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旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ロク-
24/66

code:6「表裏」

隊長は、背筋を伸ばしながら気持ちよく起きる。

しかし対照的に、隊長の脳内では。


(・・・・全部言ってしまったのですが。大丈夫でしょうか・・・)


そうなのだ。

佐伯や他にもいる少女や青年達は全て国に売られた。

という途方もない事実を突きつけられたので。


(一晩で整理が出来ていればいいのですが・・・)


若干煤野木の心配をしながら。ベッドから立ち上がる。

そして鏡の前へと立ち、隊長はパジャマからいつもの服へと着替えていく。

透き通った肌。女性らしくはないが全体的に引き締まっている。

しかしそれが逆に功を奏しているのか、細身が増して。より魅力的になっていた。

その身体に見合う妙に締まった黒服を着ていく。

汚れは特に無く、逆に光沢が見える程綺麗な軍服だった。

そして軍帽を被り、長い髪を茶色のリボンで束ねる。


「・・・・さて、行きましょうか」


独り言を呟いた隊長は、自身の部屋を後にした。

部屋を出たすぐの廊下はやはりどこか研究基地を想像させる。

かなり淡い青色の壁紙に。近未来的なただ、無意味に続いてく直線。


(・・・・・まぁ、私達の物じゃなかったのですから当然ですが)


隊長は廊下を適当に進んでいった後、ふとどこからか声が聞こえた。

音の大きさからして、かなり近くから。


(・・・・今のは、煤野木さん?)


ゆっくりと音源へと近づいていき、角から覗くようにして見れば。

揖宿と煤野木が向かい合って立っている。

そして。

大体の声が聞こえて来た。あくまで大体。だ。


『貴方は隊長さんを信じるのね』


こちらは揖宿。

なにやら煤野木と軽く言い合っているらしく。表情に少し感情が出ている。


『あぁ。そうだ』


そこで一息置いた後、揖宿は疲れたように溜息を尽いて。

静かに続きを言った。


『・・・・確かに貴方の言った隊長の話は間違ってはいない。

だけど、彼女は貴方に言っていない事がある』


(・・・・あら。もう気づいたんですね)


隊長はくすり。と笑いながら煤野木達を見詰める。

それに対して煤野木は過剰に反応した。


『言っていない事?』


揖宿は(つづ)るように答えていく。


『全てが終わった次の日。カミカゼに乗るはずだった男性達が。

混乱や恐怖によって裏切ったのよ。

当然ここにいた大人達は皆射殺されたわ。管理統制するはずだった人々が』


揖宿の言葉に、煤野木は苦々しく簡潔に述べた。


『・・・・混乱による発狂か』

『そうね。自分の国が滅んだなんて信じられる訳がない。

ましてや、これから自分達は無意味な死を遂げるのだと思うとね。

気が気でなかったんでしょう』


『・・・・・・』


黙る煤野木だが、揖宿は続けていく。


『だけど隊長さんは、その日偶然起きていて。

一人で男性達を殺しつくしたのよ』

『一人で・・・・』


多人数対一でどちらが優勢なのかは誰でもわかる。

しかし、隊長は勝った。


『・・・・・その時の隊長さんは酷かった。酷く焦燥していて。

おまけに肩口から血が大量に流れていたわ』


煤野木は考えるのも辛そうに、答えた。


『・・・・・仲間。を殺したんだからな』


そしてまた長い沈黙。煤野木が一方的に黙っているだけなのだが。

揖宿も落ち着きを取り戻したらしく。あまり表情に変化はない。

次の揖宿の言葉。




『・・・・この出来事だけど、恐らく隊長は嘘を付いている』


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