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旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ロク-
20/66

code:2「隊長」

あの後、朝食に煤野木は来たものの。

特に何も言わないまま、無言で食事が始まった。

食事自体は基地の設備で調達から調理までやってくれるので。

取ってくるだけで実質何かをする訳ではない。

そしてその場所を後にするように、隊長は銃を持って射撃演習場(トレーニング)に行っていた。


「・・・・・・」


無言のまま、銃を前に構える。

いつもは着けるヘッドホンも、今日は着けなかった。


「・・・・・・・・」


その部屋だけは機械音以外は、特に音はしない。


(・・・・・私は、いつも落ち着いたりしたい時は練習してた・・・)


ウィイイイン。と独特の機械音が鳴り響き、人型の模型が出てくる。

冷徹に。狙いを外すことなく。発砲した。


(・・・・・私は、煤野木さんが困っていても。何も出来る事は無い)


10点。10点。10点。10点。

隊長は的確に胴の中心部分を狙い続ける。

この光景は、隊長には見覚えがあった。

大量に倒れる人々。否。大量に倒した人達。

その上に立ち尽くす自分。


「・・・・・・静香さん。

いいえ。隊長さんと、呼べばいいのかしら?」


隊長の背後から声が聞こえた。

いつの間にか。後ろの壁に背もたれする青年が一人。

揖宿と呼ばれる青年だ。

何故か赤と白の巫女服を着ているツインテールの女。

隊長は後ろに目を配らすこと無く、銃を撃ち続けながら。


「その名前を呼ばれたのは久しぶりです。それと。

・・・・人を詮索するのはやめて欲しいです」


軽く威嚇するようなその口調だが。揖宿は表情を変えない。

揖宿は、黒く透き通った髪を指で梳いた後に。


「それについては謝るわ」


非礼を詫びる様に、直接的に謝った。

しかし、隊長も揖宿と同じように特に表情は変えない。

だが。次の揖宿の言葉。


「・・・・それと、隊長さん。貴方はいつまで隊長でいるつもり?」


一瞬だけ、隊長の顔に変化があった。

しかしあくまで一瞬だけで、今度は隊長の口元に笑みが広がる。


「いつまで。の質問はおかしいですよ?」


そう隊長は言いながら、銃のリロードを行い。

タンタンタン。と作業の如く隊長は事務的に標的を撃っていく。

10点。10点。10点。10点。一切のミスをしない。

その腕は、軍人として素晴らしい物だった。


「・・・・・貴方は。隊長として生きるのね」


悲しそうな目をしながら、揖宿は隊長を見詰める。

瞳には、まだ間に合う。とでも言いたげな。

だが。隊長が出した答えは。


「はい」


否定はしなかった。

その答えに、揖宿は「そう」とだけ答えた後に。

静かに部屋を出て行った。

揖宿が部屋を出て行った後も、一人射撃練習を続ける。


(・・・・私は。隊長。もう決めた事ですから)


マガジンを取り替えつつ、ふと銃を見詰めた。


(・・・・私は銃を手にしているから。軍人として生きる)


隊長は決意を改めて確認し、再び銃を構えて引き金を引く瞬間に。


「ありがとう」


その一言だけ言った後。

珍しく銃弾を標的から外してしまった。

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