1.鬱積する日々のモノローグ
何事もなく過ぎていく日常。
そのなかで埋没されていくのは、個性だけではない。
個人と言うものも、全て埋没していく。
目立つものは、すなわち。
埋没していかなかっただけである。
蛍もまた、そんな日常の中に、埋没して行っている一人の人間。
ただ、彼は、それをよしとは思ってはいなかった。
けれども、この日常に唾を吐いたところで、彼には打破するためのなにものもなく。
ただ、埋没していくに任せる以外の手立てはなかったのだ。
─── 何をやっているんだろう。
何かをしたいわけではないけれど。
ただ、自分自身が誇れるものになりたい。
自分自身に嘘をつかないものになりたい。
自分と言うものをただ、失わずにいたい。
願うことは出来るけれど。
叶う事はない。
「つまんねーな」
日常も、自分自身も。
何かの特別になりたい。
誰かの特別になりたい。
ただ、自分であるという、ささやかな幸せを噛締めたい。
そう望むだけの毎日。
「つまんねー」
少なくとも、その一端を自分が担っているということを分かっている。
分かってはいるけれど。
日常を壊すほどの勇気もバイタリティーもなく。
ただ、不満を口にのせるだけ。
こんなはずじゃなかった。
そんな風に思う大人になっていくんだろう。
こんなはずじゃなかった。
自分にはもっと可能性があったはずだ。
はずでは叶う訳もない。
わかっている。
自分自身の可能性を信じていないのは、まず、自分だということ。
わかった上で。
嘆いてみせる。
ずるいと思う。
けれど、それ以外の手立てもなく。
日常に反逆する勇気のないままに。