error.code:I want to save people.
真っ白な。それも本当に汚れの一つすら見つからない。
長方形の形をした、妙に綺麗過ぎる部屋に少女が一人。
少女は仰向けのまま、白い土台に固定するように拘束されている。
着ている服は水色の手術用被服で、上下セット。
そんな彼女の周りには医療器具や、何か液体の入った点滴。
はてはメスや薬品などと本当に色々なものが置いてあった。
静寂が支配していたが、ふと少女の瞳が見開かれる。
それは焦点が合っておらず、きょろきょろと意味もなく縦横に移動していた。
一通り動いた後は、ゆっくりと遅くなっていき。
真正面へとピントがあって。
同時に。少女の体が激しく痙攣し始めた。
体が空中に浮いているとしか思えないぐらいに飛び上がっている。
だが、彼女の手首足首に付けられた拘束具がそれを抑えていた。
上下に呼応するその様子は、まるで心臓のようだ。
「あぁああああああぁあああああぁあああああああああ!!!」
だらしなく開いていた口が、大きく広げられ。
半分咆哮。半分狂気を混ぜながら、部屋の中で叫ぶ少女。
少女のいる部屋は良く見れば、薄いガラスが何枚かあり。
窓越しで他の部屋から見えていた。
そんな異常な状態の少女を窓越しで見詰める大人が数人。
いずれも白色の科学服に身を任せている。
だが。その中でも人際立って目立っている男がいた。
男は灰色の髪で、髪の毛一本一本を直線で綺麗に揃えており。
丁寧にワックスを掛けた、どこか科学の先生のように見える。
少女の様子を見ていた男は、顔を顰めた後に喋った。
「拒絶反応が激しい。・・・・止めろ」
重々しいが。どこか軽いその言葉に。
「はい」という返事と共に数名の大人が機械を弄り始める。
機械の操作を大人が止めると、少女の呼応もぴたりと止まった。
「薬物に含まれるこの物質が作用したのだと思われますが・・・」
一人の女性が、男に数枚の紙を手渡す。
それをパラパラと軽く捲った男は、少女をもう一度見て。
「・・・・ふむ。まぁ。あまり無理をさせるな。
彼女はいずれ金の元となるのだから。壊れてしまっては意味がない」
一言言って、紙の束を女性へと返した。
「・・・ですが。あちら。はもう待てないと言っているのですが」
女性は、少し最後を言いづらそうに言うと。男は軽く笑いながら。
「・・・・・もしも。期日を過ぎたら武力行使・・・か。
だが、こんな危険な物を奪取しに来るほど馬鹿な連中じゃあるまい。
取り扱いを知っているのは、今の所私達だけなのだからな」
男は科学服のポッケからタバコの箱を取り出し。
一本だけ右手でつかみ取った後に、ライターで火をつけた。
そして口元に移動しながら、吸う。
「・・・・・今日はここまでにしておけ」
男は大人達にそう言って。機械に塗れていた部屋を後にした。
それに続いて数人の大人達も付いていく。
残ったのは少女や、機械のみ。
少女の開いた口から少し涎がただれる。
「・・・・ぁあ・・・・。あぁあ・・・・」
未だ続く激痛の後遺症に。少女は体の自由を取られている為。
口を塞いだりという行為が出来ないようだ。
だが。そんなに惨めでも悲惨な状況であっても。
少女の眼の奥底は。死んでいない。
時間を経てようやく自由を取り戻せてきた少女は。
少しずつ目を閉じながら。誰にも聞こえない程度に呟いた。
「・・・・・・・お兄ちゃん。私は。人を救うの・・・・」
被服から少し見えた、彼女の胸には半分に欠けた星型の首飾り。