ほっぺをつねっても見えるもの
ピピッ
ピピッ
ピピッ
「ん・・・・・・む」
カチッ
目覚ましを止めて、ゆるゆるとまたまぶたを閉じる。さっきのは夢か・・・・・・。頭ではそう思いつつも、体はしばらくの幸せな時間に戻ろうとする。いわゆる二度寝というやつ。頭と体はしばらく小さな言い争いを続けていたのだが、すぐに決着が付く。頭は考えることを止め、体はさっきのように幸せな時間に戻った。頭とともに。
二度寝決定。
体制を変えようと寝返りを打ち、薄目を開けると。
「ふあぁ、おはようございます」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぶかぶかのパジャマ―――あれは僕のだ―――を着た、長い髪の美少女が片手で目をこすり、片手を上に伸ばしてグウッと伸びをしていた。僕の、隣に。紗の布が少し邪魔だが、そのままほっぺをつねってみる。
「痛い」
少女がおかしそうに笑って言った。
「そりゃあ、ほおをつねれば痛いですよね。あ、もしかして夢だと思ってたとか?」
ころころと笑う少女はまるで鈴のよう・・・・・・とは、言いすぎかなあ?とりあえず、そろそろと少女から離れる僕。おかしい。絶対おかしい。
「何があったんだ」
「何って・・・・・・いろいろ」
一気に。ベッドから飛び降り向こう側の壁まで後ずさる。目隠し用の紗の布をはぎとる。眠気は、すっかりなくなっていた。
「思い出せ、僕!一体何があったんだ!ああ、もう、こういうときに限って役立たずだな!!」
ぶんぶん頭を振って思い出そうとする僕。それを見て、目を丸くする少女。安心させようとしたのか、右手をピンと上げてこう宣言した。
「あ、大丈夫ですよ。先輩。あたしたちは清い仲ですから!」
「そう言ってくれるのはうれしいが、誤解を招くような言い方をすんな!!!」
僕の声は、おそらく防音に改装した部屋を通り越して、半径50メートルのご近所に響き渡った。