それは遠い臙脂色
「毎回思うんだけどさー」
「何よ」
「なんで紫苑にはこんなに味方が多いんだろうね~」
「しかも紫苑が、全く力を使っていないっていうのに、だよー」
「人柄、とかじゃない?優しいんだし」
「そっかー」
「でもさ~」
「「なんで俺らの隣にあんたがいるわけー?美智~」」
薄暗いが広いバーの中、さまざまな人間がグループを作って談笑をしている。そのなかで『氷の刃』はバーの端にいた。
「ここがあたしの定位置だもの、しかたないでしょう。……ランソンいただける?」
「駄目。未成年がお酒を飲むもんじゃありません」
「けち。もう、ミルクティーちょうだい」
「一気に子供っぽくなるのね」
「オレンジジュースの智佐子に言われたくないわ。それに、言うなら隼にも言ってよ。もう手ェつけてるわよ」
「付き合いの一嘗め。美智は本気で飲もうとしてるだろ」
ふてくされたようにミルクティーに手をつける美智。
「いいわよ。家に帰ってから飲むー。まったく」
立ち上がる。腰に手を当てる。
「ここで闘争おこしたら、二つの組織もろとも潰すわよ。その条件は、飲むわね」
「りょーかいっと」
「随分軽いのね」
だってねー、とR。
「「俺らは基本的に『先に手を出すことはしない』方針だからさー。AAAみたく攻撃的じゃないから~。恨むならー、AAAを恨めってね~」」
どうでもよさそうに小さくため息をつき、美智は再び席についた。
「あいあい、分かった。……では、ごゆるりと」
そう言って、綺麗な右手を向けた先には。
「はぁーい♪わ~!紫苑だよっ、紫苑!」
そこにいたのは。
「なんで、お前がここにいんの」
「ねー、せっかくの再会なんだよ?あの時みたく友好的に喋ろうよー」
「……こいつに会うなんてな」
「「紫苑ー?リル~?こいつ誰?」」
「ごめん、私も分からないんだけど」
「……あたしもさっぱりです」
はじめてこいつを見た人には、こいつは少女という印象を持つだろう。そして、少年と分かったとき、彼のことを好青年と思うだろう。その本性を知らずに。
もう会わないと思っていた。
つーか会いたくなかった。
最悪の存在。
「はははーん、僕のこと忘れた?ほらー、僕だよ僕、」
「オレオレ詐欺に興味はない」
「もー、茶化しちゃって。ぼーく。AAAのボスはこの、アラン・マクスウェル」
アラン・マクスウェル。イギリス留学中に出会った……、なんと言えばいいのか……
「馬鹿がいる……」
「つーかさー、もうちょっと面白みがほしーよねー。例えばー、俺らの仲間がボスだったりさー」
「そ~そ~、なんかいちいち新キャラ登場しすぎだと思うよ~」
「しかたないじゃない。尺の関係よ、きっと」
やめーい!という怒声が聞こえた気がしたが、気にしないことにする。
「ひさしぶるるー、しおーん、りるー」
可愛らしい顔で、アランは不可思議な日本語をはっした。