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旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ロク-
23/66

code:5「軍人」

「・・・・・おとーさん?」


まだ小さな。それも幼稚園生ぐらいの女の子が。

若い大人の男性に対して疑問を向けていた。


「・・・・静香」


重々しい声を口から出す男。

男の服装はどこかの軍隊の幹部を思わせるような黒色の服。

胸には金色からさまざまな勲章が垂れ下がっており。

白帽にも同じような物が付いている。

実を言うなら、この二人は親子で。しかも男は一つの戦争を終えたばかりなので。

会うのは1年程ぶりだったのだが。

男が次に移した行動は。

自身の娘を殴る事だった。

抱きしめる事も無く、喜びを分かち合う訳でもなく。

顔を一発殴った。

「うっ」という声と共に後ろに地面に伏せる少女。

そして顔を上げたその表情は。何故。という疑問が浮かび上がっている。

次に男は、娘に対して非常な怒りを向けながら。


「私の事は大佐と呼びなさいと言ったはずだ」


冷たい言葉を送った。

少女は、耐え切れずその場で泣いてしまいそうになったが。


「泣くな。とも言ったはずだが」


男の強烈な一言に。少女はびくりと驚いた後に。

必死で涙が出るのを堪える。


「・・・・・お前は俺の跡を継ぐ子だ」


それだけ男は言った後に、その場所を後にしてしまった。


「ごめんなさい。ごめんなさい」


視界が少し歪みながらも、少女は間違った事を言ってしまったのを非常に後悔する。


(・・・・私が、我慢出来ていれば。私が。軍人さんらしくなかったから。

おとーさんは私に振り向いてくれないんだ・・・)


ぐじゅぐじゅになっている鼻水を(すす)り、少女はゆっくりと立ち上がる。

それが隊長の記憶にある鮮明な最古の記憶だ。

毎日が毎日が。勉強と教育と練習。

生まれた時から毎日がそれで。隊長は大佐と会う事はなかった。

大佐は厳格で、一度も優しくしてくれた事なんてない。

大佐は現在での軍人としてトップの存在だ。頭も良く。

何でも出来たから当然といえば当然なのだが。

昔はただの一平卒だったそうだが、今では才能を開花させている。

そして隊長は。大佐の跡継ぎとして教育されてきた。

社交界からマナー。そして勉学から運動。銃撃戦から接近戦まで。

ありとあらゆる事を叩き込まれた。

毎日がそれで。特に対して変わる事が無く続いていたが。

ある日。高校生の半ばを迎えた頃。大佐が珍しくやって来た。


「お前に任務だ」


短く端的に告げた大佐に、隊長は特に疑問を抱かず了承する。

そして、カミカゼのありとあらゆる事。基地の事。を告げられた。

当初は驚いたが、隊長はその奇妙な任務を受け入れる。

だが、隊長は幾分か引っかかった部分が合ったので。

詳しくそこだけ資料を見せてもらう。

白銀の少女がカミカゼ。と基地の提供。

提供した白銀の少女は口調に難があるらしい。というどうでもいい情報まで。

そして、その基地に住む事となった少女や青年達の状況。

資料に目を通しながら、隊長は呟いた。


「・・・・彼らは。売られたのですね」


そこで少し大佐の表情に変化があったが。すぐさま元に戻る。


「そして、彼らは地球の為に死ね。と。

私はこの人達をまとめる監視役と指令役。とでも言った所ですね」


次々に要点を告げていく隊長に。大佐は唐突に。


「そこまでだ」


遮った。

そして大佐は資料を隊長から取り、またその場所を後にする。

大佐の後姿をみながら、隊長はふと笑い。


「いいです。受け入れますから。つまり部隊長。という役職辺りかな・・・」


手入れしてある制服に手を掛け、隊長もその場所を出て行った。




そしてもう一つ印象に残っている。私達以外が滅びる日。

モニター越しで、隊長は大佐が軍を率いて。黒色の敵に立ち向かっている。


(カミカゼ無しでも倒せると判断したのですか・・・)


隊長は流れていく映像を見つめていた。

黒色の敵に対して、様々な射撃やミサイル。

一個対の敵にしては、過剰な暴力ともいえたが。

その敵は一個体程度で収まる力ではなかった。

玩具を壊すように、周りにいる戦闘機や空母が破壊されていく。

そして、紋章みたいな光る物が正面に出て数秒後。

レーザーのような黄色の光線が画面を覆いつくし、大佐を含めた。

地球最後の軍隊全てを壊した。

次に始まったのは細かい触手による人畜殺害(ぎゃくさつ)だ。

逃げ惑う人を的確に刺し殺し、隠れている人や狭い路地にいる人も容赦なく殺す。

街中が触手に埋め尽くされているような光景。

そして、ある程度終わった後に。

黒色の敵は倒されていた。

そのような感じの記憶。それが繰り返されて。

今現在に至っていた。


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