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旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ナナ-
15/66

code:11「戦場」

(・・・・・ついにやってきたね。敵が)


深呼吸しながらカミカゼで待機する佐伯。

透明なガラスケースで部屋から遮られているそれは。

外から見れば、遺産物を入れる箱のようだと。佐伯は思った事がある。


「X.....Y.....場所は、北海道寄りの太平洋だね」


脳にインプットしつついつでもいける準備をする佐伯。


(これから始まるのは・・・・孤独な戦い。私一人だけの戦い)


やはり心臓は相変わらず高鳴りしており、中々落ち着かない。

そんな時は。


(あの首飾り・・・)


胸ポケットにいつも入れてある首飾りを取り出し、昔を思い出す。


(色々な事があったなぁ・・・)


ふと感傷に浸って、時間を忘れそうになってしまったので。

もう一度深呼吸をして覚悟を決めた。

そして、指定座標の。敵より少し離れた場所へと瞬間移動。


『はーい。佐伯ちゃん。声は聞こえてるー?』


耳から聞こえるのは隊長の声。

こくり。と頷く佐伯。


『あ、はい。煤野木さんは知りませんね。

実はこっちからはモニタリングと指示は出来るんですけど。

むこうからは一切こっちに関わる事は出来ないんです』


声からして、どのような様子なのかが分かる佐伯は。

思わず笑ってしまいそうになった。


(変わらないなぁ)


そして、佐伯より少し先に見える黒い敵。

端から見れば黒い色のスライムにでも見えそうなその敵は。

一体だけで国を殺せる化け物だった。

その大きさはまるで一個の大陸を思わせそうで、海に浮かんでいるのが不思議だった。


『あれが・・・佐伯の言っていた敵・・・』


煤野木の喉を鳴らす音が聞こえる。


(いや・・・・大きすぎて海底まで足が届いてるのかな?)


どうでもいい事を考えていた佐伯の思考は、急に途切れる。

何故なら、敵が触手らしき物をかなりの速度でこちらに飛ばしてきたからだ。


「・・・・!舐めて欲しくないよ!」


佐伯は前かがみになり、空中を大きく蹴り飛ばす。

一瞬にして避けつつ数十キロという距離を詰めて、至近距離で手に持つ武器で殴る。

使っている武器は俗に言うガラガラだ。

軽快な音と共に、黒色の巨体は大きくめり込む。


(どうかな・・・・!?)


しかし、直後に大きく後ろへと吹き飛ばされた。

腹部に当たっているのは先程の触手で、突如前から出現したのだ。


「い・・・・ああああ゛あ゛!」


先程の数十キロの比ではない距離を飛ばされ、北海道にある市街地まで叩きつけられる。


『佐伯!』


煤野木の叫ぶ声が聞こえた。

建物にめり込まされながら、なんとか片腕に力を入れながら立ち上がろうとする佐伯。

すると、既に敵は海辺近くまで移動している。


(早い・・・!)


それを見た佐伯は、ふと笑い出し。


「ふふ・・・・・いいよ。私も、本気でいくからさ」


身体を空中に浮かせ、両手を大きく開く。

突如、ほぼ佐伯の周りにある建物や土地は一瞬にして。

遊園地へと変わっている。

そして佐伯の両手には突如巨大なガラガラが二つ。

彼女の後ろには、それぞれオモチャが飛んでいる。


「・・・遊ぶよ」


佐伯は大きく息を吐き出した後に、距離を詰める。

黒い敵が大きな紋章を前に突き出し、光が集まっていく。


「遅いよ」


佐伯は右手を大きく前へ出し、それと同時に一斉に周辺に浮かぶオモチャが勢いよく前へ飛ぶ。

その結果敵は後方に吹き飛ばされ、更には爆発音と煙が周辺を包む。


「まだまだぁ!」


佐伯は煙の立つ中へ突っ込んで行き、左手を大きく空中へと掲げ。

振り下ろす。

直後、敵の身体が地面へと減り込まされた上に。


「終わってない!」


佐伯に、もう片方の腕を振り下された。

地面が咆哮するような軋む音。と共に大規模な揺れ。


「はぁ・・・はぁ・・・」


息切れしながら、佐伯は頬を右腕で擦る。


『終わったか・・・?』


煤野木が安堵するような声が聞こえたが、

佐伯は同時に距離を取りつつ、再び戦う準備をした。


(まだ・・・全然効いてない・・・)


佐伯の予想通り、敵は多少はダメージを受けている動作はするものの。

致命傷までには至っていなかった。


『・・・・嘘だ』


煤野木の信じられないような。声を出す。


『あれが普通なんです』


隊長の至極冷静な声も聞こえた。


「・・・遊園地。使いたくなかったけど使うしかないなぁ」


佐伯は、諦めたような顔をしながら構える。


「次は夢の世界で遊ぼうね」


佐伯は、親が子に夢を持たせるような。そんな優しい声で言った。

突如後ろに待機してある、遊園地が戦闘には向かないテーマソングを流し始める。


「さて、お待ちかねの皆さん。大好きなショーの始まりですよ!」


佐伯は急にアナウンスのような機械的な喋りをした後に。

遊園地の中へと消えていく。


『・・・何が始まるんだ?』


煤野木の疑問の声とは対照的に。隊長は。


『ふ。ふふふふふ』


急に笑い出していた。

そして敵は佐伯に誘われるように、遊園地へと近づいて行く。

直後。


「まず最初に始まるのはジェットコースター!」


嬉しそうな佐伯の後ろにそびえるのは、巨大なジェットコースター。


「死にながら楽しんでいいよ」


口元が歪みながら、佐伯は敵を指差す。

そしてジェットコースターが動き始めたかと思うと。

敵を大きく弾き飛ばした後、空中で円周しながら何度も何度も弾き飛ばす。


「次はティーカップ!」


カップ状の乗り物が敵に直接突っ込んで行き、壊れた。

数秒たってそれらはまた元に戻り、直ぐに突っ込んでは壊れていく。


「でもやっぱり最後はメリーゴランド!」


佐伯が叫ぶと、敵の垂直線上に巨大なメリーゴーランドが現れる。


「さよなら」


佐伯が平面的にそう呟くと、メリーゴーランドは空中でひっくり返り。

かなりの勢いで真下へ落ちていって爆発した。

黒色の煙と共に、佐伯は勝利を確信する。


(終わった・・・・)


『・・・・何だか、拍子抜けしてる気がしなくもない』

『気のせいですね』


煤野木と隊長の、遠まわしに勝利を祝う声が聞こえた。

佐伯もそれで余計に肩の力が抜け、脱力するのが分かる。






しかし安堵も束の間。


『・・・・いや、待って!佐伯ちゃん!』


緊迫した隊長の声。


『そいつはまだ生きてる!』

「え?」


佐伯の気の抜けた一声と同時に。


佐伯は触手によって大きくまた後ろへ突き飛ばされた。


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