うしみつさん
「草木も眠る丑三つ時」
「またなんか始まったわ……何? 怪談?」
「不眠症の木は今日も眠れぬ夜を」
「待って待って」
「はい?」
「なにその……不眠症の木?」
「はい、不眠症の木ですね。こほん。眠れぬ夜を過ごしていました」
「いや、そんな余計なのいらないから。本題本題。そんなん飛ばして」
「……えー……」
「なんで?そんな不満?」
「いえ、まぁ、はい。じゃあ改めて。草木も眠る丑三つ時、都に足利のうしみつというものありけり」
「待て」
「なんですかまたですか」
「足利うしみつってなんやねんなんか普通にいそうでイヤやわ」
「牛が満ちると書いて牛満さんです。農家の次男坊です」
「いやそんなん聞いてないわ」
「ちなみに兄は光が出ずると書いて」
「わかったもういい」
「いで……」
「ストップ」
「……」
「分かった落ち着けそれ以上はいけない。続き続き」
「みつ……」
「名前の続きじゃねえよ話の続きだよ」
「あー、えっと」
「なに、忘れたん?」
「いやいやまさか。都に足利出光という者」
「そっちじゃねえよ」
「はい?」
「弟の方だろ牛満の方」
「ああ、そうでしたそうでした。牛満は世が乱れ荒れ果てた都の荒れ地で闇農家を営んでおりました」
「闇農家……? いや仮にも都で?」
「仰る通り。裏稼業はすぐに貴族の目に触れてしまいます」
「そりゃなあ」
「貴族は兵たちに命じ、牛満を捕らえさせようとします」
「まぁ当然」
「しかし兵たちは主命に逆らい、あろうことか不満を口にします」
「なんて?」
「やだよ目の前じゃんそんくらい自分で行けよ」
「軽いな。しかも目の前で農業勝手にやられんなよ」
「持て余した牛車の牛の横流しもあったようで」
「それは開拓捗るわ」
「でしょう?」
「褒めてねぇわ」
「牛のサブスクも始めまして」
「サブスク?」
「みんな牛持て余してたらしくて。牛車の相乗りとか農地の開拓とか色々」
「貴族が都で農業始めんな荘園でやれよ」
「それが、荘園は勝手に独立しちゃってですね」
「あ、戦国……」
「ガソリンスタンド始めちゃうんですよ」
「それ絶対兄貴だろ!」
「よくお分かりで」
「分からいでか。何だこの話怪談でもなんでもねぇじゃんか」
「それはだって」
「だって? なんだよ言い訳か?」
「メインの不眠症の木いらないって言われちゃったもんで」
「あれ脱線じゃなくてメインだったのかよゴメンな!?」




