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旧カミカゼ。  作者: 笹倉亜里沙
-ナナ-
14/66

code:10「決意」

佐伯と煤野木は、花畑で並んで座っている中。佐伯が喋る。


「・・・・これね。私のお守りなんだ」


佐伯は胸ポケットから何かを取り出した。

それを自らの手のひらに置き、煤野木に見せる。

星が半分欠けた状態の。半分だけの星。


「あのお兄さんから、最後に会った時に貰ったんだ・・・」


きらきらと光る首飾りを嬉しそうに見つめる佐伯。

しかし少し経った後、佐伯は煤野木を見つめて。


「・・・・煤野木は、この世界をどう思う?」


真顔で煤野木に聞いた。

それに対して、煤野木は悩んだ末に出した答えは。


「・・・悲しい。世界だと思うんだが」

「そう」


佐伯は悲しそうな顔をしながら、どこか遠くを見つめた。


「私はね。この世界はとっても綺麗だと思うんだ」


それに対して煤野木は顔を顰めながら、佐伯を見つめる。


「綺麗?」

「うん」


佐伯の頬に、何か光るものが流れていた。

煤野木は黙って佐伯を見詰めたまま。

佐伯はまた喋り始める。


「・・・・・本当はこの世界はとっても綺麗なんだけど。

私達が汚れたり、見失ったりしてるから。誰にも気づいてもらえない。

たとえどんなにそれが価値のある物だろうと」


佐伯は空に浮かび上がる月を眺める。

それに浮かび上がるのは誰なのか。それとも、何なのか。


「ついでに言うと、私はあの後。助かったんだ。

そして、赤ちゃんを身篭ってる事が分かったの。

あの子は父親が誰かも分からないけれど。だからといってあの子は悪くない。

他の人から見れば、不幸だったのかもしれないけれど、私はとっても幸せだよ。

お兄さんにも会えたし、あの子を授かれたし。

・・・・何より隊長達にも出会えた」


そして、佐伯は自身の持つ首飾りへと視線を移した後。

煤野木の顔を正面から見詰める。


「私は戦う。この美しい世界を守る為に。それが不幸だとしても。

私にとってのそれは、幸せだから」


そこで佐伯は立ち上がり、無邪気に笑っていた。

何者にも毒されない、何者にも汚されない、純粋な笑み。

煤野木には、それが眩し過ぎた。


「・・・・俺は今も生きる意味が分からない。考えれば考えるほど分からない。

生きていても、無意味じゃないか?理由なんて物があるのか?と考えてしまう。

世界には不幸のまま死んで行く人もいれば、幸せのまま死んでしまう人もいる。

分からないんだ・・・・何もかもが」


そして煤野木は言い終えた後に、気づいてしまう。

言ってはならない言葉を言ってしまった事に。

この場でもっとも慎むべき言葉。

けれども佐伯は笑顔のまま。煤野木に微笑むように答えた。


「・・・・私の、赤ちゃんは確かに不幸のまま死んじゃったかもしれない。

それに意味がないって言われると。本人にとって確かにないのかもしれない。

だけど、私はだからこそこの星を守りたい。彼女が生まれるべきはずだったこの世界を。

自己満足かもしれないけれど。・・・・私は、守りたいんだ」


佐伯の瞳には、決意とも取れる炎が宿っている。


「これは、前々から決断してた事なんだけど。煤野木に改めて伝えたかった・・・からね」


ふらりくらりと横に揺れる花達。そして月夜に照らされる少女。



そして、彼女は、戦う。

大切な物を失っても、尚。大切な物の為に。

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