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空を染めて  作者: N.T
見えるもの
15/47

靄の中に見えるもの

「あの、先生」

「ん?誰だ?」

「あ、2年の村木紫苑といいます」

 先輩が目的(ターゲット)に話しかけている。可愛い。普通の女の子など比ではないくらい可愛い。

「……森羅先輩」

「ん?」

「先輩って何であんなにかっこいいし、可愛いんですか?」

 口の端を吊り上げて、森羅先輩は笑った。

「そりゃあ、女心ってのが分かってるからな。それに……っと」

 不自然に言葉を切った。それを誤魔化すように先輩を見やる。

「紫苑、今日で仕留めるつもりだ。準備するぞ」

 紫苑。

 先輩の暗号名。

「仕留めるって言うのは?」

「襲われるフリをするってこと。それで現行犯にでもなれば、あとは簡単だからな」

 我が先輩ながら。

「なんか、ずるくないですか?だって先輩が誘惑したって言われたら、おしまいじゃ」

「あー、それは大丈夫。今からあいつが誘い込む部屋に隠しカメラを置くだろ?で、生放送」

「?どこで」

「まあまあ、後で分かるって」

  *****

「先生。私、そろそろ帰らないと」

「いいから。ちゃんとマネージャーの仕事説明しなきゃ」

「いえ、今日は用事があるんです……」

「少し話そう。どこなら落ち着くかな?」

「え、あ……そ、相談室を……」

「じゃ、そこで」

 紫苑は連れて行かれた。半ば強制である。

「よし。村木さんだっけ?まずちゃちゃっとやること説明する。まずは」

 手取り足取り教えるフリをして腰やら太ももやらを触ってくる。動きが無駄にいやらしい。

(こいつ、変装解いたらぶん殴ってやる……絶対だ、絶対)

 心の中でそう思っているが、表情に出してしまえば水の泡だ。

「せ、先生っ!やめて……!」

「ほら、固くならないで」

「ちょっ、嫌」

 組み伏せられる。そろそろばれるだろう。

 そろそろ、バラしてやる時期だ。

 声音を変える。か細い女の声から、艶やかな女郎の声に。

「あー、ちゃんと放送できてた?(エス)

 スピーカーから、声が流れてきた。女の声だ。

『ええ、ちゃんと』

「村木」

「センセ?分かっていらっしゃらないようね?」

『あら、先生ったら。バカなのかしら?』

 紫苑――隼と、S――森羅の女声があざ笑う。

 そのころ、学校全体では。

「え、あれ石山?」

「女の子がいるぞ」

 どの教室にもテレビが付いている。体育館はスクリーン。そこに、石山と紫苑が写っていた。

「貴方って、本当に体使うしか能がない人。これはね、映像になって学校中に流れてるわ。あと……PTA。どうなるかしらねえ?」

 クスリ。紫苑は(わら)う。

「偽りの劇。その跡から見つけたのは下らないことだけど。貴方をおとすには十分よね」

 耳元で、甘く囁いた。人を翻弄する、その声で。

「ごめん、先生。僕は村木 隼。T高校内特設総合問題解決倶楽部――通称探偵倶楽部の部長です。ご存知でしょう?貴方を、この高校を汚す者として、校長ならび警察に報告しました。お分かりですね?」

 扉から現れたのは、森羅、ゐつ、そして。厳しい顔の制裁者だった。

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