それは低い黄色
わ、わわわわ!すいません……一ヶ月近く更新してませんね……。
ごめんなさいいっ!私生活が忙しくて、って、これは言い訳ですよね。
これからはきっちりします!
「quintに頼みがある」
「……は、はい」
「殺し屋の『彼岸』を探しだしてくれ。早急に」
「え」
「できるだろ、つい最近までその世界にどっぷり浸かってたんだから。いや、今もだけど、つうか、今のほうが深く浸かってるか。まあ、調べてきてくれ。僕はしばらくここから出られない」
「でも」
「なんだ」
「……『彼岸』の名前は知ってます。今まで殺し損ねたことがないと言われるほどの殺しの専門家です。でも、彼岸に不用意に接触した人間は、必ず死ぬとも言われています」
今聞きたいのはそんなことじゃない。
「お前がいやなら僕が調べる」
「せん……紫苑?」
ベッドの脇に置いてあるパソコンを引っつかむ。起ち上げて裏サイトに行く。――ない。ただの噂ばかりだ。
大きな舌打ちをしてベッドから降りる。クローゼットからスーツを取り出した。
「紫苑、どこ行くつもりだ。お前まだ治って」
「黙れ」
「黙るか。紫苑。お前の話はまだ終わっちゃいない」
森羅を見る。僕の目から、逸らすことなく見つめてくる。
深遠な色をたたえた美しい湖のようだ。そう思った。彼の心はとても広い。隙はあるが、まず簡単には見つからない。それに比べれば、僕の心はどれだけ狭く、どれだけ汚いことだろう。まるでヘドロがたまったどぶ川だ。
「話?」
「言うことがあるって言ってたじゃねえか。それに、自分で外に出られないとか言っておきながら外に出ようとしてるし」
「僕の揚げ足を取ろうっていうのか」
「いつもは言葉に十分気をつけてるお前が、そんだけ焦ってることを指摘してやったまでの話さ」
僕は細くため息をつき、スーツを放り出してベッドの縁に腰掛けた。
「――森羅の言うことも一理ある。話しちゃおうか。その『彼岸』があの事件の当事者。昨日、僕にいきなり接触してきた。今あいつが雇われている組織が僕を欲しているらしい。断れば、今度こそ殺されるかもしれない」
「『彼岸』が、ですか」
ゐつの顔が心なしか青ざめている。
「誰だ?その『彼岸』って。詳細は?」
森羅が首をかしげて僕を見た。とりあえず、軽い説明を加える。
「いまだ残ってる古臭い殺し屋。このごろ鳴りを潜めてたんだけど。噂じゃ海外に行ってたとか聞いてるよ。殺しの腕はいいらしい。殺し損ねたのはこの世に生を受けて一度だけ」
「それが、おまえ?」
沈黙で、それに答えた。
「逃げ切れませんよ、次は」
「ゐつでも?」
「あたしでもです」
心底怖そうに言う彼女の肩は確かに震えている。
「ま」
しばらくの沈黙の後、森羅が。珍しく真剣な声で。
「やってみなきゃ、わからないってな」