code:Prologue
ぽつり。ぽつりと雨が降り続ける。
止んで欲しいなと、願っても止まない。
むしろ、病んでるかと思えるその雨は。
冷たく肩を濡らし続ける。
「・・・・止まないな」
空を見上げながら。一人の少年が呟いた。
少年の髪は、黒く塗りつぶされている。
まるで、少年そのものの心境を表しているかのように。
黒く、所々雨に濡れてしまって冷たい。
「・・・・・」
髪と同じように、服までも黒かった。
ただし、胸元から出る白いカッターシャツだけが。
なんとも目立った雰囲気を醸し出している。
「・・・・・明日から、どうしようか」
少年は、後ろを見た。
後ろのほうでは、がやがやと黒色の大人達が騒いでいる。
ただし、皆少年と違って傘を持っていた。
少年は少しばかり溜息を尽いて。
前へと歩き出す。
もはや、雨に濡れすぎて。
少年には涙を流しているのか。それとも単に雨なのか。
分からなくなっていた。
実は少年は、まだ先程の場所に立っていなければならないのだが。
何かしていなければ、少年は思い出しそうになってしまう。
数十分前までは「当たり前」だと思っていた事が。
もう無いと。
実感してしまうと共に。
認めてしまいそうで。
少年には怖かった。
「・・・・・っ」
びちゃびちゃと濡れていく身体。
空は嫌なほど曇っており、昼間だというのに暗い。
灰色のコンクリートの道がやけに長いようにも。思える。
「・・・どうして、俺達だったんだ」
少年は、思わず洩らしてしまった。
いや、洩らさずにはいられない。
「・・・・どうしてだよ。どうして。・・・・」
俯きながら立ち止まって、拳を強く握り締める。
誰かのせいにしないと。少年の決して強くない心は。
折れそうだったから。
少年は、擦り付けなければ。
苦しかった。
けれど、同時に擦り付ければ付けるほど。
虚しくなっていくのを。
少年には分かる。
そんな事ばかりを少年が考えていると、不意に。
「・・・・・貴方は、煤野木さんですか?」
濁った少年の心にはあまりにも澄んだ。心地の良い。
そんな声が少年の隣から聞こえた。