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旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ヨン-
41/66

code:7「人々」

「ふふふ佐伯ちゃん。これでフィニッシュです・・・・」


パス。と茶色のテーブルにて青色のトランプが四枚投げられた。

その四枚のカードが指し示す意味は。

いわゆる大富豪の「革命」だった。

パス以外に選択肢のない佐伯は唖然(あぜん)として。

その間に凄まじい高威力のカードを繰り出して上がる隊長。


「ええぇええっ!?大人気ないよ隊長!」


すぐさま、どうあがいても勝ち目のない虐めラッシュに批判を飛ばす佐伯。

あまりにも興奮しすぎて座っていた椅子を後方に蹴飛ばしながら。

立ち上がりながら佐伯は怒っていた。


「大人じゃないですから・・・・」


それに対して冷淡的に。しかも地味に笑いながら受け答えをする隊長。


「だとしても!なんで最後の二人になった時に。

こんな強いカード連発して私を異常に虐めようとするの!?

ハメ技だよ!絶対意図的にやってるよね!?」


そうなのだ。

隊長は大富豪を始めた最初のときから貧民をキープしており。

弥生が上がろうとすればその旅に阻止を繰り返して。

最後には革命からの確殺コンボを決めているのだ。


「佐伯ちゃん。私は貧民なのですから。ハメ技が出来る訳がないでしょう?」


出来る訳がない。といいながら確殺コンボを決めまくる隊長に対して。


「4ゲーム連続最後に革命を連発してて何言ってるの!?」


正当な怒りを示す佐伯。

そんなやりとりを見ながら揖宿は。


(・・・・何故私が参加させられているのかしら・・・・)


物凄く悩んでいた。

先程までは隊長のお説教があり、その間に煤野木と会話をしていたのだが。

唐突の弥生のクシャミ。

すぐさま説教は終了して、弥生と未来は浴場へと向かった。

ここまでは確かにまだ揖宿には理解出来る。

揖宿が理解できないのはここからだ。

隊長が急に「気分転換にトランプをしましょう」と言いだした。

揖宿はすぐさま立ち去ろうとしたのだが。

「人がいなければ大富豪が出来ません!」という隊長の笑みによって。

同じく立ち去ろうとしていた煤野木や揖宿は捕まってしまった。

そうして今に至っている。


「はぁ・・・・・何故私が・・・・」


揖宿は溜息を尽きながら、机の上に乱雑下あるトランプの塊を掴み取り。

綺麗にカードが分散するようにシャッフルし始める。

ある程度混ぜ合わせた後に、揖宿が一人一人カードを配ろうとしたら。


「あ、ちょっと待って下さい。揖宿さん」


隊長が静止してきた。


「・・・・イカサマの準備?」


そしてすぐさま、佐伯が隊長への疑惑の眼を向ける。

隊長は苦笑いしながら。


「いえ。曽根崎さんも参加させようと思って」


部屋の隅にいる。虚空を見詰めている青年に眼を向けた。

曽根崎。それが彼女の呼び名。純色である青色の髪の青年は。

西洋のドレスのような服を着ており、初めての人は間違いなく。

人形の印象を受けるだろう。

実際彼女は人形で。そう思うのは当たり前なのだから。

髪と同じように真っ青な瞳は、どう見ても人格があるようには見えない。

そんな曽根崎は隊長の言葉に反応してるのかしてないのか。

分かりづらい事に、ぴくりとも動かない。


「曽根崎さーん。トランプで遊びましょうー?」


隊長が右手を口元へと持ってきて、投げかける様に喋る。

すると、曽根崎の一切の感情が籠もっていなかった瞳が。

急に命を得たかのように水平に動き出して。こちらを見据えた。

そしてそのまま。


「はい」


整然と。あまりにも綺麗な返事をした。

曽根崎は立ち上がり、こちらのテーブルへと近づいてくる。

その動きも、どこかの貴族を思わせるような。

優雅さというか気品さが漂っている。


「はい。どうぞ」


隊長がにこにこしながら、もう一つ椅子を用意した。


「ありがとうございます」


曽根崎は嬉しそうに笑みを(こぼ)した後に、椅子へと座る。

先程まで、人形だったような顔は今はしっかりと人らしい顔になっていた。

ふと、そんな枠組みを見ながら煤野木は辛そうな顔する。

揖宿は辛そうな煤野木の顔を見て思った。


(・・・・・彼は、何を知っている?)


揖宿が初対面で会った時にも垣間見せたあの表情。

初対面の人物には、普通緊張感だとか。

重圧感だとか。そう。何となくぎこちない感じが絶対にあるのだ。

だが、煤野木から感じ取ったのは。


(・・・・まるで、本当に。親しい人物かのように・・・)


そう仮定してカマを掛けてみれば。あまりにも不自然な態度を取った。

つまり。何かを知っているという事を暗示している。


(・・・・しかし、私は彼を知った記憶などない・・・・)


揖宿は自分の脳内にある記憶を巡らせて見るが、やはり覚えがない。


(・・・・情報が少なすぎる)


まだ情報や状況、あるいは性格をきちんと把握してるならまだしも。

今さっき会ったばかりの謎の人物に対して考えるのは無駄。

揖宿は、最終的にそう判断した。


「・・・配ります」


揖宿は声に少し感情を浮きぼらせつつ、カードを配り始める。

煤野木。佐伯。静香。揖宿。曽根崎。

合計で七人分のカードを配り終えた揖宿は再び椅子へと座った。


「では。始めましょうか」


にたりと笑う隊長に、意気込みを決める佐伯。

煤野木はそんな二人を見ながら、軽く笑みを浮かべ。

それらを余所に、曽根崎は一人淡々カードを高速で並び替えて。

揖宿もまた同じようにカードを並び替えていた。


(・・・・ジョーカー)


ふと、手札にあるカード。ジョーカーを見ていた揖宿は。


(・・・・・・次は弥生さんですね・・・)





弥生。

次のカミカゼの搭乗者。今現在浴場で茹蛸になりながら。

引っ張られている最中である。

因みにこのゲームがどうなったのかというと、弥生が戻ってくる時に。

丁度決着が着いた。

大富豪はあまりにも的確に決めてくる曽根崎。

富豪は冷静沈着に事を進めた揖宿。

平民は特に変わる事のない煤野木。

貧民は相変わらず隊長で。

大貧民は、結局確殺コンボを喰らう羽目となった佐伯だった。

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