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旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ゼロ-
2/66

code:1「補習」

「・・・・・まただ」


青年は嫌々しながら黒板を見つめる。

今日は八月一日。

夏休みの真っ只中であるはずが、教室に青年はいた。

ぽたぽたと自然に青年の顔を汗が流れ落ち、その教室は蒸し暑い。

青年は椅子に座りながら、机の上にバラバラに置かれているプリントを一瞥(いちべつ)する。

原因は補習。

青年は人並み以上に頭は良い。だが補習を受けている。

青年(いわ)く「意味が分からない」。

決して努力して補習している訳ではない。

わざと、努力していないのだ。

努力をすれば確実に天才のレベルなのだが、彼は努力しない。


「おい、煤野木(すすのき)。聞いているのか?」


かつかつ。と白いチョークが黒色の黒板をリズムよく叩く。

チョークを持っているのは少し肥満気味の一人の教師。

青年に対して冷ややかな目線を送っていた。


「聞いていますよ」


煤野木と呼ばれた青年は窓から外を眺めつつ、心ここに在らず。と言った返事を出す。

そんな煤野木の様子を見て教師は顔を(ゆが)めた後に。


「ちっ・・・」


明らかに教師の舌打ちが聞こえたが、煤野木は意に返さない。

相手をするのも面倒だし、した後も面倒だからだ。

ぼんやりとしながら、煤野木は考える。


(生きている意味って何だろうな・・・・)


煤野木は思わず考えてしまう。

煤野木がどれだけ頭が良かろうと、運動が出来ようと。

それが生きている事に意味があるのだろうか。

煤野木には、よく分からない。


(きっと、「意味がない」と答える奴もいるんだろうな)


しかしそれはそれで「矛盾」していると、煤野木は思う。


(意味がないのなら、何で生きているんだ?って聞かれて。

ちゃんとした答えを返せる奴がいるんだろうか・・・)


そこで、煤野木はすぐさま否定する。


(そもそも、そんな奴に聞いても真っ当な答えが聞ける訳が無いか・・・)


煤野木には分からない。

答えすらないのかもしれない。答えがあるかもしれない。

無限ループに近かった。


そんな風に、煤野木が感情に(ふけ)っていると。

途中でふと気づく。

いつの間にか、煤野木自身の唇や瞳がカサカサになっていた。



(・・・・この暑さだしな・・・)



そんなどうでもいい事ばかりを考え。

結局煤野木は最後まで話を真面目に聞く事はなかった。

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