それは暗い桃色
また、拒絶。
誰も要らないというような。
たった一人でこの世界を生きていこうとするような。
そんな、拒絶。
「ゐつ?どうしたの、ぼーっとして」
ちさ姉さん。
「隼が心配するよ、私の部屋においで」
そうだろうか?先輩はあたしのことを心配してくれるんだろうか?いつも優しいのは、先輩の得意な演技なのではないだろうか?本当は、こんなあたしを軽蔑しているのではないだろうか?
「ゐつ、来なさい」
「……はい」
ちさ姉さんが、ほぼ強引にあたしを部屋に連れて行く。その部屋は彼女の性格に合わずがらんとしていて、どこか先輩の部屋を思い出させた。
「先に怒っておくわ。隼のことで」
「……」
「あの子を恐怖の目で見ることは、いかなる理由があっても私が許さない。もうひとつ。あの子が自分から心を開くことはない。このままじゃあなた、隼に飲み込まれるわよ」
「飲み、こまれる?」
「飲み込まれたら、もうゐつはあの子には信用されないからね。飲み込まれる前に、受け入れなさい」
意味が、分からない。
「どういう……」
「ごめんね。これ以上は私じゃ言えない。言っちゃいけないの。ごめん――」
『言っちゃいけない――』
それって、どういうことなんだろう。
どうして言っちゃいけないの?
「なんで、なんでっ」
聞きたくもない。拒絶なんて。
「なん、で。なんで――」
なんで。
*****
「ゐつー?おい、もう朝だぞー」
ゐつが起きてこない。
「ゐつー」
「……先に学校行っててください」
「は?なんで」
「いいですから、行ってください」
本人が言っているものは仕方ないのだが。理由は分からないが。
きっと、僕が悪い。
「いってきます」
森羅を呼びにいく。
ピンポーン
「すいません、森羅を呼びに来ました」
『今出るっ!』
森羅があわてた様子で出てきた。
ゐつが来る前の、いつもどおりだった風景。
「あれ、ゐつちゃんは?」
「分からない。たぶん、僕と一緒にいたくないんだろ」
「何だそれ。訳わかんね。お前、何もしてねえだろ」
「……したよ。きっと」
きっと僕は、何かしてしまったに違いない。
学校に行く途中だというのに、テンションの下がることといったらない。
「バカか。バカだな。バカなんだな、お前は。頭いいくせに、ホント大バカだな」
「1つの台詞に4つもバカ入れやがって。森羅のほうがバカなんじゃ」
「いや、バカだよ。きっと、ってなんだ、それ。分かってないのに自分のせいだっていうの、バカと一緒だ」
何もいえない。確かに、そうかもしれない。
「何でもかんでも、悪いことがあれば自分のせい。悪癖にもほどがある。どうにかしろよ、お前」
どうにかしろ。
僕は何も答えずに、黙って森羅の先を歩いた。