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「緊張してる?君らしくないじゃないかぁ」
向かいの席に座っている男が声を掛けてきた。
白い髪にすらりと伸びた体。
こいつを見ていると無性にイラついてくる。
「うるさい黙ってろキョウヤ」
ヘルメットが白く曇る。
彼を睨みつける。
司令部はごたついているようで無線からその慌ただしさが読み取れる。
「はいはいわかりましたよ。それにしても無茶言うよな。パラシュートも何も無しで生身で飛び降りろなんてさ。俺らが強化人間じゃなければ死んでるぜ」
その時ハッチが開いた。
外に空気が勢いよく流れる。
死ぬほど寒いが景色はいいものだ。
上は真っ暗。
下には赤い死の大地、地球が広がっている。
今いるここは宇宙である。
―降下地点到達まで10…9…
無線から合図が聞こえる。
キョウヤは立ち上がり、装備の確認をしている。
「そろそろだな。ほら行くぞ。ふぅぅ!興奮してきたぁ!」
「ヘマするんじゃねぇぞ」
「もちろんさ」
―2…1…
ハッチから飛び降りる。
無重力空間で飛び降りるのは変な感じがする。
飛び降りたはずなのに飛び降りてないみたいだ。
多分横にすごい勢いで移動しているはずだが空気抵抗がないから何も感じない。
酸素の残量も弾薬もマナ量も問題ないようだな。
―目標との交差軌道に入ったことを確認。接触まで90
―熱源を確認!妨害が入った!
―問題ない軌道維持システムの物理的な防衛兵器だ
―衝撃波到達まで3…2…
無線は畳み掛けるようにこちらにそう伝えてきた。
ドゴォォン
物体は赤く球状に爆破した。
だが衝撃は全て常時展開されている透明な盾に防がれた。
この盾は便利なものでマナさえあれば物理的な攻撃は全て防ぐことができる。
「はいナイスゥ。これくらいはやってくれないとね」
後ろにピッタリとついてきているキョウヤにそう言われる。
「そんなこと言ってる暇があるなら攻撃してくれ」
「まだ何も来てないじゃん。あれも確認する前にさっさと爆破したし」
―前方から複数の飛来物を確認!
「来たようだぞ?」
先端が鋭く尖ったものがこちらに飛んできている。
それはロケットエンジンなどではない不思議な、おそらくマナ由来の力を使って縦横無尽に飛び回る。
キョウヤは俺の体に足を絡ませて攻撃体勢になる。
空を掴み弓を引くような動きをすると青白い光の矢が出来上がる。
それを飛来物に向かって撃つ。
軌道を変えてしまいそうなほどの衝撃と共に打ち出されたそれは、複数あった飛来物を一筆書きのようにそれらを一度で貫いた。
途端に赤く膨れ上がり爆発する。
「おまっ軌道変わったらどうすんだよ!」
「それを考慮してのこれだ。全て計算内なんだよ」
キョウヤは自らの背中を指差す。
そこから先の矢と同じような青白い光が翼のように展開されている。
どうやらそれでずっと調整していたようだ。
その時、遠くに白く巨大な正八面体が見えた。
あれが目標の物だ。
「あんな疫病神を回収して何がしたいんだか」
「うるさい!緊張感を持て!物体が移動してるから無理矢理飛びつくぞ!」
物体に向けて装備していた銃をうつ。
それは大体フックショットのようなもので打ち出した弾は物体にくっついた。
だが半ば強行突破なやり方だったため体が振り回される。
「離すなよ!」
みしみしと嫌な音を立てながら勢いよく巻き取りを始める。
物体は地球の軌道上を毎秒約7700メートルで飛んでいる。
回収するにはその動きを止めないといけない。
かなりの勢いでぶつかったようで、鈍い衝撃が体に伝わる。
「キョウヤ!逆噴射!」
光の翼は大きく広がり出力が跳ね上がる。
その翼の持ち主であるキョウヤは体を固定するために俺に抱きつくようにくっついている。
翼の推進力は俺を通して物体に伝わっているようで今にも押しつぶされそうだ。
「ぐぐぐ……カズトっ!もうちょい耐えろよ!」
ヘルメットに表示されている速度計がみるみる下がっていく。
「3…2…1…逆噴射停止!」
その瞬間さっきまでの圧力が嘘だったかのように楽になる。
キョウヤは全てを出し切ったようで終わった途端に力が抜ける。
飛ばされそうであったためキョウヤの腕を慌てて掴む。
「馬鹿野郎!俺から離れたら空気の摩擦で焼け死ぬぞ!……強奪完了、帰投する」
「了解、C地点で回収する」




