code:10「戦闘」
『た・・・・・・い・・た・・・お・・・・・・たいち・・・。
・・・た。隊長。起きろ、起きるんだ。起きろ!』
(・・・・誰?・・・・誰ですか?・・・・すすの・・・きさん?)
隊長が一番最初に気づいたのは、何かの声がするのと。
綺麗に歪んでいる視界と。吐き気のする意識だった。
『早く起きろ!敵はもうすぐそこまで――』
煤野木が言い終える前に。腹部に重い衝撃。
「あ。ああぁあああああっ!!」
後方に吹き飛ばされた隊長は。全てを思い出した。
(・・・・そうだ。敵が来て。軍隊を使って戦ってたら。全部撃破された後。
記憶がない・・・。・・・・・私は敵の攻撃で気絶したのですね・・・・)
更に隊長を追撃するように追ってくる触手。
「く・・・私自身は戦えないのを熟知してる・・・!」
隊長は急いで脳内で変換する。
それらを迎撃するために、隊長は前方に重装備の大型ヘリを作り出した。
と、同時に吐血。
「自動操縦・・・」
血を吐き出しながら隊長は命令して、ヘリを前線へと繰り出す。
そしてその場からかなりの速度で後方へと下がった。
『カミカゼ・・・のせいか』
煤野木の、何ともいえない声が耳元から入って来る。
「・・・・大丈夫です。これぐらい何ともないですから」
隊長は未だ口元に爛れる血を、手で擦り落とす。
隊長の今現在の服は、いつもと変わらない軍服軍帽だが。
黒が白へと変わり、白が主体のまるで海軍のような服装になっていた。
しかしその服装はところどころが切り裂かれたように破れている。
そして隊長はそのまま後ろに下がりつつ、空中で静止した。
前ではヘリが生身でも、機械でも構造的に耐え切れないはずの空中戦を繰り広げている。
(・・・・まさか国一個分の軍隊でも力負けするなんて・・・・)
確かに。隊長は敵を軍隊一個単体。
いや、一国を滅ぼす程度の力を持っていると考えていたのだが。
それすらも甘かった。
(・・・・・・そして、私の人生も恐らくもうない)
隊長のそれは勘だったが。何より自分の身体の事だったので。
嫌でも分かる。
「煤野木さん。貴方は過去からやって来たのですよね?」
隊長は激しく息を吐き出しては吸ってを繰り返しながら。
少しずつ冷静になっていた。
『・・・・あぁ』
何だか、煤野木は少し言うのを躊躇いながら。しかし答える。
そして完全に呼吸が落ち着いてきた頃に。隊長は満面の笑顔になって。
「・・・・それなら。任せられますね」
(・・・・そして。揖宿さんの事も任せましたよ?)
くすり。とどこか裏のある顔付きになった直後。
前方から派手な爆発音。視界を遮る黒煙。
『ヘリが墜ちたぞ!』
煤野木の焦った声が聞こえると同時に、黒煙を掻き分けるように触手が向かってくる。
『隊長さん。一旦引け!』
煤野木の声が耳元に響くが、隊長は下がらず。
前へと突っ込んだ。
触手が身体を綺麗に串刺しにするように狙ってくるが、それらを回避する。
「・・・・・ふふふふ。ああはははははははあははははははは!」
狂気にも近い笑い声を上げながら、隊長は敵の方へと向かった。
『な、隊長自身は戦えないのだろう!?』
馬鹿な。と言いたげな煤野木だが。隊長は尚も迫る触手を回避する。
数本。更に近づくごとに数十。そして数百に増える触手。
しかし触手は隊長に掠りともしない。
「さすがに何度もやられては・・・慣れます」
ぶつぶつと独り言を高速で移動しながら呟く隊長。
敵までおよそ一キロもない距離まで近づいた辺りで。
触手の数は数千へと増える。
『STGじゃないんだぞ・・・・。なんだ。この数は・・・・』
馬鹿げた触手の数に煤野木は、もはや呆れる事すら出来なかった。
それらの。馬鹿げた触手が一斉に隊長へと襲い掛かる。
だが。隊長は掠りはするものの。結局は致命傷という傷は負わなかった。
そして敵との距離は零距離へ近づいた途端。
隊長は自らの軍服を左手で引きちぎるように破る。
隊長のジャケット部分には、大量の可塑性爆薬。
そしてそれらを起爆させる為の雷管が差し込まれていた。
「・・・・カミカゼ。っぽいですね」
隊長が嘲笑するように呟いた途端。
大量の触手が全方向から隊長を貫ぬく。
それらの一部が雷管を爆破させて、誘爆を誘い。
辺りは強烈な爆発音と、強烈な光が埋め尽くした。