code:7「残酷」
揖宿の発言に対して、覗いていた隊長は。
(・・・・ふふふふふ。あはははははは。あははははは!)
心の中で少しずつ笑っているのが分かった。
眼には冷たい炎が燃え。心は少しずつ冷徹に。
(・・・・もうバレちゃったんですね)
妖艶的に。口元に笑みを浮かべる隊長。
そしてまた煤野木達を角から覗き始めた。
『・・・・・嘘だと?』
信じられない。かという風な口調の煤野木。
しかし揖宿は端的に答えた。
『・・・・恐らくそうね。私達の信頼を得る簡単な方法というのもあるし。
第一、彼女は大佐の事を信頼して。隊長として生きているのでしょう?』
『・・・・確か。そう聞いている』
言いずらそうな煤野木に続けて、揖宿は特に支障なく答える。
『ここから先は推測だけれど。隊長になるのに邪魔なのは誰?
もしも大人達が先陣切って行動したら、隊長が隊長として機能しなくなる可能性もある。
男性達がもしも本当に混乱して統率を乱すとしたら。
・・・・・貴方はどうする?』
『・・・・・・・・・』
『・・・・あくまで推測だから。事実じゃないかもしれない。
だけど、隊長さんは一人の人物ではなく。一人の軍人なのよ。
・・・・・冷徹に。言われたらやる。・・・・人としての心は捨てる』
事実をゆっくりと告げる事に、煤野木の表情が険しくなっていく。
当たり前といえば当たり前だ。
そして、その表情を読み取った揖宿は。少し間を空けて。
『・・・・疑心暗鬼にさせる言葉を言って悪いと思ってるわ。
もう、この話は忘れていい。あくまで。の話なのだから』
話を強制的に終わらせた後。どこかへ立ち去ってしまった。
立ち残った煤野木は、暫く佇んだ後に。
『・・・・・どうすればいいっていうんだ』
悲しそうに。呟いた後に。揖宿と同じように去っていった。
そんな中一人取り残された隊長は。
「あ。ははははははははは!!」
笑いが止まらなかった。
その笑みは、歓喜からか恐怖からか狂乱からか。
隊長の瞳の奥底には揖宿と煤野木の姿。
(うふふふふ。あはははは。素晴らしい。素晴らしいですね。その考え方!)
腰にぶら下げている大型拳銃を取り出し、つい見詰めてしまう。
黒光りしながら、銃口は逆にドス黒い。
「・・・・戦いはあと少しで幕を開く」
そして持っている銃を腰に戻し。
隊長も同じく、その場を後にしながら笑った。
カツカツと靴と床が当たり生じる音が、廊下に響く。
次の戦いが。幕を開く。