66

code:5「神風」

「まさか・・・男の人を拾ってくるなんて思いもよらなかったです」


隊長はニコニコしながら煤野木を歓迎した。


「・・・・事情を説明して欲しいものね」


対照的に揖宿は冷淡的に、煤野木を拒絶する。


「えと・・・その。あれだよ。あれ」


佐伯は手をあたふたしながら経緯を説明しようとするが。


(あ、あああ。やばいよ。どんな理由で連れてきたか説明しずらいよ!)


顔を火照(ほて)らせ混乱するばかりで事態は進まない。

その様子を見ている隊長は更に微笑み、揖宿は溜息を尽く。


「いや、俺が説明します」


煤野木が間に入り、事情を説明する。


「・・・・過去からやって来たんですか」


隊長は目を細めながら、煤野木を見つめた。


「・・・・また、面倒なのがやってきたわね」


揖宿は目を(つむ)りながら、部屋の奥へと行ってしまう。


「そうだ、煤野木さんがよろしければなのですが。

ここで一時過ごしてみませんか?」


ぱちん。と満面の笑顔で答える隊長に対して、佐伯は不満の意を示す。


(煤野木が本当に過去の人物なら、過去に返した方が・・・)


「・・・・実は、元の時代に戻る方法がないんだよな」


佐伯の考えを読んでたかのように、煤野木は答える。


「へ?」


(未来にやってきたのに、帰る方法を知らないの・・・?)


唖然(あぜん)とする佐伯に対して。


「あら、それなら好都合じゃないですか。

ここに留まれる理由も出来た事ですし、貴方の部屋を探してきますね」


嬉々とした表情の隊長。手の早さも普通より早かった。


「・・・・感謝します」


煤野木はお辞儀をして、感謝の意を示す。


「・・・・その前に一つ聞きたい」


緊迫とした空気の中、煤野木は物怖じせずに喋る。


「はい?」


対照的に隊長はのびのびと空気に囚われない喋り方だ。


「戦うというと、・・・・どうやって。だ?」


暗黙に、煤野木は隊長達に対して探りを入れている。

よほどの度胸と肝が据わっていないと普通の人には無理だろう。


「・・・・・あぁ、貴方はまだ聞いていないのですね」


隊長の眼が薄汚れ、顔は少し濁っている。

佐伯はその表情を見据えながら、少し驚いていた。


(隊長が、珍しく真面目になってる・・・)


隊長はそのまま近くにある椅子に腰掛け、テーブルで両手を組む。


「この際ですし、いいでしょう。話をしましょうか」

「お願いします」


煤野木も隊長の反対側に座り、隊長の話を待った。


「・・・・私達は、カミカゼを使って敵と戦います」


隊長のある単語に、煤野木はいち早く反応する。


「カミカゼ?・・・もしかして大戦の?」


第二次世界大戦途中に行われた非人道的行動。

神風特攻隊。通称神風。

由来は、鎌倉時代の元寇を追い払った時の奇跡の風。

それらと同様に連合軍を討つという所から来ている。

単体の飛行機を使い、空母に突っ込んで自爆。そして誘爆させて撃墜するという。

当時一般的に、かつ崇高(すうこう)な物だといわれていた行為だ。


「いえ、そうではなくて。機械の名前がカミカゼ。なのです」


隊長は苦笑いしながら、煤野木に答えた。


「・・・・なんともいえないのですけど、変な形です」

「変な形?」


煤野木は疑問を持ったので、そのまま返す。


「はい。実際に見てもらった方が早いと思います。

なので、その話は後でまた説明させて貰いますね」


隊長は笑顔のまま顔を傾けたので、煤野木は苦笑いしながら言った。


「すいません、続けて下さい」

「・・・・その機械に入った人は、それぞれ自由に瞬間移動(テレポート)する事が出来るのです」

「瞬間移動・・・?」


煤野木がそう聞くと、隊長は腕を組みながら唸る。


「あくまで、肉体ではなく精神・・・。とでもいえばいいのでしょうか?

厳密には意識と肉体が送られて、抜け殻のような本体だけが機械に残っちゃうんです」


隊長はのほほんとしながら続けた。


「そして、意識と肉体だけとなった時。まさに無敵の時間なのです」

「無敵の時間、というと?」


その煤野木の質問に対して、隊長は嬉しそうに答える。


「ふふ。服装は本人が潜在意識的に(のっと)って変わり、武器は何でも使えるようになります」


しばしの沈黙。煤野木は一呼吸着けた後に。


「・・・・・何だか、どこかのヒーロー物を思い出しますね」

「はい。私達はそのつもりですから」




そうやって、一旦話が終わった後に雑談へと変わっていった時には。

嬉々と話す隊長達を尻目に、佐伯はその部屋を後にしていた。


(確かに。・・・・救うって意味じゃ、ヒーロー物と変わらない。のかもね・・・)


(うつむ)きながらそう考える佐伯。

コツコツコツ。と靴が床を蹴る音が通路に響く。

佐伯の姿はゆっくりと、闇へと消えていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ