本当を見るとき見えるもの(2)
とりあえず依頼人を帰し、静かになった部室で僕は静かにため息をついた。ゐつと森羅は黙って立っている。右のこめかみに手をあてる。心拍に合わせて響く頭。
「どう攻めようかな・・・・・・クラッキング?潜入?もしくは」
「お前、よくも俺らの前でその、」
「キスも人を動かすいい手段だよ。僕みたいな体質じゃそっちを使った方がいいんだ」
「先輩、それってどういう」
「この話は今日は終わり!考え込んだら頭が痛くなる」
嘘ではない。本当に頭が痛かった。耳のすぐ横で思い切り鐘を鳴らされたようだった。
「もう、今日は帰ろう」
帰ろう。このままでは僕が・・・・・・
「ただいまです。みなさん」
「・・・・・・ただいま」
結局、帰り道はひとことも喋らずに帰ってきた。ゐつを先に入らせて玄関にへたり込む。目の前がくにゃりと歪む。眩暈だ。――立てない。
「どうした?・・・・・・はは~ん、立てないんだな」
靴を勝手に脱がされて、負ぶわされるのがかろうじて分かった。生薬の匂い。陸だ――
*****
「涼~。隼が潰れた~」
そう言いながら陸さんが玄関から現れた。背中に、先輩を背負って。
「えっ、せ、先輩?どうしたんですか」
「熱あるな。部屋まで連れていこー。ちさ姉」
「分かってる。氷枕でしょ。あとは、タオルか」
みんなが動き出す。慌てたようではあるけれども、動きは的確で迅速だ。先輩は、陽に当たらない白い肌を青に変えて浅い呼吸を繰り返している。涼さんが先輩のブレザーを脱がせ、着替えをさせにかかる。あたしは後ろを向いた。陸さんがベルトに手をかけたからだ。
「ゐつちゃん、先にご飯食べてなよ。俺らはこれ終わったら食べるから」
「まだ慣れてないんだしさ。初めてだから仕方ないし」
声は優しかったが、有無を言わせぬ響きが隠れていた。
「は、い・・・・・・」
ぽつぽつと階段を下り、食卓に座る。
「いただきます」
ひとりの食卓は。まだみんなと数回しか食べていないのに。
寂しかった。
本当を見るとき見えるもの。まだそれは、見えないようだった。
え~、たくさん書きすぎたので分割するの~。ひどいよ~。
あ、おれ、陸。作者さんが書きすぎて、これは皆さんが読みづらいな~ということで『本当を見るとき見えるもの』を分割してしまったお詫びで出演してます。
ギャラなし。ボランティアじゃん。あとで作者さんご自慢のケーキくださいよ~。