それは小さな浅黄色
未成年の飲酒を許容する描写がありますが、そんな考えは決してありません。僕は一切、一滴も酒が飲めませんので。みなさんも、二十歳まで、駄目ですよ、絶対に。二十歳になっても僕は飲まない気がしますけど(笑)。
「ねえ、お酒、飲みすぎよ?これ以上飲んだら潰れちゃうわ」
「いいんだぁ、紫苑、分かってるんだぞ、何がほしいんだよぉ。酔ってる間なら何でも教えてやるぜぇ?」
「あたし、お酒臭い人嫌い」
少し純な素振りを見せれば。くる、な。
「はっ、前は自分も飲んでたじゃねえかぁ、随分な嘘つきだな、おいぃ。また男を誘うのか?」
耳元で囁かれる。下品な笑いが鼓膜に響く。
「男の傾城のくせに」
笑い返す。あくまでも上品に。
「あら、それを言ってもいいのかしら?死ぬわよ?」
「……分かった、負けたよ。俺の負けだ。はいはい、言います。酔ったふりもやめる。だから、すまん、――ないでくれ」
「それでいいのよ」
純粋に微笑む。飴と鞭だ。分かっていてこの男は乗ってくるのだから、本当に、なんと言うべきか。
「あなたってほんとにばか」
「分かってるよ」
心から笑えてくる。
「――――ねえ」
そ、と唇を重ねる。男となんてとは思うが――おそらく相手もそう思っているんだろう――きっと一番いいご褒美だ。今の僕は、キャバクラ嬢だし。
「ふふ、ご褒美ってことで。ね?ちょっとこっち来ましょう?」
「ちょ、やめて、くださいよぉ」
「おい、quint。いつ酒飲んだんだよ。ったく、馬鹿か、お前」
「ふへー?」
「『ふへー?』じゃねえ。酒弱いくせに飲みやがって。未成年だろうが」
「紫苑だってー、弱いじゃないですかー」
重い。健康的に重い。
「酒には強いんだよ、僕。駄目なのはあれだ、ビールの中に入れられた薬のせい。死なない程度に加減して入れてあった。今でも思い出すとむかむかするね。というか、あのビール、元から僕がちびちび飲んでたし」
未成年なのに、と先生が後ろから咎める声は無視しよう。
「ほふー。先輩は、ずるいですねー」
「何がだよ。あと紫苑だ」
「ちょっと、なんでそんなに機嫌悪いのよ」
「先生には分かりませんよ」
誰もわからないと思う。独りよがりなんかじゃなく、客観的に見ても、ほんとうに。余命一ヶ月の、僕と同い年の少年くらいなら、わかってくれるかもしれないが。
「ずるいんですよ、先輩は」
「何が」
「だって――」
だって?
すー、すー
「落ちやがった……」
「いわゆる寝オチ」
「ベタすぎて調子狂うよ……」
「なかなか見ないわね」
「いつもおかしなフラグしか立たなかったのに、ゐつの手にかかると何でもベタになるんだから、まさに魔法ですよね」
「あ、隼に戻ってる?」
「もう紫苑になっている気も失せましたよ――」
僕らは、家路に着いた。
帰ったのは夜明けごろ。
ソファに眠ってしまったゐつだけ寝かせ、起きてきた他のメンバーに情報を伝える。
「今回は厄介そうだよ。表にまで介入しそうだ」
僕のこの一言に、空気がぐっと冷え込む。
「しかも、世界中に展開してる、イギリスに本社が置かれている組織にね」
「名前はー?」
「AAA製薬」
AAA製薬――決して某音楽グループではない――AAAとは何の略なのか、実は社員すらもよく知らない、しかし世界中に広く大量に分布している製薬会社だ。
昔、この会社はこんな噂が流れたこともあった。
『AAAの略は、殺し屋の起てた協会=an assassin association』からきていると。――なんとネーミングセンスの欠片もない名前だと思ったことがある。
その噂は、本当なのかもしれない。
「これは、組織全部が立ち上がらないときつくない?」
「え~、またリルにあうの、メンドウ~」
「リルが可哀相じゃないか。せめてボス面倒くさいとか言っとけば?」
「―――――言っとくけど」
「ん?」
「隼の言った台詞のほうが、何倍も傷付くと思う」
英語が使えないのに英語を使った作者です。大馬鹿者です。こないだ英語で赤点取ったことをつるんと忘れています。
間違っていたら教えてください。直します!
では、これからもよろしくお願いします。