表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空を染めて  作者: N.T
それは、どんな、何色?
37/47

それは倦んだ闇色

 暗いです。ひたすら暗いです。――でも、それもあるから氷の刃なんだと思っています。人間綺麗なばかりじゃないことを表したかったので、暗いです。

 我慢してください。作者がこんなこと、言うべきじゃないですけど。

「しおーん、ちょっと」

「何?リル」

「お前の階級(ランク)、上げるから」

「は?」

「今日から最上級。あーゆーおーけー?」

「ぜんっぜん。つうかリル、仮にもイギリス人だろ。母国語くらいちゃんと喋れ」

 ――まただ。

 俺と目を合わせてくれない。

「なんとなくー。ってのは嘘で」

 いったん言葉を切り、無表情になるリル。

「お前が危険だと、俺が認識したからだよ、紫苑」

「なんで」

「今、どんな目をしてお前は俺を見てると思う?」


「憎悪。すべてのものを拒絶し、排除する。そんな目だ。きっとお前は、隙さえあれば俺を誘惑して、俺を殺すぜ?」


「え?何もいえないだろ。だって本当のことだもんな」

「それは」

「本当、だろ。俺らまで殺すつもりで、お前は突っ走ろうとしてる。はっきり言って、このままじゃお前壊れるぞ。精神的に。分かってんのか」

「そんなこと」

「ある。――うわ、すっごい殺気。主に刃向かう気か?俺に買われてる傾城のくせに」

「…………おい」

「おお、こわ。そんなに傾城って呼ばれるのが嫌か。そうかそうか。自分の血が嫌いなんだ。自分を嫌悪する自分が嫌いなんだ。自分が真っ黒だと、理解している自分が嫌い。エゴの塊でしかない、そんな自分が」

「うるさい」

「うるさかったら?どうする、俺を殺すか?お前ならできるだろうなあ。俺なんてひとひねりか。5年前のミラみたい」

「うるさい!」

「ほら。俺のペースに流された。今のお前に戦うのなんて無理だ」

「……はは、下手に人前で口論すべきじゃないよね、僕たち」

「え?」

「ほら、周りの人たちが――所長だって僕らの気に呑まれてる。ほんと、僕らって厄介だね」

 ああ。

 形勢逆転だ。

「何が」

「どんな言葉も人を畏れさせる。仲良くしたいと思っても、君は人から畏怖される存在なんだ。そんな中で、一人だけの理解者を持った」

「やめろ」

「それが僕なんでしょう?ばっかみたい。僕は傾城なのにね。人の望んだとおりになる、傾城なのに」

「あ」

「君が散々言ってる傾城の力に、初めから君はほだされてるわけだ。どうりで、先代が死んでから弱体化の一途をたどってるわけだ。君みたいな奴が頭首なんじゃね」

「うるせえ」

「ほら。立場変わったよ?君は僕を侮りすぎてる」

「お前も、俺を侮りすぎたな」

「は?」

 は?

「実際は違うだろう?お前の先代である蒼月と赤月が死んでから、この組織は弱体化を始めたんだ。お前の力が強すぎるからと、俺らが押さえつけるのに必死だったからな」

 おい、リル、少し言い過ぎだって。

 もう止めとけよ、おい!

「……」

「つまり、お前が初めからマインドコントロールを身に着けていればよかっただけの話だったんだ。なのに、小さいお前は心を開かずにいるから、ぐずぐずと時間がかかって。あのな、はっきり言って」

 止めろって――

「あっそ。分かった。よおく分かった――」

「二人とも、もうやめて――」

 所長がやっと二人を止めにかかる。

 遅い。

「そうっすよ、なー?紫苑も、落ち着けよー」

 陸も、遅い。

「リル、紫苑は少し疲れてるみたいなんだ~。このごろろくに休めてなくて、だから~、少しいらいらしてるだけなんだ」

 涼、も。

 でも、たぶん普段なら二人を止められるであろう俺の言葉は、今日は届かない。特に、紫苑には。

「僕は――」

「お前は――」

「「邪魔者」」

「なんだろ」

「なんだよ」


 ああ、言ってしまった。


 はっと正気に戻ったリルが慌てふためく。心にもないことを言ったのだ、当たり前だろう。

 言わせた原因であるやつは、どこでもないところを見ている。

「ほら、僕の勝ちだ。……リルの本心じゃないことくらい分かってる。僕が植えつけたんだから」

「紫苑」

「本当に、ごめん。僕なんかのエゴのために、僕はみんなを傷つける」

「…………」

「公園行ってくるね。すこし頭冷ましたいから」

 そうやって去ろうとする背中を、俺たちは追えない。


「先輩は、邪魔者じゃないですよ」


 そう思った。

 でも、そういえば、こっちにはこの子がいたんだっけ。

 立てられたフラグを全て蹴倒すことすらできてしまう、女の子。

「先輩は、大事な家族ですもん」

 綱手ゐつ。ただいま15歳。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ